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言い訳無用。黒星が際立たせたロンドン世代の現在地 by 藤江直人

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■サッカー・ロンドン五輪アジア2次予選第2戦
U‐22クウェート代表 2‐1(前半0‐1) U‐22日本代表
[6月24日午前1時45分(日本時間)キックオフ@モハメド・アルハマドスタジアム]
※2戦合計スコア4‐3で日本がアジア最終予選に進出
スタジアムから宿泊先のホテルへと戻るバスの中でつぶやいたのだろう。日本時間の朝方5時をすぎた頃に、U‐22日本代表のGK権田修一(FC東京)のツイッターが更新されている。
試合終了を告げるホイッスルを複雑な思いで聞いてからおよそ1時間後。「遅い時間まで応援ありがとうございました!」で始まる文面には、偽らざる心境が綴られている。
「最終予選には進めますが、チームとしても僕個人も世界と戦うためにはまだまだだと感じました。また東京に戻って1から頑張りたいと思いますので応援よろしくお願いします!」
アジア最終予選進出は決めた。しかし、第2戦に限れば完敗だった。肝を冷やし続けた敵地での90分間が、守護神をして「世界と戦うためにはまだまだ」と言わしめたことは容易に察しがつく。
豊田スタジアムで19日に行われた第1戦で、日本は3対1で勝利を収めた。ホーム&アウェー方式の一発勝負で行われる今回のアジア2次予選。勝利および引き分けはもちろん、1点差の負けでも日本のアジア最終予選進出が決まる状況で敵地に乗り込んでいた。
一方のクウェートは2対0で勝てば、第1戦で一矢を報いたアウェーゴールがものをいって逆転できる。19日の一戦とはまるで異なるチームのように、序盤から攻勢にでてくる。
前半17分には、第1戦でゴールを決めたMFジャベル・ジャゼアのスルーパスに、A代表にも名前を連ねるFWユセフ・ナセルが反応してペナルティーエリア内に侵入。果敢に飛び出してセーブした権田の右肩とナセルの右足が激しく接触し、権田が悶絶する場面もあった。
もっとも、クウェートが変貌を遂げてくることは日本にとっては想定内。テレビ画面を通してもいたる箇所で芝生が剥げ落ちていることが分かる、日本の得意とするパス回しを寸断する劣悪なピッチも、2月の中東遠征でくしくも同じスタジアムで試合をしたことで経験済みだった。
慌てず、動じず。空中ならばピッチの状態も関係ないとばかりに、前半21分にはMF東慶悟(大宮アルディージャ)が右前方のスペースへ絶妙なタッチで浮きダマのパスを送る。
トップスピードで走り込んだ右サイドバックの酒井宏樹(柏レイソル)が、相手GKと衝突しながらも右足をコンタクトさせる。倒されてもボールの行方から目を離さない執念と気迫。酒井の視界には、緩やかにゴールへ吸い込まれていくループ弾の軌道がしっかりと映っていた。
第1戦で失点に結びつくミスを犯した酒井は、「絶対に自分で取り返したいと思っていた」と汚名返上を誓って敵地のピッチに立っていた。まさに有言実行。千金のアウェーゴールはクウェートの出鼻をくじき、戦意を萎えさせ、日本の優位をさらに際立たせたはずだった。
迎えた後半。最低でも3点が必要なクウェートが後先を考えずに、さらに前への圧力を強めてくるであろう状況はもちろん織り込まれていたはずだが、一転して日本の動きが鈍くなる。
キックオフの時点の気温は39度。想像を絶する暑さが体力と思考力を奪い去っていたのか。開始わずか5分。中央付近からのフリーキックをDFハレドが中に折り返す。パスを受けたMFアリに対して、なぜか日本の守備陣はほぼノーマークの状態でシュートを打たせてしまう。
慌てて酒井が間合いを詰めるが、時すでに遅し。正面にいたDF鈴木大輔(アルビレックス新潟)に至っては金縛り状態で、体を投げ出してブロックすることすらできなかった。
左足から放たれたボレーが豪快にネットを揺らすと、クウェートの勢いがさらに増してくる。迎えた14分。日本の左サイドを完全に崩され、放り込まれたクロスに対して、鈴木の処理が緩慢になる。ペナルティーエリア内でセーフティーにクリアすべき場面で、キープしようとしたその隙を突いたのはナセル。鈴木が引っ掛けたのか。あるいは、ナセルが巧妙に裁く側を欺いたのか。
微妙なシーンではあったが、アウェーという状況を考えれば、主審もPKを宣告するホイッスルを吹かざるを得なかったのだろう。まさかの逆転。ここから日本が一気に浮き足立つ。
鈴木とセンターバックを組む濱田水輝(浦和レッズ)は、クウェートの猛攻を「相手の勢いが違った。点を取りに人数をかけてきて怖かった」と試合後に振り返っている。
あと1ゴールで15分ハーフの延長戦に持ち込めるのだ。ホームの声援を背にしたクウェートが捨て身の攻撃を仕掛けてきたことは、4人もの選手が足を攣らせた壮絶な光景が物語っている。
カテゴリーはなんであれ、国際試合は国の威信をかけた闘いの場。脳裏に「恐怖」の二文字が浮かび、臆してしまった側が苦杯をなめてきたケースは幾度となく繰り返されてきた。
幸いにも後半25分をすぎるとクウェートもガス欠を起こしはじめたが、全員が「今は耐えろ」を合言葉にクウェートの執念に対抗すべき時間帯で、日本の経験の乏しさが顔をのぞかせてしまった。
U‐22日本代表が立ち上げられた昨年10月。中国・広州で行われるアジア大会に招集可能なメンバーのリストを、技術委員会から見せられた関塚隆監督は「エッ」と驚いたという。
Jリーグはシーズンの佳境を迎え、J1の上位争いだけでなく、J1への残留や昇格をかけた戦いが白熱していた。当該チームの主力や準主力は皆無。代わりにJ1およびJ2の中位チームの控え選手、そして大学生が大勢を占めた。その中に、アルビレックスで出場5試合の鈴木もいた。
Jクラブや大学側と折衝を重ねた、技術委員会の原博実強化担当技術委員長は言う。
「そのアジア大会で6試合戦った中で急激に伸びた選手もいる。Jでレギュラーじゃなかった選手が急成長して、今ではレギュラーになっている。そういう可能性を彼らはもっている」
その代表格がアルビレックスで不動のセンターバックとなった鈴木であり、J2の大分トリニータから移籍したJ1のアルディージャで定位置をしっかりと確保した東となる。
もっとも、鈴木にしても本当の修羅場はまだくぐっていないのだろう。前半7分にもあわやPKかという場面を相手のシミュレーションで事なきを得ているが、冷や汗ものの貴重な経験を勝負どころで生かすことができなかった。東も後半35分にMF清武弘嗣(セレッソ大阪)とのワンツーから放った決定的なシュートを、相手GKのファインセーブの前に阻止されている。
ましてや、21歳の濱田はレッズでまだ5試合しか出場していない。今シーズンに至ってはベンチ入りも皆無。鈴木や東らが成長を遂げ、初優勝を果たしたアジア大会にも招集されていない。
後半ロスタイムに見舞われた決定的なヘディングシュートを左手一本で防いだ権田は、キャップこそ獲得していないものの、A代表の一員として1月のアジアカップを経験している。
「暑さを言い訳にはしたくなかった。これが最終予選だったら負け(勝ち点ゼロ)なので」
心身に刻んだ経験の重厚さと、ここ一番における存在感の大きさは、20歳前後の世代ではやはり比例していると言わざるを得ないだろう。U‐22日本代表の大半がおそらく初めて味わった、生きるか死ぬかを分けた十数分間の攻防をいかにして今後の成長への糧に変えていくのか。
週末に行われるリーグ戦でも、何人かは強行日程を押してピッチに立つだろう。第2戦で「負けた」という事実をどう受け止めるか。選手たちの「目線」の高さも問われてくる。
9月21日からはアジア最終予選が始まる。12か国を3グループに分け、ホーム&アウェー方式で総当りのリーグ戦を行う長丁場。シード国と目されていた中国がオマーンに苦杯をなめ、おそらくは北京五輪に出場した日本が繰り上がりでシードされることになる。
韓国、オーストラリアとは同グループにはならないが、残る8か国はサウジアラビア、バーレーン、イラク、カタール、UAE、シリアの中東勢にウズベキスタン、マレーシア。組み合わせ抽選会は7月7日に行われるが、決して低くない確率で「中東包囲網」の中に組み込まれる可能性もある。
ウズベキスタンにしても、3月に行った同国への遠征は1勝1敗。ともに1点差の拮抗した内容だった。決して侮れない相手であり、いずれにしても楽な組み合わせにはならないだろう。
各グループの1位の国が自動的に来夏のロンドン五輪出場権を獲得し、2位同士によるプレーオフで勝ち残った1か国がアフリカの4位の国との大陸間プレーオフに回る。
「最終予選は相手も強い国ばかりなので、このままじゃいけないと思う。次につながったので、いいサッカーをして勝ち上がれるように、一歩一歩ハードルを越えていきたい」
死力を尽くして戦い抜いた選手たちを労いながらも、関塚監督は気持ちを引き締めることを忘れない。指揮官が漏らした「このままじゃいけない」という言葉は、ロンドン五輪への出場資格をもつ1989年1月1月以降に生まれた全選手へのメッセージであり、檄でもある。
ロンドンからブラジルへと羽ばたいていくために。新たな戦いは、すでに始まっている。
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2011年6月24日 15:40|記事URL|コメント(2)|トラックバック(0)
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コメント(2)
結果的に酒井のゴールで命拾いしましたね。
相手がガンガンくると、それを耐えて自分達のペースにもっていけていませんでした。相手に合わせてしまうというか。
ディフェンスも大事ですが、最終予選&本大会を見据えて、香川、宮市、宇佐美、指宿を呼んで使って欲しいです。
なおき様
いつもコメントありがとうございます。
ロンドン五輪のアジア最終予選は9月21日から始まりますが、いずれも国際Aマッチデー以外の日に行われるため、海外クラブ所属の選手を招集する拘束権が日本サッカー協会にないんです。香川は以前から五輪は本大会だけに専念させる方針で、宮市、指宿、今夏から海外に移る宇佐美と高木善も呼ぶのはほぼ無理となります。
これだけの五輪代表世代が海外でプレーすることは以前では考えられず、日本サッカー界全体としては喜ぶべきことなんですけど。今後も日本国内組で乗り切るしかなく、必然的に今月7日のアジア最終予選の組み合わせ抽選が注目されます。これだけ中東勢が勝ち進んでいると、日程面も含めて楽なグループはないでしょうけどね。
今後とも宜しくお願いします。
スポーツタイムズ通信社
藤江直人
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