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北朝鮮戦考察。必然に導かれたザックジャパンの初黒星 by 藤江直人

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■サッカーW杯ブラジル大会・アジア3次予選第5戦
北朝鮮代表[勝ち点6] 1‐0(前半0‐0) 日本代表[勝ち点10]
[11月15日午後4時キックオフ@金日成スタジアム]
勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし。
江戸時代中・後期の肥前国平戸藩の大名にして心形刀流剣術の達人、松浦静山の言葉がこれほど当てはまる黒星はない。何の理由もなくして負けることはない。必ず負けにつながった要素がある。偶然ではなく必然。日本代表は負けるべくして北朝鮮の前に屈した。
5万人もの大観衆が狂喜乱舞している、試合終了直後の金日成スタジアムから届けられたテレビのフラッシュインタビュー。DF今野泰幸(FC東京)が漏らした言葉がすべてを物語っていた。
「90分間を通して自分たちのサッカーができなかった。押し込まれて失点したのは悔しい。アウェーでも自分たちのサッカーをして勝ちたかったけど、相手に支配されたのは情けない」
自分たちのサッカー、つまりパスをつないでボールポゼッションを高め、相手の守備に綻びを生じさせるスタイルが最後まで影を潜めたのはなぜか。不慣れな人工芝のピッチは理由にならない。今月1日の日本代表発表会見。アルベルト・ザッケローニ監督は不安を一蹴している。
「個人的には慣れの問題だと思っているし、前日練習で感触を確かめることもできる」
実際、金日成スタジアムのピッチに関しては、事前に視察した日本サッカー協会のスタッフが「人工芝の状態は非常に良好」と報告している。芝生がはげ、そこかしこに土の部分がむき出しになっていたタジキスタンのドゥシャンベ・セントラル競技場のデコボコで劣悪なピッチに比べれば、得意とするパス回しを展開する上では天と地ほどの差があったはずだった。
果たして、前半の45分で日本が放ったシュートはわずか2本。それも中村憲剛(川崎フロンターレ)と長谷部誠(ボルフスブルク)の両MFによるミドルシュートだった。北朝鮮の守備陣をまったく崩し切れていないことは、獲得したCKがゼロだったことからも分かる。
後半43分に長谷部のドリブル突破からFWハーフナー・マイク(ヴァンフォーレ甲府)、FW李忠成(サンフレッチェ広島)とつないでゴールネットを揺らしたが、長谷部がハーフナーへパスを出した時点で完全にオフサイド。もっとも、皮肉にもこれが北朝鮮の守備陣を崩してペナルティーエリア内へ侵入し、得点チャンスをつくりかけた唯一のシーンでもあった。
後半16分に技ありのミドルシュートを放ち、相手GKの美技に阻まれたFW岡崎慎司(シュツットガルト)は「自分たちのリズムが出ない時間帯が多かった」と唇をかむしかなかった。
11日に行われたタジキスタン戦で日本が4対0で勝利し、直後にウズベキスタンが北朝鮮を下したことで、日本とウズベキスタンのアジア3次予選突破が決まった。
形の上では消化試合となった北朝鮮戦へいかに臨むか。現状におけるベストメンバーでチームを熟成させるか。あるいは、出場機会の少ないサブメンバーの経験値を上げるか。
来年6月3日からはアジア最終予選が火ぶたを切る。不慮のアクシデントによる故障離脱や累積警告による出場停止を考慮すれば、3次予選よりはるかに過酷で長丁場となる戦いへ向けたリスクマネジメントを徹底しておくことは必要不可欠。システムは慣れている4‐2‐3‐1のまま、タジキスタン戦の先発メンバーから6人を入れ替えたザッケローニ監督の采配に対しては何ら異論はない。
しかし、もともとトップ下の本田圭佑(CSKAモスクワ)と左サイドバック長友佑都(インテル)の主軸を故障で欠いていたチームは、サブ組が先発の大半を占めたことで「誰が出ても同じ戦い方ができる」という指揮官の自負とは正反対のパフォーマンスに終始してしまう。
キックオフの直後から執念を前面に押し出してきた北朝鮮は、ロングボール攻撃を徹底的に仕掛けることで、得意とする肉弾戦に日本を強引に引きずり込むことに成功した。
開始6分に川崎フロンターレでも活躍したFWチョン・テセのミドルシュートがゴールの枠をとらえれば、前半終了間際には左サイドバックとして起用された伊野波雅彦(ハイデュク・スプリト)を集中的に攻撃。4分の間に3度もの決定的なチャンスをつくってスタンドを沸かせた。
日本の最終ラインは、プレッシャーの前にズルズルと下がることを余儀なくされる。何とか北朝鮮の攻撃を食い止めたとしても、攻撃陣との距離が空いているために生きたボールを供給できない。
長谷部とダブルボランチを組んだ細貝萌(アウグスブルク)は、遠藤保仁(ガンバ大阪)の代役として長短のパスを散らすのではなく、得意とする激しい守備で北朝鮮の攻撃を食い止めようとするもままならない。前半途中からは中村を一列下げて、ボランチを3人にする応急措置までが講じられたが、攻守においてセカンドボールをほとんど拾えない苦境が変わることはなかった。
迎えた後半5分。DF栗原勇蔵(横浜F・マリノス)が1メートル86の長身FWパク・クァンリョンとの空中戦に競り負け、こぼれダマをMFパク・ナムチョルに頭で決められてしまう。背後から接触されたDF駒野友一(ジュビロ磐田)が悶絶するほどの激しいプレーだった。
9月2日に埼玉スタジアムで行われた初戦では、ホームの日本が北朝鮮を攻守で圧倒した。結果的には後半ロスタイムのDF吉田麻也(VVVフェンロ)のゴールで1対0と辛勝したが、ザッケローニ監督は「数多くの決定機をつくり出したからこそ生まれたゴール」と自賛した。
もっとも、最近の日本の戦いぶりについて、イタリア人指揮官は「ひとつやふたつのチャンスをつくるだけでは試合を決められない状況が続いている」とも危惧していた。
つまり、分母となるチャンスの数が少なくなるほど、分子となるゴールの数もゼロに近づいていく。後半17分から3‐4‐3に切り替えたが、習熟途上のシステムが機能するはずがない。
途中出場のハーフナーの長身を生かすような工夫や意思統一もなく、同33分に北朝鮮に退場者が出ても、悲しいかな、何ら状況は変わることなく試合終了のホイッスルを迎えてしまった。
活動できる時間が限られている代表チームだけに、もちろん選手たちには消化試合という意識はなかったはずだ。しかし、スタジアムを揺るがす大声援を背に、失うものは何もないとばかりに必死の形相で挑んでくる北朝鮮に対して、無意識のうちに怯んでしまったのも事実だろう。
すでに3次予選での敗退が決まっているとあって、イエローカードをもらうことを厭わず、歴史的因縁もある日本だけには負けてたまるかと平然とラフプレーを仕掛けてくる。
最後までベンチを温めたFW香川真司(ドルトムント)や遠藤らのレギュラー組と、伊野波や栗原、細貝らをはじめとするサブ組との埋めがたい差が依然として存在する現実。その上でメンタル面でも圧倒されれば、勝利をつかむことはできない。けが人が出なかったことと、我を忘れて逆上し、今後へ向けて不要なカードをもらわなかったことだけが収穫だったと言っていい。
選手たちが今まで経験したことのない「戦い辛さ」をピッチの上で感じていたことは、テレビ越しに何度も響いてきた、怒号にも近い声の塊から容易に察することができる。
しかし、例えばアジア最終予選ですでに進出を決めているイランと同じグループになれば、アウェーでの一戦は実に9万人以上を収容し、宗教教上の理由で男性だけがスタンドを埋め尽くす首都テヘランのアザディ・スタジアムの殺気だった雰囲気の中に身を投じられる。
つまり、発想を転換させれば、いわゆる「超」のつくようなアウェーを経験できたことは、キャプテンの長谷部が言うように発展途上のチームのかけがえのない財産になる。
「最終予選はもっと厳しい戦いになる。今日を教訓にして、次に生かすようにしたい」
ザッケローニ監督の初陣となった昨年10月8日のアルゼンチンとの親善試合で1対0の大金星を挙げて以来、続けてきた連続不敗試合記録は「16」で終焉を迎えた。
図らずも、冒頭で紹介した松浦静山はこんな言葉を残してもいる。
一時の勝ちは、終身の勝ちにはあらず。
目指しているゴールは3年後の2014年に開催されるW杯ブラジル大会に出場することであり、日本にとって未知の領域であるベスト8から先の扉を開けることである。
負けたことは確かに悔しいが、さほど意味をなさない記録の呪縛から解放され、現時点における課題と真正面から向き合えたことをむしろプラスにとらえるべきだろう。
進行中のアジア3次予選の情勢を見渡せば、グループAは成長著しいヨルダンと元日本代表監督のジーコ氏が率いるイラクの中東勢が中国を退けて突破を決めている。
グループDでは強豪オーストラリアが余裕の1位突破を果たした一方で、グループBは本命・韓国がFIFAランク146位の伏兵レバノンに破れる大波乱が発生。韓国は勝ち点2差で3位につけるクウェートとの最終戦に敗れれば、まさかの3次予選敗退もありうる状況だ。
日本が大苦戦したウズベキスタン、グループEのイランを含めてまさに群雄割拠。どの国と同組になっても、楽な戦いはひとつもない。北朝鮮に喫した黒星を引きずっている時間はない。
「一人ひとりが能力を上げて、チーム全体として成長していかないといけない」
チーム全員の思いを代弁するように岡崎が締めた。次なる戦いはすでに始まっている。
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2011年11月16日 04:20|記事URL|コメント(2)|トラックバック(0)
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コメント(2)
久しぶりにコメントします。
スタメンに入った6人の選手が「どういう気持ち」「考え」で試合に入っていったか、それが気になりましたし、それが必然と負けに繋がったように思えて仕方がありません。
どの選手が出ても強さは変わらないことを目指しているザックですが、それは監督の頭の中だけで、従来のスタメンが変わると日本代表の強さがガクっと落ちるのは目に見えてわかるのは残念です。
今回の北朝鮮戦で3‐4‐3を途中からやりましたが、最初から3‐4‐3やるにしても3‐4‐3の「4」の両サイドの選手を4‐2‐3‐1の「4」のサイドバックの選手(長友、内田、駒野など)を1列前に上げてやる3‐4‐3は間違っていると思います。
3‐4‐3の「4」の両サイドにはより攻撃的な選手(縦への突破に優れている、1対1に強い、ウイング的な)を配置しないと3‐4‐3の意味がないです。ザックはこの部分を分かっていない気がしますね。
来年、最終予選が始まりますが、正直、ザックを疑いの目で見ています。今回の敗戦はいい薬として、負けからの方が多くを学べると思うので、最終予選、2014ブラジルW杯で欧州勢、南米勢に勝っていく教訓にしないといつものアジアでは強いが、W杯ではがっかりさせられる、という図式はいつまでたっても変わらないです。
なおき様 ご無沙汰しています。いつも拙ブログをご愛読していただきありがとうございます。
3‐4‐3では最終ラインの「3」が横ずれを繰り返しながら守備を一手に担い、「4」の両サイドをより高い位置でプレーさせることが目的のひとつなんですが。内田にしても駒野にしてもサイドバックの意識が強いので、どうしても後ろの「3」に吸収されることが多くなるんですよね。公式戦の途中から3‐4‐3に代えるには、選手の交代枠の問題もあって難しいと私も思った次第です。ザッケローニ監督がご執心するシステムですが、まだまだオプションにもなり得ないのが現状ですね。
それよりも、チームの体をなしていなかったタジキスタンは例外として、グループCの北朝鮮、ウズベキスタンに対しては1勝1分け1敗、得点3、失点2という成績しか残していないことの方がはるかに問題です。シリアの失格がなければどうなっていたか。そして、来年6月から始まるアジア最終予選へ向けて、見た目ほど層が厚くないことを露呈した北朝鮮戦をどう生かしていくか。ザッケローニ監督の真価が問われるところではないでしょうか。今後とも宜しくお願い致します。
スポーツタイムズ通信社・藤江直人
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