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日本協会とJリーグの綱引きに揺れるザックJAPAN  by 藤江直人

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 アルゼンチンをホームの埼玉スタジアムに迎え、敵地ソウルに乗り込んで韓国と対戦した10月の2連戦で、日本代表は2010年の試合スケジュールを打ち上げた。
 国際サッカー連盟は11月17日を国際Aマッチデーに定めていて、ブラジル対アルゼンチンやスペイン対ポルトガルといった豪華カードを含めた22試合が組まれている。
 残念ながら日本はW杯開催によって全体的に過密スケジュールを余儀なくされ、この日に天皇杯4回戦の8試合を組まざるを得なかった。貴重な強化の場を放棄してしまったわけだが、それはともかくとして、W杯以降のマッチメークには十分な及第点を与えてもいいだろう。


 特にリオネル・メッシ以下、ほぼベストの陣容で来日したFIFAランキング5位のアルゼンチンと、永遠の宿敵・韓国と対戦した2試合は、アルベルト・ザッケローニ監督をして「親善試合とは言えない雰囲気になった」と言わしめたほど内容の濃い真剣勝負となった。
 新生日本代表の現在地と課題を肌で感じるのに十分だったのだろう。選手たちの思いを代弁するように、MF松井大輔(トム・トムスク)は韓国戦後にこう言葉を弾ませていた。
「新監督になっていい戦いができている。こういう試合を続けていきたい」
 しかしながら、来たる2011年シーズンは選手が望むような状況は訪れそうにない。


 大陸王者を決める4年に一度の公式戦・アジアカップが年明け早々にカタールの首都ドーハで開催される2011年シーズンのスケジュール作成は、現時点において日本サッカー協会とJリーグを悩ませる懸案事項のひとつになっている。
 1月7日に開幕するアジアカップは、同29日の決勝戦まで勝ち進めば最大で6試合を戦うことになる。本来ならば貴重なオフとなる期間を韓国やオーストラリア、そして中東勢との真剣勝負に充てるだけに、代表選手たちの消耗度は相当なものになる。元旦に決勝が行われる天皇杯を勝ち進んだチームに所属する選手はなおさらだろう。国際Aマッチデーではないため、シーズンの真っ只中にいるヨーロッパ組を招集できるかどうかも現時点で未定だ。


 7月3日には1999年大会に続いて日本が招待されているコパ・アメリカ(南米選手権)がアルゼンチンで開幕する。日本が進出することはまずないが、それでも決勝戦が行われる24日までは必然的にJリーグの試合を組み入れることはできない。
 さらに、9月2日には4年後のW杯ブラジル大会の出場権をかけたアジア3次予選が早くも開幕する。組み合わせは来年7月の大陸予選抽選会で決まるが、すでに確定しているスケジュールでは9月6日、10月11日、11月11日、同15日と年内の間に5試合を行うことになっている。これだけを見ても過密スケジュールが待っていることが分かる。


 一方でJ1もこれまで同様に年間34試合が組まれ、同時進行で春先からナビスコカップとアジアチャンピオンズリーグ、秋口からは天皇杯を戦う。
 2011年シーズンの国際Aマッチデーは、W杯アジア3次予選の開催日以外では順に2月9日、3月25日、同29日、6月1日、同3日、同7日、8月10日、10月7日と定められている。しかし、カレンダー通りに日本代表の親善試合を組んでいたらとても国内のスケジュールを消化できないし、何よりも最も大切な選手たちが疲労過多で壊れてしまう。移動に時間を要するアウェーの地に乗り込んで強豪国の胸を借りることも難しくなってくる。


 結果を求められる公式戦と異なり、親善試合は事前の合宿で伝えた戦術など内容もチェックしながら戦える絶好の場となる。アルゼンチンのように主力が常に来日するケースは稀で、アウェーに乗り込んでの親善試合が最も望ましいとされる理由もここにある。
「南米選手権の件もあって、来年は親善試合で海外に出ていくことがかなり難しい」
 日本代表のマッチメークを担当する原博実強化担当技術委員長は、困惑した表情を浮かべる。マッチメーク委員会には鹿島アントラーズと名古屋グランパスの強化責任者も参加。Jリーグ側の意向を反映させているが、W杯イヤーだった今年と比較すると、日本代表として拘束される日数は大幅に削減される方向で調整が進んでいるという。


 今月下旬に風邪で一時ダウンしたものの、韓国戦後もザッケローニ監督は精力的にJリーグを視察。新戦力を発掘しながら、日本サッカーへの理解を深めようとしている。
「まだまだ選手たちに私のやりたいことは伝わり切っていない。ただ、今後のスケジュールを見て、私はゆっくりとこのチームを成長させていこうと決めた。最終的な目標は2014年のW杯だが、その間にアジアカップがあり、コパ・アメリカに参加できて、親善試合もたくさん組まれると思うが、そうした試合を経て成長させていくのが我々の仕事だ。特にこのチームの課題は試合の流れを読み、きちんとした状況判断に基づいた戦術を用いることになると思う」


 決意を新たにした指揮官はこんな青写真を描いている。本格的な始動からここまでの間で見えてきた素顔は「教え魔」であること。霧雨が降る中で守備陣に約40分間も自身のイズムを注入した10月4日の合宿初日の光景が、そのことを何よりも端的に物語っている。
 U‐21代表とガンバ大阪の練習試合を視察した今月20日には、ガンバを率いる西野朗監督に「毎日指導できる環境はいいね」という旨の思いを吐露したという。セリエAの6クラブの監督を歴任したザッケローニ氏にとって、ナショナルチームを率いるのは今回が初めて。思うように時間を使えないもどかしさを早くも感じているのかもしれない。


 そうしたジレンマが、来シーズンのスケジュールを見てさらに増幅されるかもしれない。
 恒例のキリンカップが6月に行われると前提すれば、となると他に親善試合を組めるとしたら3月か10月くらいとなってくる。2月はアジアカップ後の選手を酷使するわけにはいかず、酷暑に見舞われた今年の反省から、選手の消耗を防ぐ意味でできる限り試合感覚を空けてほしいという要望がJクラブ側から出されている8月に行うのも現実的に無理がある。
 2012年にポーランドヨーロッパ選手権を共催するウクライナと来年中に親善試合を行うことで合意しているが、敵地ワルシャワに乗り込むことは物理的にほぼ不可能だろう。


「もちろん強いところとやりたい。いろいろと考えているんですけどね」
 こう語る原技術委員長も、事前合宿と親善試合のセットを繰り返しながら段階的にチームを作り上げていきたいとするザッケローニ監督とJリーグとの間でジレンマに揺れている。パラグアイ、アルゼンチン、韓国と骨のある相手と対戦した選手たちも、来日してみれば主力の大半が不在という今までの国内開催の親善試合が繰り返されれば拍子抜けするはずだ。
 最も避けたいのは、中途半端なチーム状態で来年9月2日に始まるW杯アジア3次予選を迎えること。コパ・アメリカを絶好の強化の場ととらえることもできるが、それでもザッケローニ監督と日本代表に与えられるであろう時間は極めて限られている。


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2010年10月29日 12:21|記事URLコメント(0)トラックバック(0)

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