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究極の頂上決戦へ。日テレ・ベレーザ岩清水梓の武者震い by 藤江直人

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■なでしこリーグ第15節
日テレ・ベレーザ[勝ち点34] 3‐1(前半3‐0) 岡山湯郷Belle[勝ち点19]
[10月30日午後2時キックオフ@西が丘サッカー場/観衆2139人]
感謝の思いを込めながら、日テレ・ベレーザのDF岩清水梓はペンを走らせていた。
前回の対戦で0対1と苦杯をなめているMF宮間あやを擁する岡山湯郷Belleから、前半だけで3ゴールをマーク。8月7日から続く連勝街道を「8」に伸ばしてから約10分後のことだった。
ベレーザの選手のほとんどがロッカールームへ引き揚げ、先制点となる5試合連続ゴールをマークしたFW岩渕真奈や追加点を決めたFW永里亜紗乃らがテレビのフラッシュインタビューを受けている中で、背番号22だけが小雨が降り始めたピッチの中に残っている。
メーンスタンドの最前列に駆け寄ってきたファンに、時間の許す限りサインをしたかった。ウインドブレーカーを羽織ることすら忘れて、岩清水はつかの間の交流を楽しんでいた。
薄暗くなってきたピッチ上は急激に気温が下がっていたが、気にはならなかった。
岩清水「ファンの方々から温かい言葉をかけていただいたので、そこは大丈夫です。サインですか? こんなに観客が多くて、しかもホームでの試合だったので(笑)」
逆転での連覇を達成するためには絶対に負けられない一戦。メーンスタンドがほぼ満員で埋まっている光景を見た岩清水は、キックオフ前の段階で心を震わせていたという。
だからこそ、何かの形でお返しをしたかった。チーム関係者が「本当にしっかりした考え方を持っている選手です」と目を細めながら見つめる中で、フェンス沿いをゆっくりと歩くこと約20分。満面に笑みをたたえて戻ってきた岩清水を、思わぬ「朗報」が待っていた。
1時間早くNACK5スタジアムでキックオフを迎えていた浦和レッズレディースと首位を走るINAC神戸レオネッサの一戦が、1対1のドローに終わった――。
その瞬間、岩清水は「本当ですか?」と思わず声のトーンを上げて驚いた。この時点で、INACの勝ち点「35」に対してベレーザのそれは「34」に肉迫していた。ベレーザの方が残り試合がひとつ少ない状況とはいえ、開幕から無敗で首位を独走してきたINACの背中をついにとらえた。しかも、1週間後の11月6日には敵地のホームズスタジアム神戸に乗り込んでの直接対決が待つ。
岩清水「ここまで負けずに来られたのも、次の試合のため。みんなも一番大事な試合だと知っている。相手にとって不足はない。条件は整ったというか......思い切りぶつかりたい」
これを武者震いと言うのだろうか。心の底から闘志がわいてくるを感じずにはいられない。
5月7日。ホームの駒沢オリンピック公園陸上競技場にINACを迎えた一戦。FW川澄奈穂美に2ゴールを許して、ベレーザは完敗を喫した。その4日前の5月3日に行われた岡山戦に続く完封負け。岩清水はキャプテンとして、岩渕と永里の両FWに思うところを忌憚なくぶつけた。
岩清水「点を取らないとこうなるんだよ、と。前線の選手は点を取ることが仕事なので。あの試合もやれるとことはやれていたんですけど、困った時にゴールを決められなかった」
10月に入ると岩渕は5試合連続で計7ゴールを挙げる大爆発で連勝に貢献。通算8ゴールで永里とともに得点ランク3位につけ、首位のFW大野忍(INAC)に2点差に迫っている。
今年1月。チームの経営状況が逼迫した煽りでプロ契約制度が廃止され、MF澤穂希と大野のプロ組だけでなく、キャプテンだったDF近賀ゆかりまでもがINACに移籍した。
生まれ変わらざるを得ないベレーザにおいて、ピッチ内外でのけん引役を誰に託すか。前年12月に監督に就任していたベレーザOBの野田朱美氏は、迷うことなく岩清水を指名した。
「今年のベレーザには元気のいいキャプテンが必要でしたから。若い子が多いチームを活気づける存在として、プレーでも声でも最終ラインからチームを鼓舞できる岩清水は適任でした。なでしこジャパンで今のようにブレークする前から、すでに精神的支柱でしたからね」
野田監督によれば、岩清水本人も「望むところです」と大役拝命を快諾したという。
岡山戦の先発メンバーの平均年齢が22.9歳。一気に若返ったとはいえ、実に9人までが下部組織のメニーナ出身であるベレーザは、一貫指導の中で高度な戦術やテクニックを身につけている。いわば男子のヴェルディを含めた伝統に、野田監督はあえてメスを入れた。
「ボールのポゼッションや細かいパス回しができる一方で、大きな展開ができるようになるのが課題でした。両方がないと効かないし、相手を崩せないよ、とずっと言い聞かせてきました」
迎えた前半42分。相手ボールをインターセプトした岩清水がそのまま駆け上がり、前線のスペースへ一気にタテパスを送る。タイミングよく走り込んだ永里が鮮やかにゴール左に流し込んだ2点目は、新生ベレーザが追い求めてきた攻撃のオプションが結実したものだった。
よほど会心だったのだろう。ゴールを決めた永里だけでなく岩清水の周りにも選手が集まり、野田監督も「選手個々ではなくチームとしてイメージを共有できた」と及第点を与えている。
岩清水「(永里)亜紗乃がいい動き出しするのが見えたので、(相手の最終ラインを)一枚越えればいけると思ってパスを出した。何だか狙ったところに(パスが)行っちゃいましたね(笑)。亜紗乃の呼び出しもよかったし、ああいう形が作れれば引き出しになると思う」
8連勝の過程で28ゴールに対して4失点と、攻守のバランスでもINACと比べて何ら遜色ない数字をマークした。取るべき選手がきっちりと仕事を果たしている現状に、必要ならば怒れる闘将と化してきた岩清水も「責任感が出てきたんだと思います」と大きな手応えを感じている。
10月1日付けで念願のプロ契約選手となった。現在は月曜日をオフに宛て、火曜日から金曜日までは運営母体である東京ヴェルディ1969フットボールクラブのクラブプロデュース部に勤務。ベレーザの練習は夜間に行われるため、昼間は企画広報担当としてチームをサポートしている。
現役引退後はチーム運営に携わる仕事に就きたいと希望する25歳にとって、すべてが新鮮でワクワクする世界。9月までは日本テレビの関連会社に派遣社員として勤務していたため、見学することが叶わなかった昼間の東京ヴェルディの練習もピッチレベルで見られるようになった。
岩清水「DFラインの統率など、学べることは多いですね。出勤する時間は(午後で)楽をさせてもらっていますけど(笑)。前の仕事よりコンディション調整ではプラスになっています」
いざ、頂上決戦へ。INACが勝てばチーム創設10年にして悲願の初優勝を達成し、日本女子サッカーリーグ時代を含めて12度の優勝を誇るベレーザが意地を見せれば逆転で首位に立つ。
しかも、INACには常に背中を見続けてきた偉大な存在の澤をはじめとして、ベレーザやなでしこジャパンで何度も苦楽をともにした盟友が数多くいる。これ以上は望むべくもない、まさに至高のシチュエーションで迎える大一番へ。思い浮かべるだけで再び武者震いが始まってしまう。
岩清水「大野選手に関しては本当に(日本で)一番嫌なFWなので、自分の成長を試す場所にもなると思っている。いろいろな思いはあるけど、このチームで始まって今の私がある。このチームで一緒に成長してきたみんなと、どこまで戦えるか。最後は笑って帰りたい」
しかも、試行錯誤の状態だった5月とはチームの完成度が違う。センターバックでコンビを組む17歳の村松智子を筆頭に、若きチームが一戦ごとに成長を遂げてきた自負がある。
岩清水「勝たなきゃいけないプレッシャーの中で結果を出せているのは、成長の証じゃないかと思う。もともと技術が高いチームですけど、メンタル面に関しては試合を重ねていくことでしか成長できない。私自身に対しても(今の状況は)求めてきたものだと思っています」
岡山戦から一夜明けた31日は、いつものようにオフで心と体を充電した。火曜日からは昼間は電話取りやパソコンへの入力作業を手伝い、ヴェルディの練習見学からさらなる成長へのヒントを探る。
あくまでも自然体。決して気負うことなく、岩清水は運命の「11・6」に臨む。
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2011年10月31日 14:00|記事URL|コメント(0)|トラックバック(0)
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