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3年後のJ1昇格へ。ガイナーレ鳥取が描く夢の第2章  by 藤江直人

3年後のJ1昇格へ。ガイナーレ鳥取が描く夢の第2章  by  藤江直人

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 晴れやかなこの光景を、10年前の時点で誰が予想できただろうか。
 東京都内のホテルで8日午後に行われたJFLの年間表彰式。2位以下に大差をつける独走で初優勝を果たし、先月29日のJリーグ臨時理事会で悲願のJ2加入が承認されたガイナーレ鳥取の選手、首脳陣、スタッフの全員がひな壇で眩いスポットライトを浴びている。
 最優秀監督賞と敢闘賞を受賞し、ベストイレブンには最多タイの4人を輩出。最優秀選手に元日本代表のMF服部年宏が輝く文字通りの独壇場に、地元の米子市出身で、この10月に40歳になったばかりの塚野真樹社長は、新たな船出への決意をJFLへの敬意を込めながらこう語った。
「JFLで10年間やってきたチームは違うな、というところをお見せしたい」


 チーム名称がまだSC鳥取だった2000年12月。中国リーグで初優勝を飾り、続けて行われた全国地域サッカーリーグ決勝大会で4位に食い込んだ実績を評価され、全国社会人サッカー連盟からJFLへの加盟を推薦された直後だった。
 当時はSC鳥取の主力選手として活躍していた塚野社長が振り返る。
「会議が2時間もすったもんだして、モメにモメた、と聞いています。(JFLに上げて)大丈夫なのか、という不安の中で『どうしてもやりたい』ということで入れてもらった」
 チーム力に懐疑的だった視線を、壮大な夢と情熱で説き伏せてから苦節10年。Jクラブになるという夢を自らの手で成就させたが、現時点で浮かれたムードはチーム内に漂っていない。


 むしろ、勝って兜の緒を締めよ、と言うべきか。
「現状のままでは、もちろんJ2では通用しないと思っている」
 昨シーズン終盤に東京ヴェルディの指揮を執り、J2のレベルを知っている松田岳夫監督は冷静に戦力を分析する。もちろん、来年の挑戦を悲観している訳ではない。
「ほとんどの選手たちがJFLの外の世界を知らないし、知ろうともしない。言ってみれば井の中の蛙ですし、いずれ思い知らされる時が来る。テクニックでは十分に通用するけど、フィジカルやタマ際の強さ、判断のスピードといった部分はまだ及ばない。個々のレベルをどう上げていくか。開幕前のキャンプではJクラブとの練習試合をできるだけ多く組んでいきたい、と考えています」


 J2へ向けて「反面教師」とすべきチームもある。
 第3節で初白星を挙げたのを最後に、33試合連続で勝ち星なしというJ1を含めた不名誉なワースト記録を更新中のまま、ダントツの最下位で今シーズンを終えたギラヴァンツ北九州だ。
 昨シーズンのJFLで4位と成績面での条件をギリギリで満たしてJ2に加入したが、5位で涙を飲んだガイナーレとの勝ち点差はわずか2。勝ち星の数は16で並んでいた。
 ほろ苦い経験を糧に、ガイナーレは服部やGK小針清充、DF喜多靖、MF美尾敦のJクラブ経験者を迎えてパワーアップ。実際にその4人がベストイレブンに選出されたが、それでもギラヴァンツが未知のJ2戦線に挑む上での「ものさし」になることに変わりはない。


 昨シーズン途中に加入し、特にメンタル面で口を酸っぱくして注文を繰り返し、経験が乏しい若手の意識改革を促してきた元日本代表のFW岡野雅行が言う。
「北九州がああなった詳しい理由は知らないけど、甘い考えのままでは北九州の二の舞になる。でも、来シーズンに関しては、あまりガミガミ言わないつもりです。僕やハット(服部)があれこれ言うより、みんなが実際に肌で感じ取っていかなければいけないことですからね。その意味でもスタートが大事。モチベーションの高さを、いかに勢いと自信につなげられるかでしょう」
 来年7月で39歳になる「野人」は、慣れ親しんだ沖縄で自主トレを積み、心身ともに万全の状態で1月中旬のチーム始動を迎える青写真を早くも描いている。


 母国タイへ帰国していたヴィタヤ・ラオハクル前監督が交通事故に遭った関係で、2月に急きょ就任した松田監督だが、前任者が標榜していたポゼッションサッカーは踏襲した。
 しかしながら、今シーズンのJFLでその効果を発揮する機会はほとんどなかった。
「ずっとポゼッションサッカーの練習をしてきましたが、実際にJFLの試合になると、一発で相手の最終ラインの裏へ抜けられるケースも多いし、そこでポゼッションを高めてもあまり意味がない。でも、J2の戦いは違う。今年の練習が財産になってくると思っている」
 課題は得点ランク8位のFWハメドの10ゴールが最高という決定力。限られた予算の中で、指揮官は「前線で決定力のある選手はやはりほしい」と補強のポイントを挙げる。


 総得点64は全体で3位。JFLでは決して悪い数字ではないが、1試合で訪れるチャンスが激減するのは必至な来シーズンを考えれば、FW陣が1人もベストイレブンに選出されなかったという現実は心細いと言わざるを得ないだろう。
 実際、ギラヴァンツの例を見れば、2ゴール以上をマークした試合がわずかに5。深刻な決定力不足に悩まされ、攻守のバランスが一気に崩壊していった。
 今シーズンのガイナーレの予算は約3億円。来シーズンはこれにJリーグからの分配金で1億円、昇格に伴う増収で1億円、さらにもう1億円を加えた計6億円の予算を策定し、その1億円を確実なものにすべく、かつてヴィッセル神戸でもプレーし、史上初のJリーガー出身のトップとなった塚野社長が陣頭に立って営業活動に奔走している。


 2009年にJ2に加入したファジアーノ岡山が、経営規模の小ささを危惧されながらも1年目で約6億3000万円を予算を組んだことも励みになっている。
 必然的に補強はピンポイント、量より質を重視することになるが、塚野社長は「やりようはある。こうすれば強くなる、というのがあるので。地方の面白い、変なクラブを目指します」と継続性こそが強みと強調。松田監督も「J2だからといって、大量に選手を入れ替えることはしない。ウチは雑草ですから。雑草らしく戦います」と気負いのない表情で決意を新たにした。
 1年目の目標順位は半分の9位。2年目には上位争いに顔を出し、3年目で3位以内に入ってJ1に昇格する「3か年計画」がいよいよ始まる。J2加入に続く「夢の第2章」。目標が上がるごとに当然ながら予算も上積みされ、2013年には10億円に到達させる青写真が描かれている。


 Jリーグの大東和美チェアマンからは、現在約9200万円の資本金を5000万円増資させることと、2011年シーズンの単年度黒字を厳命されている。
 いずれも生半可な努力では達成できないだろう。目標順位に関しても、塚野社長は「中長期的に見て1年目が一番大変だと思う」と押し寄せる荒波を覚悟している。
 それでも、JFLに参入した直後から「無理だ」という言葉を何度もかけられ、冷ややかな視線を向けられてきたこのこの10年を振り返れば、恐れるものなど何ひとつない。
 理念に掲げてきた『強小』は、もちろん来シーズンも継続される。強さと小ささは必ずしも相反しない。小さいクラブだからこそ発揮できる強みをJ2にぶつけるつもりだ。


 東京農業大から加入して8年目。弱小だったSC鳥取時代からチームを支えてきた努力を評価され、敢闘賞を受賞したミスター・ガイナーレ、30歳のMF実信憲明は言う。
「正直、長かったけど、いろいろなことを経験して成長することもできた。8年間は決して無駄じゃなかった。来年3月の開幕までに、J2のレベルを身を持って感じたい」
 J2加入への条件だった平均入場者数3000人は楽々とクリアした。実信によれば、街中やコンビニなどで「おめでとう」と声をかけられるケースが飛躍的に増えたという。ガイナーレを特集した雑誌が県内では完売することも、今では珍しいことではない。
 かつてはサッカー不毛の地と言われた地に初めて誕生したJクラブ。米子市、鳥取県、そして山陰地方のファンから託される夢が、ガイナーレのさらなるパワーになる。


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2010年12月 9日 05:29|記事URLコメント(0)トラックバック(0)

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