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ダイヤの原石。セレッソ大阪のFW杉本健勇の現在地  by 藤江直人

ダイヤの原石。セレッソ大阪のFW杉本健勇の現在地  by  藤江直人

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■関西ステップアップリーグ
関西学生選抜B[勝ち点6] 0‐4(前半0‐1) セレッソ大阪[勝ち点16]
[9月19日午後2時半キックオフ@堺市立ナショナルトレーニングセンター]


 誰かお目当ての選手がいたのだろうか。
 ロンドン五輪出場を目指すU‐21日本代表監督への就任が内定している関塚隆・日本代表コーチの突然の堺NTC来訪に、思わずそう勘ぐりたくなってしまった。セレッソ大阪の関係者も「昨晩の大阪ダービーには来ていなかったですよね」と驚きを隠せなかったほどだ。
 実際、関塚氏は18日夜には埼玉スタジアムにいた。GKコーチのマウリツィオ・グイード氏、テクニカル・アシスタントのジャンパオロ・コラウッティ氏とともに浦和レッズ対清水エスパルスを視察。一夜明けて、千葉ダービー視察のためにフクダ電子アリーナへ向かったアルベルト・ザッケローニ氏の腹心スタッフ2人とは別行動で空路、大阪入りしていた。


 関西ステップアップリーグは、昨年限りでサテライトリーグが廃止されたことを受けて、関西エリアの4つのJ1クラブと大学生選抜2チームで発足させた強化・育成の場。セレッソの陣容はトップの試合に出ていない、あるいは出場時間が短かった選手。サブも3人しかいない。
 メインフィールドのメインスタンド2階に腰掛けながら、関塚氏らは戦況を見つめている。ロンドン五輪の男子サッカーの出場資格は1989年1月1日以降に生まれた選手。関西学生選抜Bはサブも含めて全員が該当し、セレッソのスタメンにもFW永井龍ら3人が名を連ねた。日本代表コーチよりも五輪代表監督の比重が大きい視察であることは明白だった。


 私自身の話をすれば、発売中の『論スポ』第8号で取材したセレッソの17歳、FW杉本健勇に挨拶する目的も兼ねて前夜の大阪ダービーとのセットで出張を組んでいた。
 杉本は1メートル87、78キロと魅力的なサイズを備え、各年代の日本代表に常に招集され続けてきた逸材。しかも、最近測ったところでは身長がさらに8ミリ伸びていたという。
 ユースと五輪の両カテゴリーで招集が可能な杉本が後半開始から投入されると、関塚氏らは応接室の窓ガラス越しの視察に切り替えた。前半に陣取ったテラスは大きな手すりがあって試合が見づらい上に、スタッフ同士の会話が何人かいた報道陣に筒抜けになってしまう。
 こう思ってしまったのも勘ぐり過ぎだろうか。


 杉本は本職のFWではなく、右の攻撃的MFに配置された。
 スタメンのワントップはほぼ同じサイズの27歳の小松塁が務め、後半からツートップに切り替わっても1歳上の永井とひと回り以上も離れたベテラン播戸竜二の後塵を拝する。
 7月1日にトップチームに昇格したばかりのピカピカの「1年生」にとっては、まさに試練ともいえる年功序列の壁。戸惑いがあるのか、攻撃から守備に転じた際の戻りが遅く、ポジショニングもやや曖昧。味方から何度も「ケンユウ!」と怒鳴られる場面もあった。
 もっとも、この17歳、これくらいで臆するほどやわな神経は持ち合わせていない。


 攻撃時になると次第にトップ下、時には最前線に堂々と顔を出すようになる。
「自分としては、ほぼトップ下のつもりでプレーしていましたから」
 迎えた25分。杉本の非凡な得点力が顔をのぞかせる。左CKにほぼ完璧なタイミングで走り込み、打点の高さを生かした豪快なヘディングでネットを揺らした。
「あれは自分の感覚というか。スペースが空いていたんだけど、すぐ近くにDFがいたので、ちょっとバックステップして相手の視野から一度消えて。いいところにボールがきました」
 自分のストロングポイントを最大限に発揮するための駆け引きを演じていたわけだ。


 もっとも相手が大学生、それも1・2年生が主体だっただけに不完全燃焼の思いも募る。
 放ったシュート数は、ゴール以外にはわずか1本。約25メートルの距離からこん身の力を込めたミドル弾は、バーの上を大きく超えてしまった。
「シュートの本数自体が少なすぎる。一人で10本は打たないと。FWでも中盤でも、ポジションはどこであれ僕はゴールを決めないとあかん。ミドルシュートにしても思い切り蹴るだけで、コースを狙おうという意識があまりにもなかった。せめて枠の中に飛ばさないと。そういう点を含めて、今は練習している。とにかく精度を上げていきたい」


 18日の大阪ダービーは自宅でテレビ観戦した。開始わずか2分。電光石火の先制ゴールを叩き込んだガンバ大阪のFW宇佐美貴史は同じ平成4年生まれ。中学1年の時から年代別の日本代表にともに招集され、切磋琢磨してきたライバルであり親友だ。
「ホンマ、ソッコーで決めてましたね。あの舞台、あの場面で決めるのはすごいこと。でも、アイツに決められるとやっぱり悔しい。自分は試合はもちろん、ベンチにすら入ったこともないので。逆に自分も頑張らなきゃあかん、絶対に負けへんで、という気持ちになる」
 本田圭佑が同期の長友佑都や岡崎慎司、細貝萌を常に刺激しているように、1992年生まれのいわゆる「プラチナ世代」の筆頭に宇佐美がいて、杉本たちをけん引している。


 本来ならばセレッソ大阪U‐18で万全の準備を積み、高校を卒業する来シーズンに満を持してトップに昇格する予定だった。セレッソの藤田信良社長は「ユースでは簡単にゴールを決めるし、練習でも退屈そうにしていたので」と計画を約半年前倒しにした理由を説明する。
「見ての通り。そんじょそこらの高校生とは明らかに違います」
 こう語るセレッソの梶野智チーム統括部長も、「高校生世代では」と限定しながら杉本の才能を高く評価する一方で、「あまりチヤホヤせんといてください。すぐに調子に乗りますから」とクギをさすのも忘れない。シュートの精度も然り。やや細く見えるのは筋肉の量が足りない証拠でもあるし、杉本自身も「ムラがある」と認めるメンタル面も改善する余地が多い。

   
 それでも、ダイヤの原石であることは間違いない。藤田社長も「やがてはセレッソのエース、日本代表のエースになる男ですから」と笑顔で太鼓判を押す。
 ブラジル相手に一時は同点に追いつくゴールを決めたのは昨年11月のU‐17W杯。9月9日のフランスとの仙台カップ国際ユースでは、1対1で迎えた前半終了間際に最終ラインからのロングパスに反応。一瞬のスピードで相手DF陣を置き去りにして、日本を勝利に導くゴールを叩き込んでいる。50メートル走は6秒フラット。巨体に似つかない速さも魅力だ。
 ちなみに、そのフランス戦は関塚氏も視察に足を運んでいる。


 試合後にはセレッソ関係者と歓談した関塚氏は、実は午前中にガンバ大阪を訪問していた。阪南大学との練習試合を視察し、1996年のアトランタ五輪代表を率いて強敵ブラジルを撃破した経験を持つ西野朗監督とも話し合いの場を設けている。
「西野さんとそういう話をしたかったし、できる限り選手を見たいので今日は関西に来ました。大阪の2つのチームも見ることができたし、大学生も見ることができてよかった。責任ある立場で仕事をしていきたい。選手選考の話は協会に聞いてください」
 果たしてその目に杉本がどう映ったのかを聞きたかったが、関塚氏は「選手個人の話はしません」と一蹴。帰りの飛行機があるから、と足早に堺を後にした。


 22日には関塚氏のロンドン五輪代表監督就任が正式に発表される。2つのカテゴリーで主軸を務めることが期待される「プラチナ世代」だが、宇佐美はともかく、杉本は「U‐19で結果を出せば自然と五輪にも絡んでくる」とまずは本来のU‐19に集中するつもりだ。
 10月3日から中国で始まるU‐19アジア選手権で準決勝に進めば、来年7月にコロンビアで開催されるU‐20W杯の出場権を得る。ヤングジャパンの始動は24日。翌25日のヴィッセル神戸戦では、ガンバ戦で一発退場となったFWアドリアーノに代わって初のベンチ入りを果たす可能性もある。それでも杉本は「残念だけど仕方がないですね」と中国からコロンビア、ロンドン、A代表、4年後のブラジルW杯と続く夢への第一歩に全力を注ぎたいと力を込めた。


※発売中の『論スポ』第8号では、次回ブラジルW杯で主力が期待される「2014年の人」を掲載。5人の若手選手の一人として杉本健勇を取り上げています。


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2010年9月20日 18:07|記事URLコメント(0)トラックバック(0)

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