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及第点を与えていい宿敵・韓国とのスコアレスドロー  by 藤江直人

及第点を与えていい宿敵・韓国とのスコアレスドロー  by  藤江直人

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■サッカー国際親善試合
韓国代表 0‐0(前半0‐0) 日本代表
[10月12日午後8時キックオフ@ソウルワールドカップスタジアム/観衆6万2503人]


 負けなかったことをよしとするのか。勝てなかったことを悔やむべきなのか。
 11勝20分け38敗と対戦成績で大きく水を開けられている韓国との通算70度目の対戦。敵地ソウルワールドカップスタジアムには発煙筒が焚かれ、隣の記者の声も満足に聞き取れないほどの「テーハミング」の大合唱が何度も響き渡る。開始10分過ぎにはDF駒野友一が相手との激しい接触プレーで右腕上腕部を骨折。内田篤人との交代を余儀なくされた。
 日本代表のアルベルト・ザッケローニ監督をして「フレンドリーマッチとは言えない雰囲気になってしまった」と言わしめたほどの、お互いの意地と誇りが激突した90分間。冒頭の質問の答えは、選手の側からすればもちろん「勝てなかったことが悔しい」となる。


 チーム最多の3本のシュートを放ったMF本田圭佑が仲間の思いを代弁する。
「タフなゲームで、どちらかが1点を取れば勝利するだろうと思っていたので、1点を取れなかったのは残念。まだまだですね。惜しいでは意味がないと思っているので。警戒されても決められるようにならないと。成長した姿を見せられるように、チームに帰ってしっかりやりたい」
 前半26分と後半44分に放ったシュートは相手GKのファインセーブで弾かれ、後半35分のMF長谷部誠のあわやの一撃も右サイドをドリブルで突破した本田のパスから生まれた。
 決定機の数は日本の方が多かった。しかし、慰めに近い言葉をかけられるだけでは満足できない、もっと高い場所を目指したいという貪欲さが本田の言葉を通して伝わってくる。 
 

 実際、本田はこうも語っている。
「悪くはないが、結局、今日も0点。まだまだ満足いく形が見えていない」
 日本をもうワンランク上のチームに導く、という使命を託されたザッケローニ監督の下で迎えた2戦目。開始直後から持ち味のフィジカルの強さを前面に押し出し、試合を支配したのは韓国。圧力に順応できなかった日本だが、16分に右サイドを内田、MF遠藤保仁と2本のタテパスでえぐり、MF松井大輔の鋭いセンタリングからチャンスを生みだすと状況が一変する。
 その後の攻防は、指揮官の言葉を借りれば「韓国はフィジカルとガッツを生かし、日本は技術を生かしてポゼッションを高めるサッカーをした。双方とも全力を出し切った」となる。


 この評価に異論はない。会見でザッケローニ監督はこうも語っている。
「うまくサイドチェンジして、そこから攻撃ができたことには満足している。特に右サイドから多くのチャンスが生まれたと認識している。ウチの右サイドにスペースができたので、そこにボールを放り込んでいくことで相手のディフェンスラインが間延びしたような気がする」
 言葉通りに、状況を一変させた前半16分の攻撃を皮切りに、日本のチャンスのほとんどが右サイドから生まれている。監督に指示されずとも試合中に相手の穴を見つける戦術眼を含めて、日本は時間の経過とともに流れを五分以上に押し戻していた。
 だからこそ、無得点に終わった攻撃陣には不満と不安も残る。


 例えば後半32分。右サイドを突破した本田から長谷部を経由したボールが左サイドでフリーだった松井へ。折り返しのクロスがペナルティーエリア内で相手DFの手に当たったように見えたが、ここでは主審の判定よりもクロスの直前の松井のプレーの方を重視したい。
 しっかりとトラップしていれば1点もののシーンだったが、ボールは流れ、追いつく間に相手にコースを限定され、苦し紛れにクロスを選択していた。松井もミスを認めている。
「明らかにハンドだったし、審判も見えていたはずだけど。ここは韓国だからね。僕がトラップできなかったし。今日はお互いに中盤を支配しようとして、真ん中の攻防になった。もう少し前の方に起点が作れればよかったんだけど。足元でボールをもらう回数が多かった」


 シュート1本のまま、後半27分にベンチに下がったMF香川真司も続く。
「ボールを低い位置で受けることが多くて、自分自身も(相手に対して)怖さはないと思っていた。高い位置でボールを受けるためには、もっと工夫することが必要になる。僕を含めて、もっと裏へ抜けていかないといけないのに、全員が足元でボールを受けることが多かった。何回も言っているように、もっとシュートの意識を高めていかないといけない」
 A代表では約3年ぶりの先発フル出場を果たしたFW前田遼一はシュート0本。中盤に下がった時の存在感がゴール前では消えていたことに「ふがいない。守備はしたけど、100パーセントで戦えなかった。何もしていないという感じ」と反省の弁ばかりを並べた。


 結局、放ったシュート数はわずか6本。攻撃陣が自らに不満を募らせたのは理解できるが、シュートに至らずとも、その過程で相手にいい意味での違和感も与えている。
 アルゼンチン戦を埼玉スタジアムで視察していた韓国のチョ・グァンレ監督は言う。
「特に日本の守備の組織力が高くなったと思う。岡田監督時代よりは、ディフェンスのラインが前に上がって、相手陣内でフォアチェックしている。攻撃への切り替えが早くなり、危ない場面をよく作れるようになった。岡田監督時代は、攻撃に転じるときに余計なパスが多かった。今の日本代表は、すごく攻撃が早くなったというイメージがある」
 韓国には「負けなかったことをよしとする」という思いも生じていたわけだ。


 今年に入ってから3度目となる韓国戦だが、試合の様相は180度異なる。
 岡田前監督体制下で行われた過去2回はチームが低空飛行を描いていた時期で、テクニックうんぬんを語る前に、勝負ごとに欠かせない「自信」が明らかに欠如していた。
 ホームでの試合なのに、タマ際で競り負けるたびに選手はうなだれ、叱咤激励する声も響かない。ともに惨敗を喫したのはいわば必然の流れだったが、今は明らかに違う。W杯という修羅場で2勝を挙げ、決勝トーナメントに進出した軌跡が自信を蘇らせ、FIFAランク5位のアルゼンチンも撃破した。迎えた宿命のライバルとの一戦。試合前に指揮官は静かに言った。
「ホームでの戦いと同じようにやってくれ」


 サッカーにおけるセオリーを無視するような作戦。その意図をこう説明する。
「日本ほどの能力があれば、ホームでもアウエーでも変わらずいい試合ができると思った。金曜日にホームでアルゼンチンに勝っていることもあって、韓国は気持ちを前面に押し出したサッカーをしてきた。当然、相手がいることなので、ウチがいつも主導権を握れるわけではないが、最終的にはホームでもアウエーでも自分たちのサッカーができることがわたしの目標だ」
 W杯で蘇らせた自信。新監督就任で高まるモチベーション。そして、3連敗は絶対にしないと意気込む選手たちのプライドを巧妙にくすぐるザッケローニ監督の「攻めろ」発言。3つの要素が融合した結果が、敵地での不利な条件をものともしないパフォーマンスを生み出した。


 もうひとつある。ボランチでプレーしたキャプテンの長谷部が証言する。
「ヨーロッパでプレーしている若い選手がよくなっているし、刺激を受けるようにJリーグの若い選手もね。本当に頼もしく感じる。日本サッカー界の未来は明るいんじゃないかと思います。特に前線の選手は自信を持ってプレーしているし、相手にとては全員が怖いと思う。(香川)真司もそうだし、松井さんなんかも『若い選手には負けていられない』という気持ちが出ていた。僕個人はシュートを外しているし、惜しいところまでは行くけど、やはり最後の点のところは個人。ゴール前で冷静になることは僕個人の課題でもあるし、日本の課題でもある」
 W杯後に世界へ飛び出した仲間たちの姿が、相乗効果をもたらしている。


 これらを総合すれば「前向き」にとらえられるスコアレスドローとなるのではないか。日本サッカー協会の小倉純二会長も試合後にはこう語っている。
「ザッケローニ監督になって守備がよくなってきた。日本が変わってきた、という印象を持ってもらえたんじゃないかな。来年に期待が持てる」
 韓国戦をもって年内の日本代表の試合は終了。年明け早々にはアジアカップがカタールで開催され、日本は2大会ぶり4度目の優勝を目指す。サイドを変えてからのタテへの速い攻撃が奏功した韓国戦で手応えを感じたのか。ザッケローニ監督は「日本がサイドにできるスペースをうまく突いた時には、どんな相手でもかなり怖い存在になれると思う」と胸を張った。


 一夜明けてソウルから別々の便で飛び立った選手たちも思いは同じだ。 
「これからだと思う。若い選手が多いので、自分も含めてもっと成長できると思うし、もっともっと上を目指してやっていけるチームだと確信している」
 本田が成長途上を強調すれば、「まだオレも若いっすよ」と苦笑した松井もこう続いた。
「攻撃に関しては縦の動きを意識している。細かいこともあるけど、ザッケローニ監督からはやっていることを積み重ねて自分たちのサッカーにしてくれと言われている」
 今後は12月に短期合宿を予定している。初の強化合宿と親善試合を1勝1分けで終えた指揮官は「まだまだ選手たちにやってほしいことは伝わり切っていないからね」と文字通りのロングスパンで日本の進むべき道を思い描いている。


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2010年10月13日 07:38|記事URLコメント(0)トラックバック(0)

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