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エース永井謙佑と心中。ロンドン五輪予選突破へ漂う不安  by 藤江直人

エース永井謙佑と心中。ロンドン五輪予選突破へ漂う不安  by  藤江直人

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■サッカー国際親善試合
U‐22日本代表 3‐1(前半1‐1) U‐22オーストラリア代表
[6月1日午後4時20分キックオフ@東北電力ビッグスワン/観衆2万3139人]


 とてもじゃないが、手放しで喜ぶことはできない。U‐22日本代表を率いる関塚隆監督の胸中を慮れば、間違いなく「不安」の二文字が占める割合の方が大きいはずだ。
 エース永井謙佑の大活躍による痛快な逆転劇。得点経過だけを見ればこう表現できるが、ボールの支配率は日本の34.8パーセントに対してオーストラリアが65.2パーセント。日本が6本だった前半のシュート数は、開始3分にカウンターから電光石火の先制弾を決めたオーストタリアに4本も上回られた。これでは、どちらがホームの試合なのか分からない。
 守備はあまりに脆く、攻撃は拍子抜けするほど淡白でアイデアに欠けた。19日には来夏のロンドン五輪出場をかけたクウェートとのアジア2次予選が迫っているのに、だ。


 一転して後半のシュート数は、9本を放った日本がオーストラリアの5本を圧倒した。
 もっとも、これには2つの理由がある。ロスタイムに飛び出した永井の技ありのゴールで追いつき、迎えたハーフタイム。関塚監督は部分的にゾーンディフェンスを解き、マンマークを組み合わせる具体的な対処法を授けている。これが見事と言っていいほどはまった。
「日本の前の中盤とサイドバックの連携が悪く、すべてそこで崩されていた。後半はとにかく縦に入ってくるボールをサイドバックがしっかりとマークすること。特に相手の8番に対しての比嘉のマーク。そして、10番に対する(山口)蛍と相手のサイドバックの20番に対する原口。ここで徹底して前を向かせない。それによって相手はボールを下げざるを得なかった」
 

 U‐22オーストラリア代表のサイドバックとサイドのMF、頻繁にトップ下から左右にポジションを移す10番のミッチェル・ニコルスの3人でエリアに形成されたトライアングル。前半の日本を翻弄したコンビネーションを分断したことが攻撃に勢いをもたらし、結果として後半の2ゴールにつながった。
 しかし、もうひとつの理由を見逃すわけにもいかない。現役時代はFWとして、Jリーグのサンフレッチェ広島でもプレーしたアウレリオ・ヴィドマー監督がチームの内情を明かす。
「我々にとっては数か月ぶりに90分間プレーしたゲームだった。(オーストラリアの)Aリーグは10月に開幕し、3月には終了する。恒常的にトレーニングをするのが難しいという問題を抱えている。選手たちは数週間前にクラブに戻り、少しずつフィット感が出てきたところだ」


 ほとんどがAリーグのクラブに所属するオーストラリアの選手たちは、日本への長旅による疲労に加えて、約3か月に及ぶオフが明けたばかりでコンディションが不十分だったという二重のハンデを抱えていた。後半に入って、見るからに運動量が激減したのもうなづける。
 それでいて、降りしきる雨で滑る劣悪なピッチ条件の中で明確な意図を持ってパスをつなぎ、徹底的に両サイドを崩し、ポゼッションでホームの日本を圧倒した。19日に行われるイエメンとのロンドン五輪アジア2次予選へ向けて、特に前半の戦いぶりは大きな自信になったはずだ。
 翻って、日本には収穫があったのだろうか。残念ながら、答えはノーとなる。指揮官からの微に入り細の指示がなければ、後半に入ってからの修正もままならなかったはずだ。
  

 昨夏のチーム立ち上げからエースを担ってきた永井の存在感は、確かに際立っていた。
 同点ゴールはパスカットから中央を突破してきたMF山村和也とのあうんの呼吸で、左サイドバックのさらに外側から気配を消すようにバイタルエリアに侵入。スルーパスを受けてもスピードは落ちず、さらに相手GKの体勢を冷静に見極めながらゴールに流し込んだ。
 圧巻は後半19分の勝ち越しゴールだ。日本の前線へのフィードは永井に渡らず、DFライアン・マクゴーワンはゴールキーパーへのバックパスを選択する。次の瞬間、永井が猛然とダッシュ。瞬く間にボールとの間合いを詰め、後半から出場していたGKディーン・ブザニスの鼻先でボールにコンタクト。緩やかな弧を描いたループシュートが無人のゴールへ転がっていった。


 バックパスが緩かったこともあるが、万が一の可能性を信じて疑わなかった永井の労を厭わない献身ぶり以上に、一気にトップスピードに到達する加速力はU‐22代表のレベルをはるかに超越していた。永井を「最も危険な選手」と警戒していたヴィドマー監督も、ただ唸るしかなかった。
「クオリティーの高さ、特にスピードにおいてはインターナショナルレベルにあることは疑いの余地がない。素晴らしい選手だ。近代サッカーにおいては、スピードという属性は最も重要視されている。A代表を率いるザッケローニ監督も彼には注目しているのではないか」
 39分に途中出場のFW大迫勇也(鹿島アントラーズ)が決めた3点目も、右サイドの永井からのクロスを押し込んだものだった。2ゴール1アシスト。文字通りの独壇場だった。


 しかし、永井が「個の力」で切り拓いたシーン以外では、オーストラリアにほとんど脅威を与えられなかったのも事実だ。つまり、永井を封じれば日本の攻撃は一気に手詰まりになる。
 所属する名古屋グランパスでは精彩を欠いていた永井だが、これは対戦相手がある程度自陣に引いて守備のブロックを形成し、アタッキングサードにおけるスペースを消し去ってしまうことで、結果的に永井の存在自体を無にしていたからに他ならない。
 あるいは、永井へのパスの出しどころに蓋をしてしまうか。いずれにしても、2次予選で対戦するクウェートも日本のウイークポイントに関する情報は把握しているはずだ。中東勢はカウンターをお家芸にするだけに、自陣にブロックを形成する戦法は攻守両面で効果を発揮する。決して侮れない相手だ。


 昨秋のアジア大会で金メダルを獲得したメンバーをベースに、関塚監督はひとつ下の世代を融合させながら、来夏のロンドン五輪出場を狙う体制を整えてきた。今年に入っても2月に中東、3月にはウズベキスタンに遠征し、4月と5月には国内で短期キャンプも行ってきた。
 徐々に完成形に近づいてきたはずのチームは、しかし、攻撃はよくも悪くも永井頼み。守備は故障で離脱した鈴木大輔(アルビレックス新潟)を除けば、柱となるべきセンターバック陣が所属するJクラブでほとんど試合に出場していないという不安要素ばかりが露呈している。 
 2次予選はホーム&アウェー方式で行われるクウェートとの一発勝負。トータルで勝てば9月から始まる最終予選へ進み、負ければ4大会連続で出場してきた五輪への道が閉ざされる。


 ロンドン五輪のサッカーの出場資格は、1989年1月1日以降に生まれた選手となる。しかし、1992年生まれのFW宇佐美貴史(ガンバ大阪)はJリーグでの不調もあって関塚監督の構想から外れ、フェイエノールトで輝きを放つ18歳のFW宮市亮に関しても「手元に置いて見てみたいが、他のメンバーとの兼ね合いやタイミングを考えて」と曖昧模糊な理由で招集が見送られている。
 もう1人。スペイン3部リーグに相当するCEサバデル所属の1メートル95の長身FW指宿洋史も20歳になったばかりのロンドン五輪世代であり、シーズン中ながらチームの2部昇格がすでに決定しているため招集できる状況にある。日本サッカー協会の原博実強化担当技術委員長も「あとは現場の判断次第」と話しているが、2日の段階でGOサインは出ていない。21歳のMF香川真司(ドルトムント)は、当面はW杯ブラジル大会予選を戦うA代表だけに専念させる方針だ。


 チームはオーストラリア戦から一夜明けた2日に一時解散。各チームに戻って週末のナビスコカップやJ2の試合を戦い、6日に再集合してクウェート戦前の最後の実戦の場となる8日の湘南ベルマーレとの練習試合に臨む。Jクラブでの経験値が圧倒的に不足しているため、「ひとつでも多く所属チームで公式戦を戦ってほしい」という願いが込められた異例の措置だ。
 関塚監督は「我々がきちんと準備をして臨めば、結果はついてくると思っている」と力を込める。しかし、言葉は悪いが、いわば永井と「心中」する覚悟で戦うに等しいクウェート戦。日本のホームとなる19日の第1戦の会場をあえて豊田スタジアムとしたのは、永井が何度もプレーして慣れているグランパスの準ホームスタジアムだから、と結論づけるのはこちらの勘ぐりすぎだろうか。


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2011年6月 3日 01:02|記事URLコメント(0)トラックバック(0)

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