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日本サッカー協会vs選手会。駒野友一が沈黙した理由  by 藤江直人

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 それだけデリケートな問題ということなのだろうか。
 2010年に活躍したプロスポーツ選手及び団体を表彰する「内閣総理大臣杯日本プロスポーツ大賞」の表彰式が22日に都内のホテルで行われ、今夏のW杯南アフリカ大会でベスト16に進出したサッカーの日本代表が殊勲賞を受賞。チームを代表してDF駒野友一(ジュビロ磐田)がひな壇に登場し、華やかなスポットライトと出席者からの拍手を浴びた。
 折りしも、日本代表選手の待遇改善を要望する日本プロサッカー選手会(JPFA)と日本サッカー協会との間で本格的な交渉が始まったばかりだが、パラグアイとのPK戦よりも「緊張した」と照れ笑いを浮かべていた駒野も、この一件に関しては困惑した表情を浮かべた。


 実は新聞各社に対しては、JPFAと日本サッカー協会の交渉に関する質問はNGという通達がジュビロ側から出されていたという。そうした事情を知る由もないこちらが表彰式終了後の囲み取材で駒野を"直撃"したわけだが、返ってきた言葉はごく短いものだった。
駒野「個人として言えることはないので。すべてを話しているので......」
 あえて駒野に聞いたのには理由がある。10月12日にソウルで行われた韓国との親善試合。右サイドバックとして先発した駒野は、開始わずか15分で負傷退場。診断の結果は「右上腕骨骨幹部骨折で全治約3か月」の重症で、帰国後の14日に手術。リハビリは現在も続けられていて、残されたシーズンを棒に振ることを余儀なくされた。


 代表選手の待遇改善の中には、代表拘束中に負った故障に対する補償も含まれている。
 Jクラブから所属選手に対して支払われる年俸は「基本給」と「出場給及び勝利給」の合計になる。双方の割合や勝利給などの金額はチームによって異なるが、J1の主要クラブの勝利給は60万円から80万円で設定されているという。
 JPFAの日本代表委員会に名前を連ね、実際に故障の当事者となった駒野が欠場した試合は現時点で11戦。その中には7シーズンぶりとなるタイトル獲得を果たし、駒野自身が「チームにとってはプラスだけど、個人としては国立競技場の決勝のピッチに立てなかったことはやはり悔しい」と複雑な心境を明かした、11月3日のナビスコカップ決勝も含まれている。


 駒野不在の間のジュビロの成績は3勝4分け4敗。勝利給が60万円、引き分けで半額と仮定した場合、単純計算で実に300万円を失ったことになる。
 こうした事態に日本サッカー協会からの金銭補償があるかないかも聞いてみたが、駒野は「まだ分かりません」と再び困惑した表情を浮かべるだけだった。
 先週末の一部報道で突如として表面化した代表選手の待遇改善要求。この一件で積極的に発言しているのは日本サッカー協会認定選手エージェントでもあるJPFAの清岡哲朗執行役員と、選手では会長の藤田俊哉(ロアッソ熊本)、長く日本代表のキャプテンを務めてきた日本代表委員会委員の中澤佑二(横浜F・マリノス)らにとどまっているのが現状だ。


 JPFA側は、海外組を含めて所属する約950人の全選手からすでに意見を聴取したとしている。駒野が「すべてを話しているので」と言葉を濁したのもそのためであり、数多くの選手があれこれ発言することで結果として日本サッカー協会との対立の構図を煽り、騒動に拍車をかけるよりは、発信力の強い選手の言葉にメッセージを集約させたいとの考えもうかがえる。
 今日22日には都内でJPFA主催のシンポジウムが開催される。藤田会長が新プロジェクト発足を宣言することが当初の趣旨だが、報道陣や会場に招待される30人のファンに対して、今回の交渉に対するJPFAの考え方を説明する場にもなる。シンポジウムには現役最年長プレーヤーの三浦知良(横浜FC)が参加することも急きょ決定した。


 幸いにも、駒野の負傷はほぼ完治している。
「骨折した部分はだいぶ元通りになった。蹴って、走るというのはずっとできていたので、あとは接触プレー。右手で体を支えられるようになれれば」
 残念ながら、来年1月7日から中東のカタールで開催されるアジアカップの予備登録メンバー50人からは漏れてしまった。全治3か月と診断された直後には「ギリギリで間に合うかもしれない」と希望を紡いできただけに、南アフリカの地でともに戦った盟友が数多く出場するであろう大会には特別な思いがあることも明かしている。
「気になると思うので、多分、全試合テレビで見ると思います」


 日本代表に選ばれることは最高の名誉。駒野の健気なコメントからも「日の丸」に対する選手たちの純粋な思いが伝わってくるが、一方でJPFAと日本サッカー協会との交渉は抜き差しならぬ状況を迎えつつあるのも事実だ。
 日当が1万円で出場給はなく、勝利給に至っても10万円から20万円という金額は、確かに低いと言わざるを得ない。選手の名前が入った日本代表ユニホームに代表される肖像権料の問題にしても、代表人気が高まった1990年代から指摘されてきたことだ。
 JPFA、日本サッカー協会ともに弁護士を立てて交渉を開始しているが、JPFA側が究極の手段とも言える代表戦のボイコットを切り出した点には正直、違和感を覚える。


 対象となるのは商業ベースの代表戦だという。つまりは親善試合で、現時点では来年3月25日と29日の国際Aマッチデーに日本国内で行われる2試合が挙げられいる。
 先週末からの一連の報道を見る限り、水面下ではかなり以前から両者の間で折衝が行われていたことがうかがえる。しかし、メディアが大々的に報じ始めている「対立」の二文字を追い風にして、交渉のテーブルになかなか就こうとしない日本サッカー協会に対して業を煮やしたJPFA側がやや性急的に事を運ぼうとしすぎているのではないか。
 海外の代表チームでも、報酬を巡る銭闘は決して珍しいことではない。しかし、日本の場合、果たしてボイコットという最後のカードに言及する段階まで来ているのかどうか。


 親善試合のボイコットという最悪の事態を迎えた場合、最大の被害者となるのはサポーターやファンであることは言うまでもない。アメリカのMLBや日本プロ野球が行ったストライキを見ても、楽しみにしている側の夢を奪ったツケはファン離れとなって確実にはね返ってきている。
 日本サッカー協会の小倉純二会長が、ボイコットをちらつかせるJPFA側に不快感を示したという一報も伝わってきた。交渉事において相手側を怒らせても何のメリットもないが、JPFA側は来年以降の労働組合化を目指して一歩も引かない構えを見せている。
 平行線をたどる両者の交渉が行き着く先はどこかのか。執行部に一任こそしたものの、時間の経過ともに芽生えつつあるJPFA所属の選手たちの複雑な心境が、駒野が浮かべた困惑の表情と短いコメントに凝縮されている気がしてならない。

  
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2010年12月22日 02:39|記事URLコメント(0)トラックバック(0)

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