Home > 本日の論! > 東京ヴェルディに「白馬の騎士」が手を差し伸べた理由 by 藤江直人
東京ヴェルディに「白馬の騎士」が手を差し伸べた理由 by 藤江直人

☆☆☆論スポ最新号の購入はこちらをクリックしてください!☆☆☆
Jリーグ主導で経営再建中の東京ヴェルディに、待望のホワイトナイトが現れた。
スポーツ用品・アパレル販売の大手「ゼビオ株式会社」と5年間の包括的なメインスポンサー契約を結ぶことで合意に達したもので、東京ヴェルディ社長を兼ねるJリーグの羽生英之事務局長は「今シーズンを含めた5年契約。かなりの金額をスポンサードしていただける。ヴェルディの経営の安定化を考えれば本当にありがたい」と安どの表情を浮かべた。
訳せば「白馬の騎士」となるホワイトナイトとは、M&Aにおいて買収される企業の株を友好的に買い取る第三者企業のことを表す。ゼビオがヴェルディの発行済株式を取得することはないが、それでも羽生事務局長は「十分にホワイトナイトです」と感謝の思いを口にした。
ゼビオは「ゼビオドーム」や「スーパースポーツゼビオ」のスポーツ専門店をはじめ、傘下の「ヴィクトリア」や「ヴィクトリアゴルフ」などを含めて全国で511店舗を展開している。その一方で単にスポーツ用品を販売するだけでなく、スポーツを通じて感動を与えることを目指して「こころを動かすスポーツ」をコーポレートステートメントに据えている。
そうしたスポーツに取り組むゼビオの姿勢に共鳴した羽生事務局長が陣頭に立ってアプローチを開始し、ヴェルディの経営理念、活動内容、今後の運営計画などを説明。今月に入って交渉が一気に進展し、Jリーグ理事会前日の18日深夜に合意に達したという。
ヴェルディユースのOB有志が設立した持ち株会社による経営が行き詰まり、Jリーグが運営を代行する異例の形で、発行済み株式の約98.8パーセントが株式会社ジェイリーグエンタープライズに譲渡されたのが今年6月下旬。この時点で約4億6000万円の債務超過が生じ、9月中旬をめどにしていた新たな株主探しも思うようにはかどらない。
Jリーグによる運営代行は今シーズン限りの超法規的措置。いわば来シーズン以降におけるチームの存続そのものが危ぶまれていた状況で、なぜゼビオは手を差し伸べたのか。答えはどんなに苦しい状況でも絶対に手放さなかったヴェルディの「財産」にある。
交渉に当たってきた羽生事務局長が言う。
「ウチはヴェルディだけでなく、その育成組織、女子のベレーザと傘下のメニーナ、男子のバレーボールとトライアスロンのチームを持っている。ゼビオさんには『ヴェルディは総合スポーツクラブにならないといけない』とおしゃっていただいた。その中核にサッカーがあるということです。ゼビオさんの力添えを得て、力強く前進していきたい」
実際、ヴェルディとベレーザは、育成組織出身選手が占める割合が他チームと比較にならないほど高い。これまで経営体制がコロコロと変わってきた中で「ここだけは」と死守し、予算を計上してきた「聖域」が、ゼビオ側にもこの上ない魅力として理解されたのだろう。
19日に発表されたゼビオのリリースにもこう綴られている。
「東京ヴェルディはクラブ創設から40年以上の歴史をもち、J1での優勝実績もある国内では有数の名門クラブであり、同クラブは『感動と喜びを与える強いチーム、そして多くの人々に愛されるチーム』『サッカーのみならず生涯スポーツ活動に貢献する総合型スポーツクラブ』を標榜しています。幼稚園児、小学生からトップチームまで一貫して育成するプログラムがあり、日本代表選手を多数擁する女子サッカーチーム、さらにバレーボールチーム、トライアスロンチームも活動しています。
当社はこうしたクラブの理念、方針に共感し、ひいてはスポーツ業界全体への貢献に資するものであると判断し、東京ヴェルディとの包括メインスポンサー契約を締結することで合意いたしました(原文のまま)」
Jリーグの大東和美チェアマンも「そうしたヴェルディの価値に対して投資していただけるかどうか」と話していたが、1969年のクラブ創設時からコツコツと積み重ねられてきた努力が、結果としてヴェルディ存続への大きなアシストとなったわけだ。
もちろん、すべての問題が解決したわけではない。最大案件である新株主に関して、羽生事務局長は「ここまで時間がかかってしまったが、ゼビオさんとのお話があって、個人を含めて複数の企業が出資してくれることになった」と明言。「ゼビオ効果」もあって来シーズン以降の経営母体についてもメドが立ったことが、19日のJリーグ理事会でも報告された。
Jリーグ側も経営諮問委員会で出資企業を精査した上で29日の臨時理事会に諮ることを決めた。現時点で約3億8000万円にまで圧縮された債務超過が解消され、来シーズン以降も問題なしと承認されれば、出資者による株主総会をすみやかに開催して新しい経営陣を選出。羽生事務局長は社長のポストを後任に引き継ぎ、Jリーグは経営から撤退する。
Jリーグの規約では、J2クラブのJ1昇格資格について「リーグ戦が終了する30日前までに債務超過が解消されない場合はその資格はなし」と定められている。今シーズンのデッドラインは11月4日。まさにギリギリの状況で来シーズンへの道が開けたことになる。
夏場から調子を上げてきたヴェルディは、第30節を終えたJ2で5位にまで浮上。J1昇格圏の3位以内を射程距離にとらえた。11月14日に4位のジェフユナイテッド千葉、同20日には3位のアビスパ福岡との直接対決も控えている。高い個人技と長短のパスをリズミカルにつなぐスタイルには、黄金時代を彷彿とさせる華麗さと楽しさが凝縮されている。
19日の理事会ではヴェルディのJ1昇格資格の有無も審議された。ヴェルディが下位に低迷していた6月の経営権譲渡時は問題にもされなかった案件。シーズン大詰めのこの段階になって審議されること自体が不思議な話だが、大東チェアマンは「来シーズン以降も存続する方向性が見えたことで、規約に則った運用をすると確認された」と明言した。
ようやく見えた光明にも、羽生事務局長は「他のJ2クラブと同じスタートラインにようやく立たせていただいたということ」と慎重な発言に終始している。
昨年のこの時期も持ち株会社「東京ヴェルディホールディングス」が2社のスポンサー候補企業を提出。5億4000万円のスポンサー料収入があることを前提に日本テレビからの経営譲渡を求めたが、実は候補企業に対して経営諮問委員会が難色を示していた。
最終的には理事会がGOサインを出したことが今日の混乱につながったわけで、当然、今回の経営諮問委員会と臨時理事会におけるハードルは高くなる。羽生事務局長が「詰めを誤らないようにしたい」と表情を引き締めたのも当然のことだろう。
それだけに、信頼性という意味においても、ゼビオとの大型包括メインスポンサー契約にこぎつけたメリットは計り知れないほど大きい。
包括契約には空白だったユニホームの胸の部分にゼビオのロゴマークが登場するほか、ホーム公式戦における年2回の冠試合命名権、インターンシッププログラムの共同開催運営権などが盛り込まれている。加えて、ゼビオの連結子会社である「ゼビオナビゲーターズネットワーク」がベレーザの女子選手を雇用する方向で調整していて、羽生事務局長は「彼女たちが活動していく環境を整えていただければ」と大きな期待を寄せている。
名称を東京ヴェルディのままとすることも、味の素スタジアムをホームとすることも、緑を基本カラーとすることも含めて、基本的には何ひとつ変えずに新体制に引き継がれる。
明日をも分からぬ不安定な情勢下に置かれながらも未来を信じて、ピッチの上で懸命にプレーしてきた選手たちにとっても何よりの朗報であることに違いない。
唯一の懸案事項は練習場とクラブハウス。現在はよみうりランド内の一角にあるが、読売グループが経営から完全撤退した今は微妙な状況に置かれている。羽生事務局長は「現在交渉中」とした上で「こちらの体力に応じた金額しか支払うことはできない」とだけ話した。
もし練習場とクラブハウスを一から探すことになれば、新しい経営陣にとって最大の足かせになることは必至。この不況下では満足に交渉ごとも運ばないだろう。
現在のクラブハウスは1993年に完成し、Jリーグ王者に輝いた黄金時代も、その後の低迷期もすべてがこの地を舞台にして受け継がれてきた。天然芝と人工芝のグラウンド2面ずつが完備し、トップチームだけでなく育成組織の金の卵たちが日々汗を流している。
読売グループにも経営戦略や各種意見があるだろうが、日本サッカー界に輝く名門の礎を支えてきた自負が少しでもあるのならば、ヴェルディの未来を紡いでいくためにも、ここは使用料の減額に代表されるような「大人の対応」を見せてほしい。
☆☆☆論スポ最新号の購入はこちらをクリックしてください!☆☆☆
2010年10月20日 15:14|記事URL|コメント(0)|トラックバック(0)
トラックバック(0)
この記事のトラックバックURL: http://sv62.wadax.ne.jp/~sports-times-jp/mt/mt-tb.cgi/439
コメント(0)
コメントを書く
- 井上康生 「最後の内また」
(2008/06/08 21:36) - 北京五輪100kg超級代表、石井彗の練習風景
(2008/05/24 22:25) - ばんえい競馬@帯広ばんえい競馬場
(2008/05/07 12:15)
カテゴリー
アーカイブ
編集部より