Home > 本日の論! > 投げ込み不要。沢村賞男・前田健太が頑なに貫くオレ流  by 藤江直人

投げ込み不要。沢村賞男・前田健太が頑なに貫くオレ流  by 藤江直人

投げ込み不要。沢村賞男・前田健太が頑なに貫くオレ流  by  藤江直人

☆☆☆論スポ最新号の購入はこちらをクリックしてください!☆☆☆


※3月19日発売の『論スポ 2011年プロ野球開幕特集号』では、広島東洋カープ・前田健太投手の独占インタビューを掲載します。


 誰に何を言われようと、絶対に信念は曲げない。プロ入り5年目、22歳の沢村賞右腕が頑なに貫く「オレ流」から、揺るぎない自信が伝わってくる。
 昨シーズンのセ・リーグで最多勝(15勝)、最優秀防御率(2.21)、最多奪三振(174)の投手三冠を史上最年少で独占した広島東洋カープの前田健太投手が、沖縄キャンプ第2クールの初日となった5日に、1月中旬から同所で行ってきた自主トレを通じて初めてブルペン入りした。
 同期入団の會澤翼捕手を立たせたままで、まずは肩慣らしを20球。さらにストレートを中心に力を込めて20球がカウントされたところで、予定通りとばかりに投球を打ち上げた。


 他の主力投手が100を軽く超えるタマ数をすでに投げ込んでいる中で、前田健の調整ペースの遅さはさすがに異彩を放つ。しかも、次回のプルペン入りの予定も「まだ分からない」という。
 もちろん、故障や調整遅れといった類の問題が発生しているわけではない。前田健は2007年の入団当初から「投げ込みに意味を見出せない」と公言してはばからなかった。
 球界を代表する投手の一人に成長した今シーズンも、キャンプ中に100球以上を投げ込むことは「100パーセントありえない」と断言。実際に初ブルペンを20球で切り上げると、「まあまあ普通ですね。今日の時点でいいも悪いも分からない」とさらりと言ってのけた。


 前田健のオフィシャルブログ「じゃけん まえけん 頑張るけん!!!」をのぞいていくと、昨年2月9日付けで興味深い文章を目にすることができる。
「プロに入って初めてピッチング練習で100球以上の投げ込みをしました。18番にかけて118球投げました。新しい事への挑戦として投げてみました(原文のまま)」
 舞台を宮崎・日南に移した第2次キャンプでも、一度だけ100球を超える投げ込みを行っている。あえて「投げ込み不要」の持論を曲げ、調整のペースを変えた背景には、野村謙次郎監督の就任に伴って新しい体制になったチームへの配慮があったという。


 ブラウン前監督からバトンを受け継いだ野村監督は、自身が鍛えられた現役時代を引き合いに出し、カープ伝統の猛練習でチームを再建していくと力を込めた。
 投手陣を預かる大野豊ヘッドコーチ兼投手コーチも然り。キャンプ中に徹底した投げ込みを指示している。生え抜きの首脳陣のもと、11年連続で甘んじていたBクラスからの脱却を目指すチームにあって、主力の一人である前田健が我を通せば不要な波風が立ちかねない。
「去年は去年。チームも新しくなったし、その意味で調整法も新しくしただけです」
 1年前を振り返った前田健だが、100球越えの中でも全力で投じたボールは実は半分程度だったという。表現は悪くなるが、投げ込んだ「ポーズ」を取っていたわけだ。


 こうなると、単なる頑固者では片付けられない。そこまで頑なに信念を貫く理由は何なのか。答えは、小学校時代から投手一筋で歩んできた、自らの野球人生に対する絶対の自信がある。
 投げ込まなくても肩のスタミナは十二分についていることは、セ・リーグでは4年ぶりに投球回数が215イニングを上回り、両リーグを通じて1位となった数字が証明している。ましてや、数か月のオフを経たくらいで、完成の域に達したと自負するピッチングフォームを忘れることなどあり得ない。
 前田健にとってのキャンプは「つくっていくというよりは状態を上げていく」舞台であり、ピークを合わせる時期から逆算した調整を施しているに他ならない。


 もちろん、前田健の照準は3月25日に定められている。言うまでもなく、144試合を戦うペナントレースの開幕戦だ。くしくも昨シーズンと同様に敵地ナゴヤドームで中日ドラゴンズと対峙することになるが、5年目を迎えた今シーズンは置かれている状況が大きく異なる。
 昨シーズンは開幕投手が確実視されていた大竹寛の故障による出遅れもあって、前田健に初めての大役が回ってきた。実際に8回を1失点に抑える力投で勝利投手になったとはいっても、前年の前田健の成績は8勝14敗。シーズンを通して先発ローテーションを守ったとはいえ、全幅の信頼を寄せられているとは言い難いものがあったのも事実だ。


 果たして、有無を言わさぬ好成績で周囲を納得させ、球団史上最速の1億円プレーヤーとなった今シーズン。我流の調整を晴れて貫けるからこそ、あえて「3・25」を強く意識している。
「そのへんで投げるつもりですし、それならば25日に合わせようと思っています」
 現時点では、エースという言葉に首を横に振る。先発ローテーションの1番手を守り通し、昨シーズンを上回る成績を残した時こそ、初めてそう呼ばれることができるからだ。
 引退した2007年オフに背番号18を託した元エースで、野球評論家の佐々岡真司氏も「昨年の成績がベース。チームの完全なる信頼を得てほしい」と後継者に辛口のエールを送る。


 12日の北海道日本ハムファイターズとの練習試合を皮切りに、キャンプは実戦を意識した段階に突入する。19日には宮崎で読売ジャイアンツとのオープン戦も組まれている。
 それでも、前田健はマイペースを崩さない。漂うのは余裕か、あるいは貫禄か。すでに十年以上もプロの飯を食ってきた、ベテラン選手のようなたたずまいすら感じさせる。
「オープン戦で100パーセントの状態にもっていくことはありません。そうしちゃうと、開幕まで100パーセントを維持することが難しくなるので。いろいろなことをちょっとずつ考えながら、ですね。オープン戦では点を取られることも大事だと思っています」


 第2クールは8日まで行われるが、前田健は「このクールでペースを上げるつもりはない。沖縄にいる間にキャッチャーを座らせて投げられればいい」と意に介さない。
 それでも首脳陣が何も注文しないのは信頼を勝ち取りつつある証であり、前田健自身、信頼に比例して重くなってくる責任をむしろ歓迎しているようにも思えてくる。
「今日は投げる感覚を取り戻すだけ。いわばスタート。フォームもまだスムーズじゃない」
 全メニューを終えると、ホテルまでの約5キロの道のりを走って帰った。「走りながらの取材でもいいですよ」と無邪気に笑う少年っぽさと、身にまといつつある威圧感にも似たオーラ。1メートル82、73キロの体が、なぜかもっと大きく見える。22歳の若武者は摩訶不思議な魅力を同居させている。


※3月19日発売の『論スポ 2011年プロ野球開幕特集号』では、広島東洋カープ・前田健太投手の独占インタビューを掲載します。


☆☆☆論スポ最新号の購入はこちらをクリックしてください!☆☆☆

2011年2月 6日 23:29|記事URLコメント(0)トラックバック(0)

トラックバック(0)

この記事のトラックバックURL: http://sv62.wadax.ne.jp/~sports-times-jp/mt/mt-tb.cgi/481

コメント(0)

コメントを書く