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災い転じて福となすチャンスを逃したコパ・アメリカ辞退  by 藤江直人

災い転じて福となすチャンスを逃したコパ・アメリカ辞退  by  藤江直人

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 紆余曲折の末に日本代表が正式に出場辞退を決めたサッカーのコパ・アメリカに、北中米カリブ海のコスタリカが代替出場することになった。コスタリカはフル代表ではなく、来夏のロンドン五輪出場を目指すU‐22代表に5人のオーバーエイジを加えた編成で臨むという。
 43回目を迎える今回のコパ・アメリカには、日本とともに北中米カリブ海の強豪メキシコが招待されていた。他の大陸から2か国を招待する形式は1993年のエクアドル大会から採用され、南米と大陸続きという地理的なメリットもあり、メキシコはアルゼンチンで開催される今大会で8大会連続の出場となる常連国。初出場だった1993年大会と2001年のコロンビア大会で準優勝と躍進し、3位にも3度食い込むなど、実力も実績も申し分ない。


 そのメキシコも、今大会に限ってはU‐22代表に5人のオーバーエイジを加えたチームをアルゼンチンへ派遣することを早くから表明している。来夏のロンドン五輪を見すえての強化策であることは言うまでもないし、チリ、ペルー、W杯南アフリカ大会4位のウルグアイと対戦するグループCで敗退したとしても、若い選手たちにとっては貴重な経験となるはずだ。
 翻って、日本サッカー協会は小倉純二会長が唱える「大会にふさわしいチーム編成」に最後までこだわった。参加を断念したのもドルトムントのMF香川真司やシャルケのDF内田篤人らのブンデスリーガ勢を筆頭に、招集を希望する選手の大半を呼び寄せることができなかったからだが、ならばメキシコやコスタリカの方法に倣うことはできなかったのだろうか。


 以前にもこの『論』の中で「日本もU‐22代表プラス5人のオーバーエイジを派遣するべきだ」と指摘した。この世代でJクラブでレギュラーを獲得している選手はまだ数えるほどで、招集に関してもさほど問題はない。1916年に第1回大会が始まった世界最古の大陸選手権のピッチで戦うこと自体が、圧倒的に経験が足りないロンドン五輪世代の財産にもなるからだ。
 関塚隆監督に率いられるU‐22日本代表は、2大会連続でU‐20W杯出場を逃した世代が融合して編成されている。特にガンバ大阪のMF宇佐美貴史らを中心とする平成3年および4年生まれの選手たちは高いテクニックを持つ「プラチナ世代」として脚光を浴びてきたが、昨秋のU‐19アジア選手権準々決勝で韓国の執念の前に逆転負け。体と心の脆さが課題として浮き彫りになった。


 日本サッカー界の将来を考えれば、U‐22世代の強化は不可欠となる。コパ・アメリカ前の6月19日と23日にはクウェートとのロンドン五輪アジア2次予選が控えているが、ロンドン五輪うんぬんを飛び越えて、中・長期的な視野に立って貴重な経験を積むことができる打ってつけの舞台を、日本サッカー協会が体面にこだわったばかりにみすみす逃してしまった。
 日本代表のアルベルト・ザッケローニ監督は、コパ・アメリカへの海外クラブ所属選手招集に消極的だったという。招待参加ゆえに日本協会に選手を拘束する権利はなく、加えて大会が開催される7月にはヨーロッパの各チームはシーズン開幕前のキャンプと重複。大半の日本人選手が、昨夏のW杯南アフリカ大会の以前から満足なオフを取ることなく新天地での戦いに挑んでいる。


 こうした状況を踏まえて、コパ・アメリカにはJリーガーを中心とするチーム編成で臨む予定だった。しかし、東日本大震災の発生後に中止となっていたJ1およびJ2のリーグ戦が、当初は中断期間だった7月に組み込まれることが決まると事態は急変する。
 Jクラブが主力選手の招集に難色を示したために一度はコパ・アメリカへの参加辞退を決め、南米サッカー連盟や開催国であるアルゼンチン・サッカー協会から再考を促されると、一転して「海外クラブ所属選手を12人招集する」を条件に決定を覆した。南米連盟やアルゼンチン協会が国際サッカー連盟(FIFA)やヨーロッパの各クラブに働きかけてくれる、という期待感を選手招集への「後ろ盾」としてしまった点に、そもそも無理があったのではないか。

 
 案の定、特例を作りたくないという理由でFIFAは今回の一件に対して最後まで動こうとしなかったし、南米連盟やアルゼンチン協会が取った措置や対応も決して効果的とは言えなかった。
 最終的には日本協会の原博実強化担当技術委員長が慌てて各クラブを行脚した。しかし、拘束力がない以上は、首を縦に振ってくれるはずがない。MF本田圭佑のCSKAモスクワ、FW森本貴幸のカターニアを除き、ほとんどのクラブからNOを伝えられたという。
 一度は伝えた辞退の翻意を求められた際、小倉会長は「今回のコパ・アメリカを日本復興支援の大会にしたい」と説得されたという。ならば、海外組へのこだわりを捨て、現状で日本協会として招集できる選手たちで臨んでも決して異論は出なかったはずだ。


 条件付きの参加を満場一致で決めた先月14日の日本サッカー協会理事会後、田嶋幸三副会長兼専務理事は「日本代表の強化のみならず、日本という国が頑張っている姿をサッカーを通して国際社会に伝える大会にしたい」とコパ・アメリカ出場への大義を説いていた。
 交渉難航が明白だった海外組中心の編成でなければ、頑張っている姿を伝えられなかったのだろうか。残念ながらU‐22代表の派遣を含めた他の選択肢が検討された形跡もない。ヨーロッパの各クラブとの交渉では、当初は南米連盟をはじめとする第三者頼みだった感すらある。
 9月に幕を開けるW杯ブラジル大会予選へ向けたA代表の強化以上に、災いを転じて福となすことができるチャンスをむざむざ逃してしまったことの方が残念でならない。 


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2011年5月19日 00:06|記事URLコメント(0)トラックバック(0)

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