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野球界を牛耳る読売ジャイアンツとナベツネにモノ申す by 藤江直人
スケジュール通りの公式戦開幕を強行しようとして譲らなかったプロ野球のセ・リーグが、一転して当初の今月25日から29日に延期することを決めた。
東日本大震災の影響を考慮した労組プロ野球選手会の延期要望を一切無視する形で、セ・リーグの実行委員会と理事会で25日の開幕を決めたのが17日。一夜明けて、海江田万里経済産業大臣に苦言を呈され、監督官庁となる文部科学省からは「東京電力と東北電力の管内での試合開催を避ける」旨の異例の通達が出されると態度を一変させる。
19日午後に都内で臨時理事会を開催して延期を決めたわけが、わずか4日間という変更だけを見ても、ナイター開催自粛要請に渋々従ったという謗りを免れることはできない。
臨時理事会では4月3日までの2節計18試合をすべてデーゲームで行うとした上で(1)レギュラーシーズンでは延長戦を実施しない(2)東京・東北電力管内では夏場も可能な限りデーゲームでの開催を検討する(3)セ・パ合同の震災対策会議の設置などを決めた。
セ・リーグの理事長を務める東京ヤクルトスワローズの新純正球団常務は「ヤクルトとしては(パ・リーグが開幕する)4月12日まで延期した方がいいという考えだった」と明かしているが、6球団の総意として最後までパ・リーグと共同歩調を取る考えには至らなかった。それを如実に物語っているのが、読売ジャイアンツの清武英利球団代表のコメントとなる。
「この選択肢以外に、最良の選択肢はない」
果たして、本当に他に選択肢は残っていないのだろうか。
一方的にナイター開催を解禁とする4月5日からは、東京ドームでジャイアンツ対阪神タイガースの3連戦が行われる。今シーズン初顔合わせのいわゆる「伝統の一戦」は最大のドル箱でもあり、球団経営を考えれば、シーズンの最後に回したくない思惑が図らずも透けて見える。
ジャイアンツは3月25日のプロ野球開幕の是非を巡って常にイニシアチブを握ってきた。東日本大震災の発生直後から一貫して「野球をやることで自分たちの責務を果たす」と大義名分を謳い、「セ・リーグには開幕を延期する理由がない」などとKY発言を繰り返した中日ドラゴンズの西脇紀人球団代表らを巻き込む形で、強行開催の流れをつくってきた。
当然のことながら、舞台裏には「あのヒト」の影がちらつく。
都内の高級ホテルで16日夜に華々しく開催された、ジャイアンツ開幕前恒例の「燦燦会」の席で、渡辺恒雄会長は第二次世界大戦直後と今現在とを強引にリンクさせている。
「開幕戦を延期しろとか、プロ野球をしばらくやめろ、とか俗説もありましたが、戦争に負けた後、わずか3か月で選手、監督の方から『試合をやりたい』という声が上がってプロ野球が始まったという歴史がある。(復興のために)あらゆる努力をする。その努力の源泉は明るい活力。明るい活力を持って国民大衆に示すことができるのはプロの選手たち。選手が全力でフェアプレーで緊張した試合をし、観衆が元気を持ってくれれば生産性が上がるんです」
中盤の「活力」うんぬんの部分に関しては私も賛同できるし、この「論」でも条件つきで日本代表戦の開催を訴えた。しかし、被災地の状況を鑑みれば今はプロ野球を連日のようにテレビ観戦するどころではないし、何よりも首都圏で試合を開催することに強烈な違和感を覚える。
特に逼迫した電力事情を考えれば、デーゲームでもナイター照明をつけざるを得ない東京ドームを使用することは言語道断だ。公式戦を開催した場合、消費する電力は周辺の売店なども含めて最低でも5万キロワット。一般家庭に換算すれば、1試合で約4000世帯の一日の消費電力となる。
戦後初の計画停電が実施されている中で、東京ドームをはじめとするプロ野球の試合会場だけ特例となることは、国民感情を逆なでする以外の何物でもない。強行することで電力の需要と供給のバランスが崩れ、突発的な大停電の引きがねになることも十二分に考えられる。
筆者も夜間に今回の計画停電を体験したが、たとえ直前とはいえ、あらかじめ告知されてるからこそ対処できる。それでも、信号が点滅しないすべての交差点に、警察官が配置されているとも限らない。真っ暗闇の街中を歩くときは、恐怖心を抑えるのに必死だった。
これが突然の大停電だとしたらどうなるか。復旧のめどを含めたすべてが分からない中で、未曾有のパニックを引き起こすことは必至だ。海江田経産相の苦言や文科省からの要請は至極当然であり、むしろなぜ自発的に延期を考えられなかったのかと問いたい。
ジャイアンツと東京ドームは19日に電力使用料を約4割カットする省電策を発表したが、世間の批判をそらすために、あれこれと急きょ取り繕った感は到底否めない。
一連の騒動の間、日本プロ野球機構の加藤良三コミッショナーが最高責任者たる指導力を発揮した形跡はない。存在感は限りなくゼロに近い飾り物。依然としてコミッショナー職がジャイアンツ及び黒幕を自任する渡辺会長の傀儡である、旧態依然としたプロ野球界の体質が浮き彫りになった。
3月いっぱいのJリーグ及びナビスコカップ、日本代表戦においても25日のモンテネグロ代表戦(エコパスタジアム)、29日のニュージーランド代表戦(国立競技場)を中止。29日は場所を大阪・長居スタジアムに移し、ニュージーランドに来日を辞退されるや、Jリーグ選抜とのチャリティーマッチを組んだサッカー界の統制が取れた迅速な動きとはあまりにも対照的だ。拘束力がない慈善試合ながら、海外で活躍する選手たちも率先して駆けつける。
傲慢さすら感じさせるジャイアンツ及び同会長の動きを見ていると、プロ野球界は「まずジャイアンツありき」というはるか昔に朽ち果てた論理に酔いしれているとしか思えない。
依然として「試合を見せてやる」という高飛車な上から目線を感じずにはいられないし、その点こそが「試合を見にきてもらう」を合言葉にそれぞれの球団が地域密着に路線を変更し、観客動員数を飛躍的に伸ばしているパ・リーグとの最大の違いでもある。
地上波テレビの放映権料を収入の最大の柱とするビジネスモデルが崩壊して久しい中、世論に一切耳を貸そうとしない唯我独尊的な態度を取り続ければファンの理解を得られなくなり、読売ジャイアンツという球団の根幹すらを揺るがしかねない。もっとも、そうなっても自業自得だが。
わずか4日間の延期は論外。電力事情や今なお地震が続く関東地方の状況を考えれば、スタジアムを訪れるファンの安全も十分に確保できるとは言い難い。パ・リーグと手を取り合い、4月12日に同時開幕することが野球界の一致団結した姿勢を伝えることにつながる。
それでもナイターを含めて強行したいというのであれば、もはやフランチャイズにこだわっている場合ではない。サッカーのように会場を関西以西に一時的に移せばいい。
選手は球団から野球をしろと言われれば従わざるを得ない。しかし、彼らも人間だ。被災地の状況に心を痛め、今は野球をやるべきなのか、と自問自答しながらの状態で強制されても、日本に復興への勇気と活力を与えるプレーをグラウンドの上で見せることは難しいのではないか。
球団側がレベルの高い勝負を望むのであれば、広島東洋カープの前田健太をはじめ、開幕投手に内定している選手たちの調整も見逃せない問題になってくる。
パ・リーグのように4月12日への延期を即決するならまだしも、通常通りの3月25日の開幕から一転、4日遅れの29日となり、納得しない労組プロ野球選手会がさらなる延期を要望しようかという状況では、その都度、調整のスケジュールを組み直さないといけない。
ジャイアンツ主導の強行突破が無用の負担を生じさせている。渡辺会長はこうした悪循環をどう受け止めているのだろうか。7年前のストライキ時のように「たかが選手」としかとらえていないのだとしたら、老醜をさらすだけの84歳には表舞台から退場していただくしかない。
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2011年3月20日 05:01|記事URL|コメント(0)|トラックバック(0)
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