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最新の日本代表に見るザッケローニ監督の誤算と計算  by 藤江直人


 ベテランの域に差しかかった3人の復帰は、何を物語っているのだろうか。
 10日に札幌ドームで行われる韓国代表との国際親善試合に臨む日本代表メンバー23人が4日に発表された。9月2日にスタートするW杯アジア3次予選前における、最初で最後となる貴重な強化試合。ロンドン五輪出場を目指すU‐22日本代表から抜擢されたFW清武弘嗣(セレッソ大阪)が脚光を集めているが、本当の意味でのサプライズは別のところにあると言っても決して過言ではない。
 それは6月のキリンカップでは招集されていなかったDF駒野友一(ジュビロ磐田)、MF阿部勇樹(レスター)、FW松井大輔(ディジョン)がそろって名前を連ねた点に他ならない。


 日本代表がベスト16に進出した昨夏のW杯南アフリカ大会の代表でもある1981年生まれの3人は、そろって今年に30歳になったか、あるいは間もなく30回目の誕生日を迎える。
「A代表全体に言えることは、大切なのは過去ではなく、未来だということだ」
 日本代表を率いて1年になるアルベルト・ザッケローニ監督はこう公言しながら、就任時の公約でもあった世代交代による日本代表の新陳代謝をドラスティックに推し進めてきた。
 極論を言えば、代役のきかないMF遠藤保仁(ガンバ大阪)を唯一の例外として、30歳を迎えた選手と若手や中堅が同じポジションの場合、基本的には後者を優先させて招集してきた。


 岡田武史前監督の路線を踏襲することからスタートしたザッケローニ監督は、初陣だった昨年10月のアルゼンチン、韓国との親善試合で駒野、阿部、松井の3人を招集している。
 駒野は韓国戦で右腕上腕部を骨折するアクシデントもあって1月のアジアカップ代表から漏れてしまったが、今シーズンのJ1では開幕から全19試合にフル出場。コンディションも万全に戻っていたが、ザッケローニ監督は6月のキリンカップで23歳の安田理大(フィテッセ)を、8月1日から札幌市内で行った3日間の短期合宿では24歳の太田宏介(清水エスパルス)を招集した。
 その意図はサイドバック、特に左のバックアップメンバーとしての適性を見極めることにあった。


 ビッグクラブのインテルに完全移籍した長友佑都が絶対的な存在として君臨する左サイドバックだが、故障など万が一の事態に備えておくことは危機管理の原則でもある。
 実際、長友はインテルの一員として臨んだセルティックとのプレシーズンマッチで、古傷でもある右肩を脱臼。幸いにも長期離脱を強いられる手術は回避したものの、9月2日に迫っている北朝鮮とのW杯アジア3次予選の初戦に万全の状態で臨めるかどうかは現時点で微妙だ。
 10日の韓国戦では「長友不在」を想定して戦う必要があるだけに、代役には最も計算できる選手を招集しなければならない。指揮官が出した結論は、安田でも太田でもなく駒野だった。


 実績のあるベテラン選手を代表メンバーから外した理由を問われると、ザッケローニ監督は常に「安定感が抜群で、計算ができて、完成している」というメッセージを発信してきた。
 日本代表を支えてきた選手たちのプライドを最大限に尊重しながら、その一方で新戦力の発掘に注力。チーム内の競争意識を高め、切磋琢磨させることで成長を促そうとしてきた。
 もっとも、東日本大震災の影響で3月下旬に国内で予定されていた国際親善試合は2戦とも中止となり、Jリーガーを中心とする構成で臨むはずだった7月のコパ・アメリカも辞退を余儀なくされた。若手の伸びしろに刺激を与える機会が著しく制限されたことは、指揮官にとっても誤算だったはずだ。


 阿部も昨年10月の韓国戦を最後に日本代表から遠ざかっていた。その間に本田拓也(鹿島アントラーズ)や家長昭博(マジョルカ)、柴崎晃誠(川崎フロンターレ)がボランチとして招集され、先の短期合宿では柏木陽介(浦和レッズ)や増田誓志(鹿島アントラーズ)、谷口博之(横浜F・マリノス)、青山敏弘(サンフレッチェ広島)らの若手や中堅が適性を試された。
 遠藤とキャプテンの長谷部誠(ボルフスブルク)が不動のコンビを組むその牙城は揺るぎないが、だからこそ不測の事態に備えて確実に計算できるバックアップメンバーが必要になる。指揮官の眼鏡にかなったのは細貝萌(アウグスブルク)、家長、柏木と阿部だった。


 松井はアジアカップのシリア戦で右太ももに肉離れを起こし、大会期間中に離脱してからは代表に招集されていない。6月のキリンカップでは19歳の宇佐美貴史が抜擢されて話題を集めたが、ザッケローニ監督自身は「彼はA代表のレベルにない」と手元に置いて観察することが主眼であることを強調。ガンバ大阪から名門バイエルン・ミュンヘンに移籍した今回は呼んでいない。
 アジアカップではFW岡崎慎司(シュツットガルト)が松井の代役を務め、獅子奮迅のプレーで優勝に貢献したが、一方で流れを変えるスーパーサブ的なサイドアタッカーが不在となっていた。新天地も決まった今、けがが癒えた香川真司(ドルトムント)とともに満を持しての復帰と言えるだろう。


 6月のキリンカップでは3‐4‐3システムを試したザッケローニ監督だが、同時に「このシステムは必要な時までとっておく」とも断言。結果だけを求められるW杯アジア3次予選においては、選手たちの大半が慣れ親しんでいる4‐2‐3‐1システムで臨む方針を固めている。
 日本のカギを握る「3」の部分には、中央に本田圭佑(CSKAモスクワ)、左サイドには香川が入り、右サイドを競う松井と岡崎のどちらかがスーパーサブに回る図式になってくる。
 北朝鮮とのW杯アジア3次予選初戦に臨む陣容も、韓国戦へ向けて選出された23人から変更があるとすれば、故障離脱中の長友とFW前田遼一(ジュビロ磐田)の復帰にとどまるはずだ。


 実際、4日に行われた記者会見でザッケローニはこのように明言している。 
「アジアカップ以降、本番の雰囲気からは遠ざかっているので、今回の韓国戦を行うことで、本番の雰囲気を取り戻して3次予選に臨みたい。そういう位置づけにある」
 駒野、阿部、松井の復帰は、ベテランと呼ばれる世代へ向けた「決して代表への門戸が閉ざされいるわけではない」というメッセージであり、躍進著しい清武を抜擢したことで、代表歴が浅い、あるいは代表入りを目指す若手や中堅の選手たちへ「誰にでもチャンスはある」と刺激も与えている。
 安定と成長。二律背反する「二兎」を追い求める上でのバランスをギリギリで保ちながら、3年後のW杯ブラジル大会へ向けて、ザッケローニ監督がいよいよ臨戦モードに突入する。   

2011年8月 6日 14:08|記事URLコメント(0)トラックバック(0)

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