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夢の球宴とは何か。NPBのオールスター戦に覚える違和感 by 藤江直人

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今年もプロ野球のオールスターゲームの季節が到来している。記録づくめの猛打でセ・リーグが大勝した22日の第1戦、2発を放った埼玉西武ライオンズの中村剛也がMVPを受賞した23日の第2戦に続き、24日にはクリネックススタジアム宮城で第3戦が行われる。
出場する選手はセ・パ両リーグで総勢64人。試合数を考えれば妥当なのかもしれないが、オールスターゲームが「夢の球宴」と謳われていることを踏まえれば、やはり違和感を覚えざるを得ない。
真のプロフェッショナルが集う本来の意義においては多すぎるし、ましてやファン投票に選手間投票、監督推薦による選出に加えて「プラスワン投票枠」がれあばなおさらだ。
最後の一人となる32人目の選手は「スカイアクティブテクノロジー プラスワン チャレンジ」と銘打たれ、すべての選に漏れた中からインターネット投票で選出された。
結果は「下馬評」通りにセ・リーグから読売ジャイアンツの澤村拓一、パ・リーグからは北海道日本ハムファイターズの斎藤佑樹と両ルーキー右腕が1位となり、文字通りの「滑り込み」でオールスター出場を果たした。あえて「下馬評」としたのは、主だった選手の大半はすでに選出されていて、他に対抗馬が不在だったことに尽きる。厳しい言い方をすれば「敗者復活選」であり、ほとんど「オマケ」で選ばれた側も戸惑いを隠せないのが本音だろう。
斎藤の得票数にしても5885数で、澤村に至っては4067票だった。プラスワン投票枠が十分に告知されていなかった点や、年配の野球ファンがインターネットをなかなか利用していない点を差し引いても、1万票に大きく届かない数字はやはり寂しいと言わざるを得ない。
いったい何のための出場枠なのだろうか。そこまで無理をして出場させる意味があるのだろうか。スポーツ紙などでは「佑ちゃん、2試合に登板」といった報道も目にする。
選出された時点の斎藤の成績は2勝2敗、防御率は3.72。左わき腹痛による約1か月半もの戦線離脱を経て復帰し、交流戦終了後のリーグ戦で連敗を喫していた時だった。
人気先行で選ばれた感はどうしても否めない。それだけに、同僚のダルビッシュ有や杉内俊哉(福岡ソフトバンクホークス)、同世代の田中将大(東北楽天ゴールデンイーグルス)といった一線級の投手が集うベンチでは、斎藤も居場所を見つけられないのではないか。主催者側やスポンサーサイドの「思惑」通りに選出された点で、むしろ気の毒にすら思えてくる。
早稲田大学から鳴り物入りで日本ハムに入団し、時ならぬフィーバーが沸き起こっていた今年1月の中旬。千葉・鎌ヶ谷市で行われていた新人合同自主トレーニングに臨んでいた斎藤は、早稲田スポーツ新聞のインタビュー取材に対して興味深いコメントを残している。
当時のファイターズタウン鎌ヶ谷には連日のように数百人単位のファンが殺到し、スタジアムから隣接する二軍の勇翔寮までの上り坂は警備員で厳重にガードされていたほどだった。
インタビューした学生記者が「すごい数のファンですね」と向けたときだった。斎藤は「不安」という言葉を何度も口にしながら、冷静沈着に数か月後の状況を予測している。
斎藤「もちろん今いるファンの方々も大切だけど、今の状況は自分うんぬんとはあまり関係ないというか、恐らく時間とともに(今のファンの方々は)離れていく。その後にいかに自分の実力でファンの方々を取り戻せるか。その方が大事だと思っている」
早稲田実業高校3年次で夏の甲子園を制し、「ハンカチ王子」なるニックネームとともに早稲田大学に入学したのが2007年。未曾有のフィーバーは東京六大学リーグの舞台となる神宮球場に伝播したが、3年生に進級した2009年頃にはそれも収束していたという。
外出する時にはサングラスも何も必要なくなった経験則が、キャンプ入り前のプロ1年生をして今のファンは「恐らく時間とともに離れていく」と言わしめたのだろう。
実際、故障による戦線離脱もあって、状況は斎藤が想像した通りに推移していく。ならば、今は本当の意味でファンを惹きつけるだけの実力を養う段階と言えるのではないか。
その意味では、たとえ5日間とはいえ、オールスターでリーグ戦が中断する期間は絶好のミニキャンプとなったはずだ。課題だったストレートに「ようやく自信が持てるようになってきた」と力を込める斎藤にとって、つかみかけた手応えを本物にする時間はいくらあっても足りない。
名古屋から千葉、仙台と移動する中では練習時間も満足に割けないだろうし、ましてや仙台での第3戦は前半戦で9勝をあげた田中との甲子園優勝&準優勝投手リレーが予定されている。東日本大震災の被災地で実現する「黄金タッグ」は当然のように大きな関心を集めるだろう。
斎藤自身も緊急登板で1回と3分の2を無失点に抑えた第1戦同様に全力でプレーするはずだが、現時点における斎藤の成績を考えれば、いよいよもって話題づくりの感が否めなくなる。
セ・パ両リーグの交流戦が導入されて久しいことも考えれば、オールスターゲームを3試合も行う必要性はまったくない。総勢64人の選手を選ばなければならないのも試合数に起因しているのであり、まさに負のスパイラルとなって「夢の球宴」の価値を下落させている。以前ほどにNPBのオールスターゲームに対する興味を抱かなくなったことと、決して無関係ではないはずだ。
ご存知の通り、アメリカのMLBのオールスターゲームは1試合のみ。原則として7月の第2火曜日に行うことで価値を高める。2日前の日曜日に行われる公式戦はすべて午後1時プレーボールのデーゲームとなり、選ばれた選手がオールスター開催都市へその日のうちに移動できるように便宜が図られる。明けて月曜日にはホームランダービーが華やかに開催される。
MLBのオールスターゲームのメンバーは総勢66選手。球団数が両リーグ合わせて30もある点や、9回を終えて同点の場合は決着がつくまで延長戦を続けるルールがある点、何よりも選出されることが選手にとっての最大の名誉であり、契約にボーナス条項が盛り込まれている点を考慮すれば、1試合だけという点を考えれば多すぎる人数が球宴の価値を下落させることはない。
ちなみに、最後の33人目はファンによるインターネット投票で選ばれる。日本のプラスワン投票枠はこれに倣ったものだが、むしろ参考にするべきはオールスターゲームの価値を高める根本的な部分ではなかったのか。斎藤が成長を遂げ、本人が望む「実力でファンを取り戻した時」に晴れて田中との「夢の継投」を実現させたとしても、決して色褪せることはないのだが。
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2011年7月23日 23:53|記事URL|コメント(0)|トラックバック(0)
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