Home > 本日の論! > 存続決定と同時に始まる東京ヴェルディ再生5年計画  by 藤江直人

存続決定と同時に始まる東京ヴェルディ再生5年計画  by 藤江直人

存続決定と同時に始まる東京ヴェルディ再生5年計画  by  藤江直人

☆☆☆論スポ最新号の購入はこちらをクリックしてください!☆☆☆


 日本サッカー界屈指の名門を再生させる「5年計画」がスタートする。
 Jリーグの臨時理事会が29日に東京・文京区のJFAハウスで開催され、経営難のためJリーグが今年限りの超法規的措置で運営を代行していた東京ヴェルディの新たな出資企業と今後の運営計画を承認。ヴェルディの来シーズン以降の存続が正式に決定した。
 新たに出資するのは13の企業及び個人。都内を中心に幼児向けのスポーツクラブなどを運営する株式会社バディ企画研究所が株式の約3分の1を取得して筆頭株主となり、前身の読売クラブ出身で、Jリーグ創成期に清水エスパルスでDFとしてプレーした斉藤浩史氏(現株式会社協同専務取締役)も個人として出資。OBとして古巣の危機に一肌脱いだ。


 Jリーグ臨時理事会の承認を受けて、ヴェルディは臨時の株主総会と新取締役会を同じくJFAハウス内で開催。リーグが運営代行を始めた7月からJリーグ事務局長との兼任の形でヴェルディの社長を務め、一連の出資企業との交渉やゼビオ株式会社との包括メーンスポンサー契約締結に奔走してきた羽生英之氏を新たな代表取締役社長に決めた。
 羽生氏は29日をもって05年12月から務めてきたJリーグ事務局長を退任。社外取締役にも3人が新任され、斉藤氏のほかにゼビオの執行役員事業開発室長を務める中村孝昭氏らが名前を連ねた。バディ企画研究所の鈴木威社長はヴェルディの会長に就任した。


 当初の予定では、ヴェルディの新しい経営陣が決まるとともに羽生氏も社長を退任。Jリーグ事務局長の仕事に専念するはずだった。
 実は羽生氏の子供がバディ企画研究所が運営しているサッカークラブでプレーしている。そうした縁もあって、6年前から懇意にしてきた鈴木社長にヴェルディへの出資を求めた。
 鈴木社長自身も「ヴェルディが消えればサッカーをやる東京の子供たちの夢が消えてしまう」と案じていて、羽生氏にひとつだけ出資への条件を出したという。
鈴木社長「不退転の決意でやって下さい。それならば支援します」
 羽生氏自身、無我夢中で突っ走ってきたこの3か月間で心境に変化が生じていた。


 東京五輪が開催された1964年4月生まれの46歳。サッカーの経験はない。もともとはJR東日本に勤務し、同社と古河電工が合弁して誕生したジェフユナイテッド市原へJリーグ創成期に出向。広報担当などを務めた後の97年にJリーグ事務局に入った。
 この時、古河電工サッカー部OBで、Jリーグ創設に尽力した一人でもある木之本興三常務理事からかけられた「ある言葉」が、今でも行動理念の礎になっているという。
羽生社長「困った時、あるいは迷った時には日本サッカー界のためにどうするかを考えろ、と言われました。個人的に今回のミッションを完遂する中で、このクラブの価値というものをいろいろな方々から教えていただいた。ヴェルディの存続をお手伝いするのも日本サッカー界に貢献することになるのでは、と考えるようになったんです」


 存続が決まったと言っても、収入基盤はまだなお脆弱だ。
 資本金は約3億円。臨時理事会に提出し、承認された来シーズンの予算は8億1500万円。前経営陣が最終的に資金繰りをショートさせた今シーズンの9億5500万円よりさらに圧縮された。選手の年俸総額は約2億円に抑えられ、J1昇格を果たしても変わらない。
羽生社長「払うカネがない以上は育てるしかない。補強しないのではなく、補強できないということ。外国人選手も獲得するつもりはありません。それでも、日本人の若手選手でもやれるという自信はある。来シーズンもユースから昇格してくる選手がたくさんいる。もしJ1に上がったとしても、若い選手を起用することで何とか乗り切っていきたい」


 現時点では育成型サッカークラブの域を出ないが、男子バレーボールやトライアスロンのチームも東京ヴェルディの名称のもとに活動している。
 将来的に目指すのは地域に根ざした総合スポーツクラブ。サッカーだけでなく野球、陸上、柔道、バスケットボール、ゴルフ、器械体操、新体操、空手、スキーなど多種多様な競技を通じて幼児教育に取り組んでいるバディ企画研究所から学ぶべき点は多く、羽生社長も「子供たちに夢を追いかけさせる仕事をしている」と出資を求めた理由を説明する。
 ヴェルディのそうした姿勢にスポーツ用品・アパレル販売の大手であるゼビオも共鳴し、メーンスポンサーとして今年を含めて5年間の大型包括契約を結んだ。
 

 もちろん、総合スポーツクラブの象徴にサッカーが据えられることは言うまでもない。
羽生社長「当面は若手を育てながら、できれば5年で勝負できるチームを作りたい。Jリーグ創成期は日本指折りのブランド力を有したチームが挫折せざるを得なかった理由はリーグ全体で考えるとして、我々はリスタートというかゼロの状態から力強く前進していって、一人でも多くの方々に愛されるクラブをつくっていきたいと思っています」
 カズやラモス瑠偉らのスーパースターを擁し、まばゆい輝きとともにブームの中心となったJリーグ創成期。その原資となった「読売・日テレブランド」と完全に決別した今、育成組織の出身選手が大半を占めるクラブ形態で5年後に頂点を目指すとする再生宣言だった。


 ヴェルディの未来を拓く希望の芽はすでに萌え始めている。
 元プロ野球選手の高木豊氏の長男で19歳の俊幸と次男で17歳の善朗の両FWを中心に、育成組織出身の若手が機能しはじめた夏場からチーム状態も好転。現在は5位にまで順位を上げ、4位のジェフに勝ち点2差、3位のアビスパ福岡に同6差まで肉迫した。
 長短のパスをリズミカルにつなぐスタイルは、往年のヴェルディをほうふつとさせる楽しさと魅力に満ちている。残りは6試合。消化試合数が両チームより1試合多いヴェルディが置かれた立場は厳しいが、11月14日にジェフ、20日にはアビスパとの直接対決が控える中で、今回の存続決定は選手たちのモチベーションを高める絶好の追い風となるはずだ。


 特にホームの味の素スタジアムにジェフを迎える大一番はこう命名されている。
「SAVE OUR VERDY 緑の伝統を、守れ」
 チーム名称やエンブレムも、ホームスタジアムも、1969年の読売クラブ創設時から変わらないチームカラーも、どんな経営状況になってもヴェルディの「聖域」として死守してきた育成組織も、すべて現状のまま未来へ紡いでいくことも改めて確認された。
 残されたミッションは、08年シーズンを最後に遠ざかっているJ1の舞台への復帰。選手をさらに鼓舞するために、空白だった胸の部分にメーンスポンサーのゼビオのロゴを入れた新たなユニホームが、ジェフ戦での初お披露目へ向けて急ピッチで製造されている。


☆☆☆論スポ最新号の購入はこちらをクリックしてください!☆☆☆

2010年10月30日 03:08|記事URLコメント(0)トラックバック(0)

トラックバック(0)

この記事のトラックバックURL: http://sv62.wadax.ne.jp/~sports-times-jp/mt/mt-tb.cgi/443

コメント(0)

コメントを書く