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本田圭佑の故障離脱と台風直撃が招く北朝鮮戦への不安  by 藤江直人


 9月2日に行われる北朝鮮とのW杯アジア3次予選に臨む日本代表メンバーから、トップ下の本田圭佑(CSKAモスクワ)とボランチの中村憲剛(川崎フロンターレ)が緊急離脱した。
 本田は8月28日のスパルタク・モスクワ戦で右ひざを、中村は同日の柏レイソル戦で右足親指の付け根を痛め、31日午前中に埼玉県内で精密検査を受けた。その結果、前者は半月板の損傷が、後者は骨折していることが判明。大一番の2日前になって無念のリタイアとなった。
 日本代表とCSKAモスクワのチームドクター同士が連絡を取り合い、CSKAモスクワ側が「自分たちのところで詳しく診て判断したい」と希望したため、本田は日本滞在わずか1日半の強行日程で慌しくモスクワへとUターンした。中村は北朝鮮戦まで代表チームに帯同する。


 31日に埼玉県内で行われた練習終了後に報道陣に対応した日本代表のアルベルト・ザッケローニ監督は、終始、腕を組んだままチームの大黒柱と百戦錬磨のベテランの離脱を振り返った。
「2人ともチームに合流した時点で(故障の)疑いがあった。完成度の高い、2人の計算できる選手がいなくなるのは非常に残念。経験という部分がチームから失われてしまった」
 もっとも、無念の思いをにじませるであろう2人の心中は慮りつつも、北朝鮮戦へ向けて決して悲観した様子は見せない。4‐2‐3‐1の「3」の中央、いわゆるトップ下として不動の存在だった本田の代役について問われた指揮官は、迷うことなくこう答えている。
「すでにいるメンバーの中で頭にある。その選手がやってくれるだろう」


 2日連続で冒頭15分以降が非公開となった練習では、レギュラー組のトップ下に香川真司が配されたようだ。所属するドルトムントではトップ下に君臨し、昨シーズンの前半戦だけで8ゴールをゲット。MVPに輝いた22歳にとっても、代表チームでは初めて務めるポジションとなる。
「自分もけがをして苦しんだので、圭佑の悔しさはよくわかる。(けがは)しょうがないというか残念だけど、今いるメンバーでしっかりと結果を出すしかない」
 北朝鮮戦でのポジションについては「まだわからない」とさすがに煙幕を張った。これまでの左サイドでもトップ下でも、「オレの中で特に意識はしない。やることは変わらない。今はすごくいい状態にあるので、いいイメージを持って臨みたい」と揺るぎない自信をのぞかせた。


 おそらくは香川をトップ下に据え、左サイドには岡崎慎司(シュツットガルト)を配置。左から切れ込んで利き足の右足でシュートを放つFWとしての役割により比重を置かせる一方で、右には8月10日の韓国代表との親善試合で2アシストをマークするなど、鮮烈なA代表デビューを果たした清武弘嗣(セレッソ大阪)を再び抜擢する布陣となるのではないだろうか。
 昨シーズンのセレッソで揃ってピッチに立ったのは1試合、7分間だけだったが、清武は同じ1989年生まれの香川の背中を常に追ってきた。ドルトムントに移籍した香川の後を継いでレギュラーとなり、ロンドン五輪出場を目指すU‐21代表、A代表と階段を駆け上がってきた。ライバル意識も相まって、2人のコンビネーションは面白いハーモニーを奏でるかもしれない。


 ザッケローニ監督をして「日本代表戦にかける並々ならぬ意欲がある」と言わしめる本田の欠場は、チームのメンタル面でも確かに痛手となる。しかし、サッカーは常に不慮のけがによる戦線離脱や累積警告、あるいは退場処分による出場停止といったリスクを伴うスポーツでもある。
 半月板の損傷は長期欠場につながるおそれがあるだけに、酷な言い方になるが、早急に本田不在時の戦い方を固める必要も出てくる。指揮官も本田と中村に代わる選手を招集する考えを明かした上で、「すぐに呼ぶかもしれないし、北朝鮮戦を待ってからになるかもしれないが、フレッシュな2人が高いモチベーションと高い技術を代表チームにもたらしてくれるだろう」と情を封印。プロフェッショナリズムに徹して、成長途上のチームをさらに前進させていく決意を新たにした。


 もっとも、今現在が「平時」ならばこれで問題はないが、目前に迫った北朝鮮戦に限れば、不安材料はザッケローニ監督や日本サッカー協会が手を出せない次元に存在している。
 31日の練習では、メディアに対して非公開とした直後から集中豪雨に見舞われた。叩きつけるような激しい雨音。選手たちが練習していたピッチは、瞬く間に水浸しになったという。
 大きな勢力を保ちながら、ゆっくりと日本列島に北上している台風12号の影響で空模様は非常に不安定な状態が続き、北朝鮮戦当日の2日は関東地方を直撃する予想まで出されている。
 日本サッカー協会は翌日3日へのスケジュール変更を検討しているほどで、通常通り開催されたとしても、荒れ狂う暴風雨の条件下での試合を余儀なくされるおそれもある。


 水がたまり、重馬場となったピッチでは、日本の最大の武器となる華麗なパス回しは寸断されてしまう。最悪の場合、カウンターに活路を見出す北朝鮮に有利となりかねない。
「今日みたいな大雨が降って、ピッチに水がたまれば、もうサッカーにならない」
 練習を終えた香川は厳しい試合になることを覚悟した上で、「そうなるとセットプレーが大事になる。どんな状況になってもいいように、明日(の公式練習で)確認したい」と続けた。
 セットプレーに関しては、コーナーキックは左右ともにMF遠藤保仁(ガンバ大阪)が担っているが、フリーキックは遠藤と本田とで状況に応じて蹴り分けてきた。昨夏のW杯南アフリカ大会のデンマーク戦で、ともにフリーキックからゴールを奪った両者の残像は今もなお鮮烈だ。


 緩やかなカーブ回転の放物線を描かせる遠藤の右足。無回転のボールゆえに本人すら予測できない軌道で空間を切り裂く本田の左足。左右で異なる二門があるがゆえに対峙するゴールキーパーは迷い、わずかながらボールに対する反応が遅れ、日本にとってはゴールのチャンスが生まれる。
 残念ながらフリーキッカー役としての本田に代わる選手はいない。日本が世界に誇るキャノン砲がキックオフ前の時点でもがれてしまったことは、大型台風直撃下の大雨と重馬場のピッチという未曾有の悪条件が加味されることで、大きなマイナス材料となると言わざるを得ない。
 北朝鮮代表のFW鄭大世(ボーフム)は「ネコがライオンに噛みつくつもりでやりたい」と大胆不敵に勝利を宣言している。これまでの対戦成績は日本の6勝4分け5敗とほぼ互角。3年半ぶりの激突は猛威をふるう大自然の乱入をまじえながら、文字通り予測不能の展開を呈してきた。

2011年9月 1日 01:57|記事URLコメント(0)トラックバック(0)

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