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奇跡の世界制覇!なでしこジャパンの美しき勝利に涙した by 藤江直人

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■サッカー女子W杯ドイツ大会決勝
日本代表[FIFAランク4位] 2‐2(PK3‐1) アメリカ代表[FIFAランク1位]
[7月18日午前3時45分(日本時間)キックオフ@コメルツバンクアレーナ/観衆4万8817人]
※日本女子代表(なでしこジャパン)が初優勝を達成
映像を何度も巻き戻して見ても、目頭が熱くなってくる。なでしこジャパンの4人目のキッカー、DF熊谷紗希がゆっくりとした助走から強烈な一撃をゴールの左上に突き刺す。
「みんなの様子を見るまで状況が分からなくて。一歩乗り遅れてしまいました(笑)」
振り向いてみると、青いユニホームの一団が笑顔を弾けさせながら駆け寄ってくる。ひと呼吸置いてからPK戦に決着がついたことを知った背番号4に、まずは2本のPKを弾き返したGK海堀あゆみが抱きつき、キャプテンのMF澤穂希を先頭にセンターサークルからダッシュしてきた選手たちが重なり、さらにその外側にサブの選手たちやスタッフが次々と殺到してくる。
ドイツ時間で7月18日になる直前。サッカー界の歴史に新たな1ページが刻まれた。
FIFAランク1位の大国にして、日本がこれまで24回も戦って一度も勝利したことのない天敵アメリカに後半24分、延長前半14分と2度もリードを奪われながら、その度に執念のゴールで追いつく。2対2のまま突入したPK戦では海堀のスーパーセーブで流れをグイッと引き寄せ、5人目でスタンバイしていたであろう澤にまで順番が回ることなく決着をつける。
「信じられない。みんな最後まであきらめずに戦った結果だと思う。私自身、全力を出し切りました。ずっと世界一を目指してやってきましたけど、なかなか現実を受け止められない」
瞳を潤ませる澤を中心とする歓喜の輪に、ただ一人、加わらなかった日本の選手がいた。
後半36分にゴール前に詰めて相手のクリアが小さくなったところを左足で押し込み、延長後半12分には左CKから澤の起死回生の同点ゴールをアシスト。PK戦では1番手で登場し、心憎いほど冷静に決めてみせたMF宮間あやはその時、アメリカの選手たちのもとへ歩み寄っていた。
「知っている選手も何人かいるので、喜びはもちろんですけど、そこは敬意を表して」
一人ひとりに抱きつき、言葉をかけて、ぼう然と立ち尽くす準優勝国を労っている。夢にまで見た世界一を決めた次の瞬間に、苦楽をともにした仲間たちと一緒に狂喜乱舞したい衝動を必死にこらえ、何よりもまず120分間プラスPK戦の死闘を繰り広げてきた敗者を称えにいく。
日本ナンバーワンのテクニシャンがみせた、至高のフェアプレー精神だった。
2008年8月に行われた北京五輪で、世界中に流された「あるシーン」が脳裏に蘇ってくる。
なでしこジャパンが5対1で大勝し、準々決勝進出を決めたノルウェー戦の後半途中。接触プレーで転倒し、悶絶しているノルウェー選手のユニホームの上着が大きくめくれ上がり、テレビ画面を通じて背中が露になってしまう。直後にその選手と激突したMF原歩が駆け寄り、さりげなくユニホームを元に戻し、何事もなかったかのようにその場を離れていく。
大和撫子をイメージした愛称そのままの、日本女性の凛とした清楚さを垣間見てから3年。宮間の行動を通して伝わってきた「美しさ」に、誇らしげな気持ちを抱かずにはいられなかった。
その一方で、なでしこジャパンは執念にも似たここ一番での「勝負強さ」も持ち合わせている。
延長後半12分の大会得点を確定させる澤の同点ゴールが決まる直前。日本が左CKを獲得したプレーでアメリカのGKソロが負傷し、治療のためにプレーが一時的に中断している最中だった。
相手ゴールからやや離れた場所で入念に話し込んでいたのは澤と宮間。おそらくは以心伝心でこれから相手へ見舞うプレーは決まっていたはずだ。遠いサイドからニアポストのさらに先まで素早く移動し、低く速いボールを斜め後方のゴールへ流し込む澤の必殺パターン。会心の一撃にマーク役の選手は澤の背中を追うことしかできず、GKソロは棒立ちで見送るしかなかった。
彼女たちはどんな劣勢にさらされても、絶対に「折れない心」を宿らせている。
キックオフ直後から試合を支配したのはアメリカ。高い位置で積極的にプレスをかけてボールを奪い、そこからポゼッションを高め、次々とサイドをえぐっては日本へのプレッシャーを強めてきた。
前半15分にMFラピノーのシュートが左ポストを、29分にはFWワンバックのミドルシュートがクロスバーを叩く。後半24分には一瞬の隙を突かれてのカウンターから、途中出場のFWモーガンに先制点を決められる。自分たちがやるはずだったサッカーを格上の相手に、よりスケールを大きくして実践される中で、ピッチの上には常に「絶対にあきらめるな」という日本語が飛び交っていたという。
佐々木則夫監督の言葉を借りれば「集中力を持ってゴールを守り、耐えて、耐えて、みんなの粘りで勝ち取ったチャンピオンの座」となる。だからと言って、悲壮感の類は漂ってこない。
極度の緊張を強いられるPK戦が始まる直前だった。なでしこの選手たちやスタッフが組んだ円陣の中に入った指揮官は、穏やかな笑みを浮かべながら何か言葉を発していた。
十八番という「おやじギャグ」でも飛ばしていたのか。笑顔は瞬く間に円陣へと伝播し、日本からプレッシャーを取り払っていく。対照的に、勝利目前で2度も追いつかれたアメリカは明らかに意気消沈していた。この時点で勝負あった、と言っても過言ではないだろう。
初めて日本女子代表が編成されてから30年という節目で達成された快挙。今以上に恵まれないプレー環境の中で、サッカーが好き、サッカーをメジャーにしたいという一心でボールを追いかけ続けた先輩たちが築いた土台に、ベテランの域に達した澤を中心とする世代がさらに彩りを加えた。
そして、そう遠くない未来にバトンを託される、26歳の宮間を筆頭とする中堅の世代は世界一という喜びを噛みしめながらも、より貪欲にもうひとつ上のステージを見据える。
「最後の(アメリカとの)試合に関して言えば、相手チームにボールを支配される時間の方が多かった。これをステップにして、新しいなでしこジャパンも頑張れると思います」
一転して、これからは追われる立場になる。攻守に絶え間なく連動し、1プラス1を2にも3にもすることで体格のハンデを補う日本のスタイルも研究されるだろう。だからこそ、エースストライカーとして期待されながら1次リーグ初戦のニュージーランド戦であげた1ゴールのみに終わり、スウェーデンとの準決勝、そしてアメリカとの決勝ではスタメン落ちも味わった24歳のFW永里優季も続く。
「この大会で優勝したことで注目されると思うけど、これからは自分たちの世代が重要な役割を担っていく。なでしこジャパンをどのように発展させていくのか、という責任を感じている」
9月には来夏のロンドン五輪出場をかけたアジア予選が中国で開催される。オーストラリアや中国、北朝鮮、韓国といったアジアのライバル勢の標的に、さっそくさらされることになる。
大会中に29歳になったFW安藤梢は、かつての自分自身にダブらせるように言った。
「自分たちの姿を見て、子供たちが(将来の)夢を見てくれたら嬉しい」
私事で誠に恐縮だが、最近遊びに行った友人宅のリビングに飾られていた七夕の短冊の中で、小学校1年生になる友人の長女がしたためた「願い」に心を打たれずにはいられなかった。
「さっかあせんしゅになりたいです」
トップランナーとして18年間も日本代表をけん引してきた澤の背中を宮間や川澄、永里、大野、海堀らの中堅世代が追い、20歳の熊谷や18歳で抜擢されたFW岩渕真奈が続く。そのさらに下となる予備軍や底辺となる層も、ドイツの地で刻まれた快挙の相乗効果で急速な広がりを見せるだろう。
ブームを一過性ではなく本物として定着させ、さらに発展させるために。なでしこリーグを含めたプレー環境を整備し、アメリカよりも2桁も少ない4万6000人の競技人口を拡大させ、何よりもサッカーで生活ができるようなレベルにまで日本の女子サッカー界を引き上げなければいけない。
懸案事項は枚挙にいとまがないが、今日だけは余韻に浸りたい。どんな逆境でも絶対に下を向かないひたむきさ、ここ一番で見せる勝負強さ、常に相手を労わる優しさ、さらなる上を目指す貪欲さ、そして底抜けの明るさを携えて頂点に立った「なでしこジャパン」を世界中に誇りたい。
一夜明けた19日には、W杯&金メダルとともに凱旋帰国を果たす。未曾有の大フィーバーが予想される中で、彼女たちの視線は今週末から再開されるリーグ戦へとすでに向けられている。
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2011年7月18日 16:48|記事URL|コメント(2)|トラックバック(0)
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コメント(2)
いや???心地いい余韻に浸っています。ひたむきに、あきらめず、自分達の力を信じて戦い、実力で勝ち取った優勝だと思います。
これまで日本女子サッカーの土台を作ってきたOG達の言葉、祝福を聞き、もらい泣きしてしまいました。
来夏のロンドン五輪、さらに楽しみになりました!
なでしこ戦士!おめでとう!!!
なおき様
いつもコメントありがとうございます。夜のニュース番組を見ていて、またもや涙腺が決壊しかけて困っています(笑)。努力を積み重ねることの大切さ、前を向いて必死に頑張り抜くことの尊さを、経験したことのない感動とともにあらためて教えられた一日でした。勇気をくれた彼女たちに心から感謝するとともに、明日からまた頑張りたいと思います。今後とも宜しくお願い致します。 スポーツタイムズ通信社・藤江直人
追伸:フロンターレ、まさに手負いの状態で首位のレイソルを下した1勝は、後半戦へ向けて非常に重要な意味を持つのではないでしょうか。今シーズンのJ1戦線も最後まで目が離せない展開になりそうです。
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