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U‐23日本代表に問われるベストの意義と心の強さ(2)  by 藤江直人

U‐23日本代表に問われるベストの意義と心の強さ(2)  by  藤江直人

 
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■ロンドン五輪男子サッカー・アジア最終予選第4戦
U‐23シリア代表[勝ち点9] 2‐1(前半1‐1) U‐23日本代表[勝ち点9]
[2月5日午後9時5分(日本時間)キックオフ@キング・アブドラ国際スタジアム(ヨルダン)]


(1)から続く


 ベンチには扇原貴宏が台頭する前はボランチのレギュラー格だった山本康裕が控えていたし、豊富な運動量が武器のDF吉田豊やMF齋藤学もいた。しかし、特に後者2人に関してはこのチームでのプレー経験が極端に乏しい点が、慎重派の関塚隆監督をして二の足を踏ませたのか。
 所属するボルシアMGの拒否にあって昨年11月の2連戦で2ゴールと活躍したFW大津祐樹を招集できず、直前にカタールで行った強化合宿でエースと期待されたMF清武弘嗣が左のふくらはぎを痛めて緊急帰国。さらにシリア戦の前半途中に左腕を強打して退場し、救急車で病院に搬送されたFW山崎亮平は骨折が判明。清武とともに長期離脱を余儀なくされた。
 

 五輪に対するヨーロッパと日本の埋め難い「温度差」の前に希望する選手を招集できず、追い打ちをかけるように続出した故障者が編成やプランに狂いを生じさせた誤算は理解できる。
 しかし、勝ち越されて以降も関塚監督はなかなか動こうとせず、ようやく打って出た策がDF濱田水輝を前線に上げるパワープレーだけだった。これでは期限付き移籍していたJ2の愛媛FCで14ゴールをマークし、今シーズンから横浜F・マリノスに復帰した齋藤をベンチに入れた意図が分からない。
 3分間が表示されたロスタイムは結局、シリアの選手が立て続けに接触プレーで痛み、ピッチに倒れては時間を稼いだことで6分間を数えた。熟慮する時間は十二分にあったはずだった。


 加えて、前線に上がった1メートル85の濱田をターゲットにするプレーも最後まで見られなかった。残り時間が10分を切ってから押し込まれ、プレーが中途半端になった点も然り。意思を徹底できなかった一連の光景は、そのままピッチ上のリーダー不在を物語っている。
 2010年のチーム結成時からキャプテンを託されてきたボランチの山村和也は、後半30分に扇原との交代でベンチに下がっていた。ボランチを起点にする攻撃に限れば、扇原が投入されて以降の日本のリズムは明らかに向上していた。しかし、山村がそのままピッチの上にいればリーダー不在は解消できたのかと問われれば、残念ながら答えはノーと言わざるを得ない。
  

 昨年9月下旬に左足小指の付け根付近を骨折。手術を経てリハビリを積んできた山村は、明らかにゲーム勘を欠いていた。ベスト時のイメージとの大きなギャップに最後まで汲々としていた。
 ならばキャプテンシーを発揮できたかと言えば、こちらもノーとなる。試合後のテレビのインタビューで、山田直輝は「日本らしさを全然出せなかった」と厳しい表情で振り返っている。
 人もボールも動き、ボールポゼッションを高めることで相手に疲労を蓄積させ、守備網の綻びを誘い、両サイドを軸に攻撃を仕掛ける日本のスタイルがほとんど影を潜めてしまった90分間は、決してキックオフ前に関塚監督が意図したサッカーではなかったはずだ。


 シリアの戦い方は分かっていた。最終ラインからのロングボールをまずエースFWのスマに当てて、セカンドボールを拾った2列目の選手がグイグイと圧力をかけてくる。
 単純であるがゆえにプレッシャーを伴うシリアの影に臆したのか。日本はマイボールにしながら焦るように前方へやみくもに蹴り出し、再び相手にボールを渡すシーンが否が応でも目立った。
 これがシリアのようにスマをターゲットにするのならば合点がいく。しかし、ところどころで芝生がはげ、デコボコが目立つ劣悪なピッチをパスを繋げない言い訳として逃げたに過ぎない。激しさを増す相手のプレッシャーの前に、両サイドバックも攻め上がることができない。


 つまり、戦わずして自分たちのストロングポイントを捨て去ってしまったのだ。前半のうちに同点にできたという追い風にも恵まれながら、後半に入ってもメンタルの弱さを修正できない。
 ベンチからの檄を受けるまでもなく、ピッチの上にいる選手たちが勇気を振り絞らなければ苦境は打開できない。チームの心臓部を担う山村は、しかし、頭上を往来するロングボールを見上げるだけで、自らがボールを呼び込み、ボランチがゲームをつくる流れを生み出せなかった。
 日の丸を背負い、さらに左腕にキャプテンマークを託されているからこそ求められるものも多くなる。だからこそ、関塚監督は精彩を欠く山村をもっと早く代えるべきではなかったか。


 前編の(1)でも紹介した、横浜F・マリノス時代の岡田武史監督の言葉を再び記す。 
「運は誰の前にでも、普通にすぐそこに流れている。それをつかみ損ねたくないから、ベストを尽くす。この一本のダッシュ、この一本のシュートにベストを尽くすんです」
 関塚監督が山村を軸にチームをつくってきた経緯は理解できるが、山村自身のコンディションが心身ともに不十分な以上は、勝つために「ベストの選択」を下さなければならない。
 22日にはマレーシアとのアウェー戦が待っている。週明けには代表メンバーが発表され、現地の気候に慣れるためにも数日前にはクアラルンプール入りする。与えられた時間は決して多くない。


 タテとヨコ、さらにはスペースを突くパスとつなぎのパスを状況に応じて使い分けられる扇原が投入されて以降の日本の攻撃力にリズムが出て、チーム最年少の20歳のもとに自然とボールが集まりだしたことを見ても、現時点においては誰がボランチとして適任なのかは明白だ。
 セットプレーを獲得した際にキッカー役を任せられる意味でも、左足からの正確なキックも武器にしている扇原は外せない。コンビを組む相手は守備力があり、セレッソ大阪でもチームメートでお互いを熟知している山口螢。ヨルダンのピッチで機能しなかった心臓部を蘇生させない限り、前線にどんな優秀なアタッカーを配置しても閉塞感を打破することはできないだろう。


 グループCの2位に転落し、自力での1位突破が消滅した日本だが、現時点ではシリアも残り2試合に連勝しても自動的にはロンドン五輪切符を獲得することはできない。
 次の試合の結果次第で状況は大きく変わるし、シリアも大逆転での1位突破の可能性が残っているバーレーンのホームに乗り込む22日の次戦は決して一筋縄にはいかないだろう。
 アジア最終予選は残り2試合。日本にとっては敵地のマレーシア戦、3月14日に国立競技場で行われるバーレーンに連勝することは大前提で、その上で勝ち点が15で並んだ場合に得失点差や総得点の争いに突入する事態に備えてどれだけゴールを積み重ねることができるか。
 自分たちを成長させる修羅場が待つ。そう思えるくらいの豪胆さが今こそほしい。


 誰よりも精神的なショックを受けているはずのGK権田修一は、試合後に気丈にこう語っていた。
「自分が下ばかり向いていても、チームのためにならないと思うので」
 2大会連続でアジア予選で屈し、U‐20W杯出場を逃してきた世代が融合したロンドン五輪世代が、何よりも心の強さを試されようとしている。シリア戦ではすべてにおいて中途半端さをさらけ出したからこそ、残る2試合で問われるのは「ベスト」の意義にほかならない。
 ピッチの上でプレーする選手たち、起用法を含めて采配をふるう指揮官、海外組を含めた選手の招集に動く日本サッカー協会。今回の悔しさを糧にすべての人間が「ベスト」を尽くしたとするならば、その先に待つどのような結果もおのずと受け入れることができるのではないだろうか。


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2012年2月 7日 22:50|記事URLコメント(2)トラックバック(0)

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コメント(2)

久しぶりにコメントします。

関塚さんの監督としての力ってどうなんでしょう?川崎ファンとして関さんのサッカーを見てきましたが「代表監督初めて」と言ったらそれまでですが、代表監督よりもクラブ監督のほうが力を発揮するような気がします。

今回の五輪チームは「幼い」という印象です。アジア予選でこの戦い、ロンドンの本戦へ進んだとしてもメダルなんて到底無理だと思います。戦う気持ち=メンタルの強さになるかと思いますが、それが圧倒的に足りないですね。

海外組を呼べれば必ず予選突破できるとは限りませんが、「武器は使わなければ武器じゃない(武器なのかもわかりませんが)」と思っているので、呼べるのであれば関さんは変なこだわりを捨てて、どんどん呼んで使った方がいいです。


なおき様 コメントありがとうございます。海外組の招集に関しては、OKが出ていたFW大津祐樹が今日になってクラブの都合でNGになったように、監督の意向うんぬんではなく日本協会の技術委員会のマターでしょうね。五輪予選が国際Aマッチデーに行われない以上は、ヨーロッパのクラブを説得するのは難しいと言わざるを得ないでしょう。
それよりも問題なのは、先のシリア戦における関塚隆監督の采配と選手たちの姿勢だと思います。関塚監督はなぜ交代枠を使い切らなかったのか。なぜ故障明けで見た目にもコンディションが悪い山村和也の起用にこだわったのか。選手で言えば、なぜ劣悪なピッチの影響を言い訳がましく口にするのか。なぜ最も大切な最後の5分間で足を止めてしまったのか。勝ち越しのロングシュートを放たれた瞬間、相手に体を寄せていたのはMF山田直輝だけでしたからね。
3日後のマレーシア戦では、心技体を含めたこのチームのすべての「強さ」が問われると思っています。GK権田修一には努めて上を向いて、いつものように最後尾からチームを叱咤激励してほしいですね。長々と書いてしまいましたが、今後とも宜しくお願い致します。 

スポーツタイムズ通信社・藤江直人

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