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韓国撃破!窮地で輝いた日本の強者のメンタリティー by 藤江直人

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■アジアカップ2011 準決勝
日本代表[B組1位] 2‐2(PK3‐0/前・後半1‐1) 韓国代表[C組2位]
[1月25日午後4時25分(現地時間)キックオフ@アル・ガラファスタジアム]
※日本代表が2大会ぶり4度目の決勝進出。次回アジアカップの出場権を獲得
デジャブを感じたというか。いつか見た悪夢が再びというか。
FW岡崎慎司の突進で獲得し、シリア戦に続いてキッカーを志願したMF本田圭佑が止められたPKを途中出場していたMF細貝萌が気迫で押し込み、2対1とリードを奪ってから約10分後。延長前半ロスタイムに日本代表のアルベルト・ザッケローニ監督が切った2枚目の交代のカードに、正直なところ、一抹の不安を抱かずにはいられなかった。
FW前田遼一アウト、DF伊野波雅彦イン。
1点をリードされた直後に、フィジカルの強さで勝る韓国は長身FWキム・シンウクを投入。パワープレーをより前面に押し出して、日本ゴールに迫ろうとしていた。
韓国の圧力に対抗するために、センターバックの伊野波を投入して守備を固める。
指揮官から発信されたメッセージは明確であり、サッカーの世界におけるセオリーのひとつでもあるが、日本は過去に忘れらることのできない高価な「授業料」を支払っている。
1997年9月28日。韓国を国立競技場に迎えた、W杯フランス大会出場をかけたアジア最終予選。後半22分にMF山口素弘の芸術的なループシュートで日本が先制すると、加茂周監督はFW呂比須ワグナーに代えてDF秋田豊を投入。1対0のまま逃げ切りを図るもかえって守備組織が乱れ、残り6分で2点を奪われる逆転負けを喫してしまった。
11月16日の「ジョホールバルの歓喜」に至るまでの紆余曲折を招いた因縁の一戦だ。
人数が多ければ守れる。そうした机上の論理が時に通用しないのがサッカーだ。
当時は秋田のポジションや仕事が曖昧だったために、キャプテンの井原正巳を中心にまとまっていた日本の守備陣が混乱。同点とされた3分後に呂比須のマーク役だったDFの選手にオーバーラップを許した挙げ句、強烈なミドルシュートを突き刺されてしまった。
相手が同じ宿敵・韓国。W杯アジア最終戦に次ぐガチンコ勝負となる公式戦のアジアカップ。日本が待望の勝ち越しゴールを奪ってからの守備固め。試合を取りまく要素があまりにも酷似していたからこそ、14年越しのデジャブを感じてしまったのかもしれない。
実際、状況はザッケローニ監督が描いた青写真とは真逆に進んでいく。
今野泰幸、岩政大樹、投入された伊野波だけでなく、本来ならばクロスを上げてくるサイドの選手をケアするはずの長友佑都、内田篤人の左右のサイドバックまでもが吸収された5バックが、韓国の怒とうの圧力の前にズルズルと最終ラインを下げてしまう。
こうなると1次攻撃となるロングボールは弾き返せても、セカンドボールを簡単に拾われてしまう。必然的に中盤の長谷部誠、遠藤保仁、細貝までもが自陣に下がり、結果として前がかりになっている韓国にさらに余計なスペースを与える悪循環を招いてしまう。
このままでは危険と判断したのか。ザッケローニ監督はFW李忠成をスタンバイさせ、相手のロングボールの出どころを抑えさせようとしたが、延長後半9分に計算外の事態が発生する。
韓国のエース、MFパク・チソンを懸命のマークで抑えてきた疲労が一気に噴き出したのか。両足に痙攣を起こした長谷部がプレー続行不可能となってしまう。
3分後に慌てて投入されたのは、李ではなくMF本田拓也だった。今大会中に清水エスパルスから鹿島アントラーズへの移籍が決まり、モチベーションも高まっているはずの25歳のハードワーカーだったが、悲しいかな、国際Aマッチ出場はこれが2試合目。些細なミスすら許されない、緊迫した試合終盤の流れの中に入っていけない。
本田拓が自陣でやらずもがなのファウルを犯し、フリーキックからの混戦でこぼれダマをDFファン・ジェウォンに押し込まれたのは延長後半15分だった。
ザッケローニ監督の母国イタリアには、守備の文化が深く根付いている。1対0で勝利することが「最も美しい」と長く位置づけられ、代表チームを含めたサッカーのスタイルが、ゴールに鍵をかけるという意味で「カテナチオ」なる異名を頂戴していた時期があることは広く知られている。
試合終盤になってDFの数を増やし、守備を固めても、最終ラインはある程度高い位置でキープするのはイタリア人にとって鉄則であり常識。自軍のゴールに近い位置で混戦を招く回数が増えるほどに、不慮のゴールを含めたアクシデントが起こる確率も増してくるからだ。
だからこそ、伊野波を投入してから余計に劣勢を強いられた展開が、57歳にして初めてイタリア以外で指揮を執るザッケローニ監督の目には奇異に映ったに違いない。
フィジカルで劣る日本は、残念ながらイタリアほどの屈強な「守備のメンタリティー」を文化を持ち合わせていない。A代表に定着して10年目となる遠藤は、かつてこう語っていたほどだ。
「イタリアみたいなサッカーをして勝っても、まず何か文句を言われると思うので(笑)。というか、あのサッカーを日本人にやれと言われても、まず無理でしょう」
日本代表監督に就任してまだ5か月弱。初めて臨む公式戦、しかも終始受け身に回らざるをえなかった状況で、ザッケローニ監督も交代の人選を見誤ったのだろうか。守備を固めるのではなく、たとえば運動量が激減していた遠藤に代えて柏木陽介らのフレッシュな中盤の選手を投入。カウンターという"ナイフ"をちらつかせておけば、展開はまた違ったものになっていたかもしれない。
もっとも、14年前の悪夢が完全に再現されなかったことは、その間にW杯の舞台に4度立ち、経験を積み重ねてきた日本代表チームの、あるいは選手個々成長の跡と言ってもいいだろう。
延長後半3分に長友、5分には岡崎がカウンターから相手ゴールに迫り、最後はシュートで終わった。長友は12分すぎにも左サイドを駆け上がってファウルを誘い、あるいは本田圭のヘルプを得てコーナーキックを獲得。コーナーポスト付近で粘り、巧みに時間を稼いだ。
長友と岡崎は、キックオフ直後から驚異的な運動量で再三にわたって韓国を脅かしてきた。尽きないスタミナと決して折れない心は、同じ1986年生まれの本田圭に触発され、世界を基準により高いレベルを目指して今現在も「個の力」を磨いている努力の賜物でもある。
韓国の同点劇からほどなくして始まったPK戦。最もプレッシャーのかかる先蹴りの1番手で登場し、ゴール右隅に豪快な一撃を突き刺したのは本田圭だった。
延長前半7分にはPKを失敗している。それでも何ら臆することなく、平然と大役を果たした頼もしい強者のメンタリティーに日本は勇気づけられ、韓国は逆に意気消沈させられた。
本田圭に続けとばかりに、GK川島永嗣も立て続けに2人を止めた。まだ記憶に新しいW杯南アフリカ大会。PK戦にもつれ込んだパラグアイとの決勝トーナメント1回戦で、1本も止められなかった借りがある。韓国の3人目がゴールの枠を外すほどの威圧感には、W杯後に戦いの場をベルギーに移し、あえて厳しい環境に身を投じて心技体を磨いてきた6か月間の軌跡が凝縮されていた。
PK戦ゆえに公式記録上では引き分け扱いとなる。それでも、W杯前の昨年2月、5月と2度もホームで屈辱的な完敗を喫した永遠の宿敵を下しての2大会ぶり4度目の決勝進出。この試合のマン・オブ・ザ・マッチを獲得した本田圭は、確固たる手応えを感じていた。
「最後の失点は、自分たちの力のなさから招いたと思っている。苦しいPK戦を制したことで、少しは成長した自分たちを見せられたんじゃないかと。ここまで来られたことは価値がある。内容的に厳しい試合ばかりでしたけど、接戦をものにしてきたので」
結果と成長、さらに世代交代をテーマに掲げて臨んだ今大会。経験が足りない若手・中堅が必然的にサブに名前を連ねているからそ、ここまでの軌跡は素直に評価してもいい。
国際試合の怖さを思い知らされた本田拓、試合後に「何も仕事ができなかった」と唇をかんだ伊野波は代えがたい経験を得ただろうし、下を向くことなく決勝を迎えることができる。
ザッケローニ監督にしても、守備における日本サッカーの「現在地」を知る上でまたとない機会となったはずだ。今年9月から早くも始まるW杯アジア予選へ向けて、イタリア流のエッセンスを注入するヒントを得たかもしれない。PK戦を制したからこそ、すべてが上手く回る。
29日の決勝戦の相手はオーストラリア。W杯ドイツ大会の1次リーグ初戦で、1対3と煮え湯を飲まされたのは5年前の夏。前回のアジアカップ準々決勝ではPK戦の末に下しているものの、W杯南アフリカ大会をかけたアジア最終予選でも1分け1敗に終わっている。
因縁を断ち切るという意味においては、これ以上の顔合わせはない。
昨年8月の就任会見で、ザッケローニ監督は自身の挑戦を「冒険」と位置づけている。
天皇杯の関係で選手の集合時期や状態に大きなばらつきが生じた国内合宿。1次リーグから4戦連続でタイプが異なる中東勢の包囲網にさらされ、2人の退場者を出した不可解な判定は韓国戦でも微妙なPKとなって現れた。こんなスリル満点の「冒険」は、めったに経験できない。本田圭が「ここまで来たら優勝しないと意味がない」と宣言したのもうなづける。
2大会ぶりのアジア王者奪還も「冒険」の一里塚となるが、その過程で「宝物」も手に入れた。オーストラリアで開催される、4年後の次回アジアカップの出場権獲得。W杯アジア予選を無事突破すればの条件付きだが、これで2013年から14年にかけた貴重な国際Aマッチデーをアジアの格下相手の予選ではなく、世界の強豪の胸を借りるチャレンジの場にあてられる。メリットは果てしなく大きい。
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2011年1月26日 16:52|記事URL|コメント(0)|トラックバック(0)
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