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ザックの代名詞「3‐4‐3」システムが日本にもたらすもの by 藤江直人

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■キリンカップサッカー2011
日本代表[FIFAランク14位] 0‐0(前半0‐0) ペルー代表[FIFAランク54位]
[6月1日午後7時23分キックオフ@東北電力ビッグスワンスタジアム/観衆3万9048人]
日本代表を率いるアルベルト・ザッケローニ監督が、イタリア・セリエAで指揮を執っていた1990年代から自身の代名詞としてきた「3‐4‐3」システムを初めて試したのは昨年12月末。大阪・堺市内で行われていた、アジアカップへ向けた直前強化合宿中だった。
このときはわずか1日の練習だけで従来の「4‐2‐3‐1」システムに戻されたが、指揮官が独自の色を出すタイミングをうかがっていると思わせるのに十分なチャレンジだった。
もっとも、スケジュールが重複する天皇杯で所属するFC東京がベスト4にまで勝ち進んでいたことで、年末の強化合宿には参加していなかったディフェンスリーダーの今野泰幸は、新たなオプションに対して当初はどちらかと言うとややネガティブなイメージを抱いていた。
今年2月中旬。アジアカップ優勝を振り返るインタビューをFC東京のキャンプ地・鹿児島で行った際、今野は「3‐4‐3」システムについてこう言及している。
「合宿でやった、というのは聞いています。僕たちの考え方次第ですけど、やっぱりシンプルにはできないですよね。日本人って考えちゃうから。3‐4‐3だからこうしようって」
新システムは3月29日に行われたJリーグ選抜とのチャリティーマッチで初めて実戦で導入され、ザッケローニ監督や何人かの代表選手はそろって好感触を口にしていた。
もっとも、相手が即席のチームでコンビネーションもままならず、東日本大震災後のリーグ戦中断の影響でコンディションが不十分だった点を差し引く必要があったことは言うまでもない。
つまり、1日のペルー戦こそが「3‐4‐3」システムを初めて本格的にトライする場だった。結論から先に言えば、慣れ親しんだ「4‐2‐3‐1」システムに戻されるまでの前半の45分間を通じて、図らずも今野が抱えていた不安が攻守両面で露呈してしまったことになる。
本田圭佑(CSKAモスクワ)や長友佑都(インテル)ら、海外クラブ所属選手のコンディションのばらつきもあって、日本の先発メンバーには代表歴の浅い選手たちが名前を連ねた。
右MFの西大伍(鹿島アントラーズ)が代表初キャップならば、右ウイングの関口訓充(ベガルタ仙台)は出場2試合目にして初先発。今年1月に移籍したオランダのフィテッセで充実したシーズンを送った左MFの安田理大は、実に2年4か月ぶりとなるA代表戦だった。
当然のように、結果を残したい、指揮官にアピールしたい、A代表に残りたいという意識が過剰にはたらく。そこへ、日本人にはまったくと言っていいほど馴染みのない「3‐4‐3」システムのもとで送り出されたのだ。キックオフから思考回路が大混乱をきたしていたとしも、何ら不思議ではない。
ホームで負けたくない、失点は避けたいという思いも常に脳裏をかすめていたのか。相手の圧力に屈するように、西と安田が最終ラインに吸収される場面が目立った。試合後の記者会見。ザッケローニ監督は実質的な5バックになっていた時間帯が多かった点を素直に認めている。
「決していい傾向ではない。練習も重ねていないので想定内ではあったが、基本的にはノーだ。後ろが5人になれば、必然的に中盤が2人となり、そこで相手に負けてしまう」
フィリップ・トルシエ元監督の代名詞「フラット3」も、両サイドのMFが最終ラインに吸収されるシーンは珍しくなかった。3バックが時に5バックと化すのは、日本の守備の文化の悪しき一面でもある。
PK戦の末に韓国を下したアジアカップ準決勝でも、延長戦に入って1点をリードした日本はFW前田遼一(ジュビロ磐田)に代えてDF伊野波雅彦(鹿島アントラーズ)を投入。3バックにして韓国の猛攻をはね返そうとしたが、実際にはザッケローニ監督の思惑とは真逆の5バックになり、韓国に余計なスペースを与え、延長後半終了間際に同点とされてしまった。
それでも指揮官はは思い入れのある「3‐4‐3」と、さらに「4‐3‐3」の3つのシステムを試合中でも自在に使い分けられるチームに日本を導きたいとしている。
現時点ではまず「3‐4‐3」システムに着手している段階だが、ならば完成すれば日本代表にどのようなプラス効果をもたらすのか。指揮官からポジショニングや考え方などを事細かに指示されてきたという今野は、3月のチャリティーマッチ後にはある程度の手応えを感じていた。
「より前からプレッシャーをかけられるし、その結果としてサイドで数的優位を作ることができる。やるべきことをしっかりすれば、すごく攻撃的なオプションになると思う」
中盤の「4」の両サイドと、前線の「3」の両ウイングが連動して相手のサイドバックにプレッシャーをかけ、高い位置でボールを奪うことができれば、より相手ゴールに近い位置から仕掛けられる。理論は分かるが、ペルー戦はシステムの順序が逆だったのではないだろうか。
代表キャップ6の栗原勇蔵(横浜F・マリノス)、5の伊野波の両DFを含めて、代表歴の浅い選手たちがペルー戦の先発に名前を連ねた。それだけに、まずは現在のチームのベースとなっている「4‐2‐3‐1」システムでピッチに送り出す手もあったはずだ。
ザッケローニ監督は世代交代によるA代表の新陳代謝も公言してはばからない。ならば前半は彼らに国際Aマッチの経験を積ませて、ペルー戦前日の5月31日に帰国・合流したばかりの本田や長友を強行出場させた後半から「3‐4‐3」システムに切り替える。本田や長友はチャリティーマッチですでに新システムを経験している。このやり方ならばピッチ上における混乱も最小限に抑えられ、チーム全体の底上げと「3‐4‐3」システムへの習熟という二兎も追うことができた。
7日に日産スタジアムで行われるチェコ戦では満を持して本田や長友らを先発で起用するはずだし、現状におけるベストメンバーで「3‐4‐3」システムを試すことができる。
長友自身、チャリティーマッチで初めて経験した「3‐4‐3」システムを「僕らサイドの人間が責任を持って崩さないと何も始まらないし、その意味ですごくやりやすかった」と笑顔で歓迎していた。
もちろん選手たちもアジアカップ優勝がピークだとは思っていないし、9月から始まるW杯アジア予選、その先の2014年のW杯ブラジル大会へ向けて新たな「武器」を欲している。
ヨーロッパの地で経験値とモチベーションを高めて代表に合流した彼らは、未知のシステムに違和感を覚えたとしても貪欲に前へ進むことで克服し、成長への糧に変えてしまうはずだ。
ペルー戦後の会見の最後に、ザッケローニ監督はこんな言葉を残している。
「日本のサッカー界は、素晴らしいサイドアタッカーを輩出している」
名門インテルで定位置をゲットした長友だけではない。キリンカップで初招集したFW宇佐美貴史(ガンバ大阪)や、フェイエノールトで輝きを放つ18歳のFW宮市亮もサイドからの突破に絶対に自信を持つ。こうした状況が、指揮官のセリエAでの成功体験を刺激していることは容易に察しがつく。
もっとも、いくらサイドを完全に制圧しても、相手のゴールネットを揺らさないことには何ら意味をなさない。ペルー戦ではシュート0本に終わった前線の「3」の真ん中、10月にはザック流世代交代の目安となる30歳になる前田にとっても、チェコ戦は起用される理由が問われる舞台となるはずだ。
ザッケローニ監督は昨夏のW杯南アフリカ大会でベスト16に進出した日本を尊重し、W杯直前まで岡田武史前監督が基本フォーメーションとしていた「4‐2‐3‐1」システムを熟成させてきた。そして、就任から半年以上が経過し、難解とされる「3‐4‐3」システムへの適性があると判断したのだろう。
「このチームの引き出しを増やすことが、私の仕事だと思っている」
こう語る指揮官は、美しく勝つサッカーでヨーロッパを制したFCバルセロナをひとつの例として挙げながら、長期的スパンで「3‐4‐3」システムを完成させたいと力を込めた。
「バルセロナはあのシステムだから勝っているのではなく、選手がシステムを最大限に理解して活用することで違いを見せている。バルセロナも最初からうまくいっていたわけではない」
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2011年6月 3日 23:45|記事URL|コメント(0)|トラックバック(0)
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