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事実上の終戦。湘南ベルマーレ・反町康治監督の嘆き by 藤江直人

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■J1第28節
湘南ベルマーレ[勝ち点16] 1‐3(前半0‐2) 大宮アルディージャ[勝ち点34]
[11月10日午後7時3分キックオフ@平塚競技場/観衆6032人]
時計が午後9時を回り、ますます冷え込みが増してきたピッチの一角。試合後の公式会見を終え、ロッカールームへ戻る途中で囲み取材に応じた湘南ベルマーレの反町康治監督が、取りまく大勢の報道陣を見ながら自虐的な言葉で笑いを誘う。
「1試合しかないから、こんなに来ちゃって......」
本来ならば10月30日に行われていたはずが、関東に接近していた大型の台風14号の余波を受けて中止。試合が組まれていない平日のナイターで代替開催された一戦は、図らずもJ1残留戦線の行方を左右する注目カードとなってしまったからだ。
ホームのベルマーレが勝てば最下位を脱出し、アウェーの大宮アルディージャが勝てば勝ち点34で13位のベガルタ仙台に並び、残留へ向けて大きく前進する。
何よりも前者は7月18日に敵地の西京極で京都サンガを1対0で下して以来、15戦連続で勝利から遠ざかっている。ホームでの白星に至っては、実に4月25日にまでさかのぼる。文字通りの泥沼にあえぐ中で、反町監督はなりふり構わぬ戦法に打って出た。
アルディージャのツートップ、ラファエルと李天秀に村松大輔と山口貴弘の両センターバックをつけ、その背後にはカバーリング役として17歳の遠藤航を置く。即席の3バックで、まずは失点をしないことを最優先に据えてキックオフの笛を迎えた。
攻め手を減らしてでも守る。消極的にも映った指揮官の意図は単純明快だった。
「我々は先制点を取ると、非常にいいゲーム展開で終わっているので」
逆を言えば、先手を許せばまず白星を手にすることはできない。勝ち星のない15試合を見れば一目瞭然だ。先制したのはわずか1試合。大半が序盤から劣勢の展開を強いられ、ズルズルと失点を重ねる。15試合における得点は13、失点は実に43を数えていた。
しかし、背水の青写真は前半17分に早々と崩壊する。敵陣に攻め込みながら不用意なパスミスを犯し、電光石火のカウンターを食らう。自陣に入って何とかファウルで止めたものの、ルーキーのMF金久保順に鮮やかな直接フリーキックを叩き込まれてしまった。
変則的な布陣にアルディージャが戸惑ったこともあり、序盤はベルマーレがペースを握りかけていた。それでも、相手のペナルティーエリア付近にまでボールを運びながら、ゴールを奪うための最後の仕掛けができない。選択肢はヨコパスやバックパスにほぼ限定された。
「決して自信を失っているわけではないんだけど」
反町監督は強がってみせたものの、前半に放ったシュートは32分のたった1本。19歳の左サイドバック、古林将太がオーバーラップからゴール上に大きくはずしただけだった。
「それでも、どこかオドオドしているように見えましたが」
報道陣からこう指摘された指揮官は「おっしゃる通りです」と認めるしかなかった。
29得点は下から数えて3番目に少なく、67失点はダントツの最多を数えるチーム状態が反映された90分間。反町監督の自虐的なコメントは止まらなかった。
「レアル・マドリッドの選手からあんな変なボールの奪われ方はしないが、ウチはJ1で最下位のチームですから。結局はチャンスにパワーアップしてシュート、または得点で終えられるチームとため息で終わるチームの差が出た、という感じは否めないと思う」
前半33分にはゴール正面でパスを受けたラファエルに、誰もプレッシャーをかけない。シュートモーションに入られてから慌ててMF田村雄三が距離を詰めたが、伸ばした右足に当たったボールはコースを変えてネットに吸い込まれていった。この時点で万事休す、だ。
迎えたハーフタイム。指揮官はラファエルのシュートシーンを引き合いに出しながら、激しい口調で攻守に積極さを求めた。しかし、笛吹けど躍らず。FW田原豊が30メートル近い距離から無謀なシュートを放った場面には、思わず苦笑いするしかなかった。
「Aと言えばAしかやらないし、Bと言えばBしかやらない。自分の指導力のなさを感じる。オレはミスをした選手を怒ったことはないんだけどなあ。ミスを恐れて、オドオドしたプレーをした選手は怒鳴ったけど。ウチの高校生みたいに堂々とやればいいのに」
湘南ベルマーレユース所属の2種登録選手で、アルディージャ戦がJ1における2試合目となった高校3年生の遠藤を称える言葉にも、悲しいかな、空しさが漂う。
J2に降格するのは16位以下の3チーム。残り5試合となった時点で勝ち点は16にとどまり、15位のFC東京には13もの差をつけられた。
敵地で清水エスパルスと対戦する14日の次節で負ければ問答無用の降格決定。勝ち点を上積みできたとしても、FC東京かヴィッセル神戸のどちらかが勝てば夢は潰える。
「やむを得ない、でしょう」
エスパルス戦後も首位を独走する名古屋グランパスを皮切りにガンバとセレッソの大阪勢、アルビレックス新潟と上位陣との対戦が続く日程に、反町監督もついに腹をくくった。
この夜に対戦したアルディージャをはじめ、17位のサンガ、16位のヴィッセル、15位のFC東京はすべてシーズン途中での指揮官交代という荒療治が施されてきた。
「多くの方が代わられている中で私がここまで指揮を執っているということは、そういう(J2に降格する)瞬間に立ち会わなければいけない可能性があることは十分理解している」
しかし、10億円に満たない予算での運営を余儀なくされるベルマーレが、そうした「カンフル剤」を打てるはずもない。開幕前の選手補強は名より実のピンポイントにとどまらざるを得ず、シーズン中にしても浦和レッズで構想から外れていた元日本代表GK都築龍太を、来年1月までの期限付き移籍で獲得するのが精いっぱいという状況だった。
いわば、荒波を覚悟で臨んだJ1での戦い。反町監督自身も激闘の末に昇格を決めた昨年12月の段階で「目標は15位でのJ1残留」と公言してはばからなかった。
だからこそ、歯を喰いしばってでもファイティングポーズは取り続ける。アルディージャに喫した完敗は事実上の終戦を告げるものだったが、J1戦線に何の軌跡も残すことなく、下を向いたまま去っていくわけにはいかない。新たなスタートを来年から切るためにも。
「(サンガの)秋田監督も言っているように、可能性のある限り戦うのが我々の仕事であり、ベルマーレのサポーターへのレスポンスでもある。どんな状況になろうと、我々はプライドを持って戦うしかないということに変わりはありません」
試合後の挨拶に並ぶベルマーレの選手たちには、罵声以上に大きな拍手が送られた。奮い立たされたのか。指揮官から希望の灯として名前を挙げられた遠藤が力を込める。
「引いていたら、勝利はもちろんゴールだって奪えない。戦う気持ちを前面に押し出して、シュートへの意識をもっと高めて、意地でも勝ち点3を狙にいきたい」
求められるのは、ミスを恐れずにチャレンジを繰り返す姿勢。いわばサッカーの原点であり、3月の開幕以降の苦闘の中でチームがいつの間にか忘れていたことでもある。
仮定の話になるが、もしも白星を挙げられずにシーズンを終えれば、07年に横浜FCが喫した20試合連続勝ち星なしのJ1ワースト記録を更新してしまう。サポーターのエールに報いるためにも、ベルマーレの名前を不名誉な歴史に刻むことだけは許されない。
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2010年11月11日 04:45|記事URL|コメント(0)|トラックバック(0)
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