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2011年版巨人の目玉。2番・坂本勇人に見る違和感  by 藤江直人

2011年版巨人の目玉。2番・坂本勇人に見る違和感  by  藤江直人


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 文字通りの「絵に描いた餅」で終わる可能性の方が大きいだろう。
1番 センター 松本哲也
2番 ショート 坂本勇人
 中日ドラゴンズに奪われたセ・リーグの覇権奪回へ向けた読売ジャイアンツの目玉策として、18日の紅白戦からお披露目になった2011年の新オーダー。昨シーズンまでの公式戦で何度もコンビを組んできた1・2番を入れ替えるに至った狙いについて、原辰徳監督は「坂本が2番に入ることによって打線の可能性が広がる」と言及している。


 確かに松本が出塁し、坂本の意外性でチャンスを膨らませることができれば、小笠原道大、ラミレス、阿部慎之助と続く強力クリーンアップで一挙に大量点を狙うことが可能だ。
 ただ、あくまでも坂本が「2番という打順に順応できたら」という大前提があることを忘れてはならない。そして、現時点では残念ながら答えはNOと言わざるを得ない。
 20日に沖縄市の沖縄セルラースタジアム那覇で行われた、東北楽天ゴールデンイーグルスとのオープン戦。あいしくの雨にもかかわらず大勢のファンが詰めかけた中で、一回裏に早くも新コンビの可能性が試されるシーンが訪れた。


 松本が十八番の粘りを見せて、フルカウントから一塁に歩く。しかし、続く坂本はまるで自らに言い聞かせるように、打席に入る前から送りバントの構えを見せている。
 果たして、初球のバント失敗に続いて2球目のサインもバント。キャッチャーの前にコロコロと転がった打球で、辛うじて松本を二塁に進塁させることができた。
 小笠原のショートゴロで三塁に進んだ松本は、この日は4番に入った阿部が放った右中間フェンスを直撃するシングルヒットで楽々とホームを踏んでいる。
 電光石火の先制劇だが、果たして坂本を2番に入れた効果がどれほどあったのか。


 5年目を迎えた坂本の魅力は、何といっても意外性と「投手は誰でも初球はストライクを投げたがる。それを黙って見逃す手はない」と公言してはばからない積極性とにある。
 実際、1番を務めた坂本がファーストストライクから打ってでるケースは多かった。従来のイメージを覆すスタイルに、昭和40年代に達成した9連覇当時に打撃コーチを務めていた荒川博氏は「僕らの時代の1番は相手投手にフルカウントまで投げさせて、後続打者に球筋を見せられれば御の字だった。イチロータイプだね」と驚きを隠せないでいた。
 結果的には、坂本の積極性は昨シーズンの31本塁打となって花開いている。


 三回裏は坂本から始まる打順だった。昨シーズンまでの1番のように「何も考えないで打つ」絶好の機会だったが、初球のど真ん中のストレートを打ち損じてファウル。ボールを2つ見送った後の4球目のカーブを引っかけ、平凡なショートゴロに倒れている。
 二死一塁で迎えた五回裏には、初球のボールの際に一塁走者の脇谷亮太が二塁盗塁に成功。つなぎを求められる2番から「返す人」となったが、どこか迷いがあるのだろうか。
 カウント1‐3から変化球を2球続けて空振り。取材で訪れていたある野球評論家は「投手にしてみれば2番坂本の方がありがたい」と原さい配に首を傾けるしかなかった。


 1番が坂本ならば、対戦する投手もいきなり緊張を強いられる。失投は絶対に許されない。そうした思いがちょっとでも過剰になれば逆にボールは甘く入り、長打力の餌食になる。
 それが2番になると、状況によって様々な制約を受けることになる。走者を送る犠牲バントは基本中の基本。ベンチから「待て」のサインが出されることも日常茶飯事。右方向へ進塁打を打つ技術も必須となるが、坂本自身は典型的なプルヒッターを自任している。
 以前にインタビューした時は、ヒットの7割以上がセンターから左方向という偏りにも「右方向へ打球を飛ばすのは、もっと体ができてからでいい」と悪びれずに語ったこともある。
 

 シーズン67犠打のプロ野球記録をもち、理想の2番打者として2001年の日本一に貢献した東京ヤクルトスワローズの宮本慎也内野手は、右打ちの心得をこう明かしたことがある。
「手で小細工をしてバットを操作しようとすると、球威に押されてほとんどファールになってしまう。要はベストのスイングができるか否か。ポイントをキャッチャーよりにおいて、ボールの左半分を狙ってベストのスイングをすれば、自然と振り遅れるんです」
 こうした極意をつかみ、「送りバントのサインを出さずとも、宮本なら走者を進めてくれる」という信頼感を得たのは数年前。それほど2番という打順は奥深い、という。


 原監督は「2番・坂本」について、ニューヨーク・ヤンキースのデレク・ジーターをダブらせているという。あるいは、自ら日本代表の指揮を執って連覇を達成した2年前のWBCで2番に抜擢した、西武ライオンズの中島裕之内野手をイメージしているのか。
 もっとも、前者は通算3000本安打を目前にしている右打ちの達人であり、後者はライオンズでは不動の3番を務める長距離砲。前者はWBCにおいては「つなぐ」役割を半ば免除されていた。
 時代の変化とともに2番にも様々な役割が求められるようになったが、一部の打者を除けば、制約が多い点は変わらない。そして、坂本はまだ例外を与えられる存在ではない。


 坂本はいずれは3番を目指したいとも公言している。1番は将来を見すえた武者修行の場でもあり、原監督も「大きく育てる」という点で2年前の5月からほぼ固定してきた。
 ここにきての配置転換は計画の第2段階に突入したからなのか。それとも、昨シーズンにリーグ4連覇を逃したことで、育成うんぬんを語れないお家事情が働いているのか。
「バントを含めて、今は坂本の可能性を広げるためにもチームバッティングを覚えさせている」
 こう語る指揮官は、試運転段階の新打順について「いろいろなタイプがあってもいい。オープン戦限定かもしれないし、このままくこともある」と現時点で言葉を濁している。


 もっとも、初回の無死一塁で見え見えの送りバントをさせるのであれば、わざわざジーターや中島をモデルにした2番に坂本をすえる必要はない。前出の評論家はこうも語っている。
「例えは悪いけど、手足をもがれたような状態。シーズンに入る頃には戻っているよ」
 かえって坂本の持ち味を殺す悪循環を生みかねないし、実際、打席に入る前から思考回路が混乱し、窮屈そうにしているようにも映る。これも自由奔放にプレーさせてきた3年間のツケとも言えるのだろうか。人気漫画『ドカベン』の世界のならば、悪球打ちで意外性と長打力に富んだ1番・岩鬼、秘打を操る曲者の2番・殿馬と続いた方が投手を悩ませているのだが。


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2011年2月22日 09:13|記事URLコメント(0)トラックバック(0)

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