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    <title>Sports Times　スポーツタイムズ通信社</title>
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    <updated>2012-05-16T12:33:16Z</updated>
    <subtitle>スポーツを心から愛する人たちへ。時には醒めて、時には熱く、独自の視点でスポーツメッセージを贈るWEBです。</subtitle>
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    <title>恩返しではなく挑戦。古巣ジェフで輝くＤＦ山口智の存在感　　by  藤江直人</title>
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    <published>2012-05-16T12:02:16Z</published>
    <updated>2012-05-16T12:33:16Z</updated>

    <summary> ☆☆☆論スポ第１０号の購入はこちらをクリックしてください！☆☆☆ ■Ｊ２第１４...</summary>
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        <![CDATA[<p></p>

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<p><br />
■Ｊ２第１４節<br />
ＦＣ町田ゼルビア［勝ち点１１］　１‐６（前半０‐２）　ジェフユナイテッド千葉［勝ち点２７］<br />
［５月１３日午後１時４分キックオフ＠町田市立陸上競技場／観衆６１７３人］</p>

<p><br />
　立ち上がりからよくなかった。中途半端だった。後手を踏んでしまったこともあって難しくなった。味方がいい形で点を取ってくれて助かった。個人的にも反省することしかない。<br />
　９０分間を振り返る言葉で何度も繰り返された部分だけを取り出せば、ほとんど敗者のそれにしか聞こえない。２０１０年から戦いの場を移しているＪ２では初めてとなり、Ｊ１時代を含めても２００７年８月２９日の大分トリニータ戦以来となる大量６ゴールを奪って敵地でＦＣ町田ゼルビアに圧勝。連勝を４に伸ばし、首位のモンテディオ山形に勝ち点３差の４位に浮上したジェフユナイテッド千葉のＤＦ山口智は、不完全燃焼の表情を浮かべながらこう続けた。<br />
<strong>山口</strong>「自分のプレーを含めて、今シーズンで一番よくない試合だったかなと思います」</p>

<p><br />
　勝って兜の緒を締める、というレベルの話ではない。４月１７日に３４歳になった百戦錬磨のディフェンダーは、とてもじゃないが試合内容に納得することができなかった。<br />
　１０日間で４試合を戦うゴールデンウイークの過密日程を３勝１分けの無敗で終え、通常の試合間隔に戻った中で迎えた緒戦。それでも選手たちの肉体に蓄積している疲労を懸念するジェフの木山隆之監督は、個人およびチームで不本意なプレーだったと断じる山口の心中をこう慮る。<br />
「疲れからか今日は何回はミスがあったし、チームとしても上手くボールをつなげなかった」<br />
　前半２８分には通算３枚目のイエローカードをもらった。累積警告による出場停止にリーチがかかっても、もちろん全１４試合でフル出場を続けているベテランへの厚い信頼感は揺るがない。</p>

<p><br />
　昨シーズンまで１１年間在籍したガンバ大阪から、完全移籍で２０００年シーズンまでプレーしたジェフに加入した。通算で３２０試合に出場したガンバでは２００５年に勝ち取った悲願のＪ１初優勝をはじめ、３位に食い込んだ２００８年のクラブＷ杯など濃厚な経験をその体に刻んできた。<br />
　一方でジェフはプロサッカー選手になる夢を抱き、生まれ故郷の高知県佐川町から傘下のユースチームの門を叩いた山口を厳しい指導で育て上げてくれた自身の原点。１９９６年３月２０日の京都パープルサンガ戦で、史上初の高校生Ｊリーガーとしてデビューさせてくれた大恩もある。<br />
　ガンバから契約を更新しない旨を告げられた山口のもとへは、数多くの獲得オファーが届いた。その中には浦和レッズやＦＣ東京といったＪ１チームからのものもあったという。</p>

<p><br />
　ガンバ、ジェフの双方から山口の移籍が発表されたのは年が明けた１月６日。Ｊ２でのプレーはもちろん初体験となる。決断を下すまでの時間を「周りからはいろいろと言われたし、難しいと言えば難しい選択だった」と振り返る山口は、その偽らざる胸中を打ち明けてくれた。<br />
<strong>山口</strong>「古巣だからということはないことはないんですけど、そんな単純なものではないし、古巣に帰って恩返しをしようという気もさらさらない。ひと言では説明できないものだし、どう表現したらいいか分からないんですけど、新たなチャレンジというか、自分でトライするものを見つけたというか。そういうものがあったから多分ここにいると思うんですけど。自分の決断が正しいのかどうかもまだ分からないですし、おそらく答えが出ることもないでしょうね」</p>

<p><br />
　今シーズンからジェフの指揮を執る木山監督の存在を抜きに、山口の決断は語れない。<br />
　追い求めるポゼッションサッカーを「バルセロナとアーセナルを足して２で割ったイメージ」と公言してはばからない４０歳の青年監督は、自らも積極的に意見した補強の過程で「センターバックがボールを出せなければ始まらない」とキーマンとして山口の獲得を熱望していた。<br />
「ボールをつなぐことを含めて、ピッチにおけるいろいろなことが彼からスタートしている。ゲームの流れを読む力と局面、局面における自分たちの状況を察知する能力はずば抜けているいるし、最終ラインからクリアすることなく、しっかりと味方にボールをつないでいく能力は日本人のディフェンダーの中でトップクラス。その意味ではよく決断してくれたと思っています」</p>

<p><br />
　ポゼッションサッカーの起点になれるセンターバック。ジェフ時代を含めて、歴代４位となるＪ１通算４４８試合に出場してきた山口が築き上げてきた「矜持」がこの能力となる。<br />
<strong>山口</strong>「自分としてはどこでやっても同じスタイルでやってきたつもりですし、その中でガンバには長くいましたけど、毎年新しい契約を結び、新しいメンバーと組んできた中で、自分はどういうプレーをしなきゃいけないかという点はまったく変わらない。今回は所属するチームが変わっただけですけど、ジェフを含めて、このトシになって自分を必要としてくれるチームがあるということは選手としてはホントに嬉しいですし、その期待に応えたいという思いは強いですね」<br />
　求められる役割と極めんとする道との一致。移籍を決断させた要因はこの一点に尽きる。</p>

<p><br />
　もっとも、対戦するチーム、対峙するアタッカー陣を含めて情報がほとんど頭脳にインプットされていないＪ２での戦いは、山口をして「違和感の連続です」と言わしめてやまない。<br />
<strong>山口</strong>「やったことのない相手ばかりなですからね。ミーティングでも去年のことやＪ２全体のことを言われるんですけど、まったく分からない。言い方は悪いかもしれないけど、僕には関係のないことですし、だからこそホントにチャレンジするだけというかね(笑)。目の前の試合でどういう課題を突きつけられて、それにどのようにして立ち向かっていくかというところで悪戦苦闘はしていますけど、必死にプレーすれば何かを得られるのかな、という思いでやっています(笑)」<br />
　違和感。悪戦苦闘。ネガティブな単語を連発する表情はしかし、充実感に満ちていた。</p>

<p><br />
　１９９３年のＪリーグ元年に参戦した「オリジナル１０」のひとつで、前身の古河電工時代から一度も２部リーグに降格したことがなかったジェフだけに、実際にＪ２に甘んじて３シーズン目となる今現在では有象無象のジンクスがチームの内外でよく聞かれるという。<br />
　降格した翌年に即復帰できなければＪ１昇格は難しくなる。なぜかアウェーで勝てない。<br />
　特に後者についてはＪ２における過去２シーズンの成績が、ホームの２２勝８分け６敗に対してアウェーでは１２勝１０分け１６敗と典型的な内弁慶であることとも深く関係している。<br />
　翻って今シーズンの軌跡においても、喫した３つの黒星はすべてアウェーでのもの。ホームでは４勝２分けと無敗をキープしているだけに、余計にアウェーでの苦手意識が際立ってくる。</p>

<p><br />
　それでも、今シーズンから加入した山口にとっては「関係のないこと」となる。<br />
<strong>山口</strong>「チームのみんなやサポーターも気にしているみたいだし、記者の方からもそういう質問をされるんですけど、意識しないことで逆に助かっているのかもしれない。僕としては楽しさをもってプレーしたいし、どんな状況でもその点だけは崩さないようにしたい。ホントに余裕はないし、常に目いっぱいですけど、だからこそもっとやりたい。そこは自分次第だと思っています」<br />
　１４試合で許した失点８は、もちろんリーグ最少。キャプテンのＭＦ佐藤勇人が負傷離脱した第５節以降はゲームキャプテンを託されている。堅守だけでなく、悲願のＪ１復帰を目指して上昇気流に乗りつつあるチームの大黒柱として。山口の存在感は日増しに大きくなっている。</p>

<p><br />
　だからこそ結果に一喜一憂することなく、大勝の中でも自身およびチームのプレー内容に貪欲なまでにこだわる。８月１２日の第２８節では、ホームにゼルビアを迎えるだけになおさらだ。<br />
<strong>山口</strong>「点を取られた試合でも取られない試合でも、反省点というものはありますからね。今は過去を振り返りたくないし、もちろんあの時こうしていればとか、あのチームでやっていればということもない。僕自身としては、もう５年や１０年というスタンスでは考えられない。あまり先のことを考えすぎないように。今やるべきことをやって、その先に何が見えてくるか。チームとしてどのような結果を残しながら、いいサッカーを継続しながら、土台をつくっていけばいいのか。いいところもあれば、悪いところもある。どこでプレーしてもそれは同じだと思っています」</p>

<p><br />
　１１年もの歳月をともに過ごしたガンバが気にならない、と言えば嘘になる。１０シーズン続いた西野朗体制が一新された古巣は序盤から不振が続き、わずか３節を終えた直後の３月２６日にはジョゼ・カルロス・セホーン前監督と呂比須ワグナー前ヘッドコーチが解任された。<br />
　ガンバ生え抜きの松波正信コーチをＯＢでは初めて、しかも３７歳のクラブ史上最年少監督として昇格させるカンフル剤を打ったものの、１０試合を終えた段階で２勝２分け６敗の１７位に低迷。４シーズン連続で決勝トーナメントに歩を進めてきたＡＣＬでも、ＦＣ東京、名古屋グランパス、柏レイソルが次々と決勝トーナメント進出を決める一方で早々にグループリーグ敗退が決定。未曾有の泥沼から抜け出すためのきっかけすらつかめない状況が続いている。</p>

<p><br />
　特に山口を放出し、日本代表ＤＦ今野泰幸をＦＣ東京から迎え入れた守備陣はリーグワーストの２２失点と完全に崩壊。自慢の最強攻撃陣も１０試合で１３ゴールにとどまっている。<br />
<strong>山口</strong>「そりゃあ気になりますよ。今の松波監督を含めて、ずっと一緒にやっていたメンバーばかりですし、今でもスタッフとは仲がいいですからね。ただ、リーグが違う分、客観的に見ることができるのはありがたいことですし、これで対戦しなきゃいけないとなると変に複雑な気持ちにもなりますから。新しい監督のもとで選手も変わった中でチャレンジしていく過程でいいこともあれば、もちろん悪いこともある。選手は揃っているので、らしくないとは思っていますけど、盛り返してくるんだろうなという感じでも見ています。外から見て言うのは簡単なんですけどね(笑)」</p>

<p><br />
　山口は自分自身を「ガンバのファンの一人」と屈託なく笑う。愛着ある２つのクラブがこの先に交わるとすれば今シーズンの天皇杯か、Ｊ１復帰の夢を成就させた来シーズンの舞台か。<br />
　Ｊ１よりも８試合多い４２試合の長丁場となるＪ２戦線は、ちょうど３分の１を消化した。上位２チームが自動的にＪ１へ昇格し、３位から６位までの４チームが昇格プレーオフを争う新システムが導入された今シーズン。現状で勝ち点７差の中にジェフを含めた９チームがひしめきあっている大混戦は、さらに激しさを増しながら梅雨を経て消耗戦の夏の陣へと突入していく。<br />
<strong>山口</strong>「個人的にもまだまだの部分があると気づかされる。これは現役引退まで続くでしょうね」<br />
　太陽光線に映えるチームカラーのイエローに、山口のいぶし銀の輝きが渋い彩りを添えていた。</p>

<p><br />
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    <title>ケンカ上等！鄭大世が感じた新生フロンターレの原点回帰　　by  藤江直人</title>
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    <published>2012-05-14T04:03:45Z</published>
    <updated>2012-05-14T04:41:29Z</updated>

    <summary> ☆☆☆論スポ第１０号の購入はこちらをクリックしてください！☆☆☆ ■Ｊ１第１１...</summary>
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<p><br />
■Ｊ１第１１節<br />
川崎フロンターレ［勝ち点１６］　０‐２（前半０‐０）　柏レイソル［勝ち点１１］<br />
［５月１２日午後３時３分キックオフ＠等々力陸上競技場／観衆１万６０５４人］</p>

<p><br />
　今も川崎フロンターレを愛してやまないからこそ、あえてＮＧを突きつけたのだろう。<br />
「今日はすごく楽しみにしていたんですけど、全然ダメでしたね(笑)」<br />
　昨シーズンのＪ１覇者・柏レイソルの意地と誇りが込められた完璧なサッカーの前にほとんどチャンスをつくれないまま、０対２のスコアとともに連勝を２で止められてから約１時間後。ブンデスリーガでの戦いを終えて来日していた北朝鮮代表ＦＷ鄭大世（１ＦＣケルン）は、朝鮮大学卒業後の２００６年に加入し、４年半プレーしたフロンターレが目の前で喫した完敗に思わず苦笑した。<br />
　慣れ親しんだ等々力陸上競技場を訪れるのは、昨年５月のガンバ大阪戦以来。その間も「見られる時はネットで見ていました」と遠くドイツの地で古巣の戦いを見守っていた。</p>

<p><br />
　今シーズンに入ってからのフロンターレの動向も、もちろん気にかけていた。<br />
　指揮を執って２年目となる相馬直樹前監督が電撃解任されたのが、開幕から５試合を終えた直後の４月１１日。その時点で２勝１分け２敗だったチームは風間八宏新監督が就任して以降の３試合を２勝１敗と勝ち越し、トータルで白星をひとつ先行させてレイソル戦を迎えていた。<br />
　最近は結果だけしかチェックしていなかったという鄭大世だが、それでも風間体制になってからの３試合は変化を感じさせるのに十分だった。原点回帰と言った方がいいのかもしれない。<br />
「相馬さんの時は守備的で、今年はそれが特に顕著になって１点ゲームが多かったけど、やっぱり３点、４点と取って２点、３点と食らうのがフロンターレだと思うので(笑)」</p>

<p><br />
　風間新監督が就任してからの３試合のスコアを、あらためて振り返ってみる。<br />
●１‐４　サンフレッチェ広島<br />
○４‐３　ジュビロ磐田<br />
○３‐２　名古屋グランパス<br />
　開幕以降の５試合における最高得点は１。この点だけを見ても、フロンターレの中で急速な化学変化が発生していることが分かる。触媒となっているのは、もちろん風間監督の存在だ。<br />
「できるだけ魅力のある、ボールを持った、選手も楽しんでいるのが分かるサッカーをしたい」<br />
　就任会見の席で掲げられた指揮官の理想は、瞬く間に選手たちを虜にしてしまった。</p>

<p><br />
　レイソル戦を翌日に控えた１１日。川崎市内のフロンターレの寮でキャプテンのＭＦ中村憲剛と昼食をともにした鄭大世は、抱いていた予感が確信に変わったという。<br />
「憲剛さんはものすごく風間さんを慕っている。完全に崇拝していましたね(笑)。アドバイスされたことが試合でぴったりと当たったとか、憲剛さんでさえも見えていなかったことを言葉ひとつで表現したとか。みんなの心をつかむ言葉をどんどん言う、という感じみたいですね」<br />
　ボランチの稲本潤一をセンターバック、右サイドバックの田中裕介をアンカー、攻撃的ＭＦの登里享平を左サイドバックで起用する。「今日の常識は明日の非常識、今日の非常識は明日の常識」なる言葉を好む５０歳の新人監督は、自由な発想でチームにダイナミズムを蘇らせた。</p>

<p><br />
　２００８年、２００９年と２シーズン連続で２位に入ったフロンターレの最大の武器は、リーグ最多得点を叩き出した攻撃力だった。相手にとっての最大の脅威だったと言ってもいい。<br />
　この頃にインタビュー取材した中村も「殴り合いなら負けない」と胸を張って答えていたが、一方で失点も多かったのも事実。２シーズン連続で後塵を拝した王者・鹿島アントラーズとの距離を縮め、悲願の初タイトルを手にするアプローチとして守備力の向上が求められた経緯は分からなくもないが、短所を矯正するあまりに長所をスポイルしてしまっては本末転倒となる。<br />
　１１位に低迷した昨シーズンは、最終的に失点が得点を上回った。課題を修正できない焦りが今シーズンは自慢の攻撃力にまで悪影響を及ぼし、結果として負のスパイラルに深く陥ってしまった。</p>

<p><br />
　長く務めた解説者の仕事を通じて、豊富な知識を持つに至った風間監督とて魔術師ではない。シーズン途中での監督就任。短時間でできることは限られているからこそ、まずは選手たちに自信を回復させ、最も危険なチームだった頃のフロンターレに戻すことから着手したのだろう。<br />
　２００８年、２００９年の２シーズンで２８ゴールをマークし、「人間ブルドーザー」なる異名とともに最強攻撃陣の一翼を担った鄭大世も「ケンカ上等」スタイル復活に声を弾ませる。<br />
「やっぱりそこが大前提。そこから修正していくというか、ひとつの方向性が元通りに回復したというのが今日の試合を見ても感じました。憲剛さんも矢島（卓郎）とのコンビネーションを意識的に高めようとしている。やっぱり、みんなが求めているのはこのサッカーなんですよ」</p>

<p><br />
　もっとも、当時と今とでは同じ「ケンカ上等」でも明白な違いがあると鄭大世は続ける。<br />
「前みたいに大味ではなくなりましたよね。チーム力に重きが置かれているという感じで」<br />
　昨シーズンまで９年間在籍し、縦への爆発的なスピードと決定力を武器にＪ２時代と合わせて１７５ゴールを量産したＦＷジュニーニョが絶対的エースとして君臨していた頃のフロンターレは、攻撃に関しては圧倒的な存在感を放つ「個」に依存していた。鄭大世がさらに続ける。<br />
「ジュニーニョの存在は大きかったし、レナチーニョみたいにテクニックで相手を翻弄できる選手も今はいない。そういう変化が寂しくもあり、随所随所で気の利いたプレーができる選手が大勢いる変化が楽しくもあり、方向性が変わっていないのが嬉しくもありという感じですかね」</p>

<p><br />
　ジュニーニョのスピードに鍛えられた中村が正確無比な縦パスを身につけたこともあって、これまでのフロンターレの攻撃に占める割合は必然的にカウンターが多くなった。<br />
　いわば典型的なリアクションサッカーが、風間新監督の理想のもと、圧倒的なポゼッション率とともにボールをつないで主導権を握り続けるアクションサッカーへと変換されつつある。<br />
　その過程で刻まれたのが現役時代に風間監督がプレーした古巣のサンフレッチェに喫した大敗であり、ジュビロやグランパスと演じた壮絶な殴り合いだった。迎えたレイソル戦はしかし、得意の殴り合いに持ち込むための絶対条件を欠いてしまったと鄭大世は指摘する。<br />
「フロンターレは先に失点したら弱い。しかも、あの時間帯（後半１８分）に失点したらダメでしょう」</p>

<p><br />
　昨シーズンのＪ１初制覇から一転して、ここまで２勝２分け５敗と黒星が大きく先行。名将ネルシーニョ監督をして「黄信号が灯った」と危機感を抱かせていたレイソルは、勢いに乗りかけているフロンターレを研究し尽くし、ボール回しを封じ込める策を練って臨んできた。<br />
　本来はＦＷの田中順也を一列下げてフロンターレのアンカー田中をケアさせ、ワントップに入った工藤壮人も豊富な運動量と飽くなき闘争心で最終ラインにプレッシャーをかけ続けた。<br />
「前半は自分たちのペースでボールを持てなかった。特に最終ラインでボールを受けてほしいんですが、怖がっていた選手がいたように思える。もっと自信を持ってやらないといけない」<br />
　らしさを発揮できないまま、後半ロスタイムにも失点を重ねる完敗。風間監督の総括も厳しくなる。</p>

<p><br />
　指揮官の教えを思い出すように、中村も零封負けを喫した原因をこう分析する。<br />
「今日は相手のプレッシャーにそのままはまったというか、向こうの守備に対して違いを作れなかった。いつも風間さんが言っていますけど、ボールを持った選手がパスを出した後にもう一回参加すれば２対１の状況になるのに、今日はそういうシーンがほとんどなかった。パスを出したら出しっ放しというか、僕を含めてそうだっのかもしれない。また練習しなきゃいけない」<br />
　ポゼッションサッカーを実践するには、フロンターレで言えば井川祐輔と森下俊の両センターバックやアンカーの田中がビルドアップの起点になることが求められる。レイソルはそこへプレッシャーをかけ続け、苦し紛れのロングボールを蹴らせて思惑通りに攻撃権を放棄させた。</p>

<p><br />
　だからといって、光明がゼロだったわけでもない。時計が後半３９分をさす直前。右からのレイソル工藤のグラウンダーのクロスを井川がカットし、こぼれ球を森下が中村へ出したショートパスから始まった約４０秒間の流れるような攻撃は、むしろ新たな可能性を十分に感じさせた。<br />
　自陣深くからパスを紡ぐこと実に１４本。最後はＦＷ田坂祐介のヒールで切り返した直後をレイソルＭＦ大谷秀和に引っ掛けられ、敵陣のペナルティーエリアの手前でルーズボールをＤＦ酒井宏樹にクリアされてしまったが、特に狭いエリアの中でショートパスをテンポよくつないだ田坂、ＦＷ楠神順平、そしてＭＦ大島僚太の３人はレイソルを翻弄し、観ている側を魅了した。<br />
　個人技に長けたこの３人は、鄭大世の言う「随所で気の利いたプレーができる選手」となる。</p>

<p><br />
　第６節まではベンチ入りすらしていなかった、静岡学園高を卒業して２年目の大島は言う。<br />
「相手の背中に入れば相手は自分たちのことを見れないので、そこでどこへ動くかということを間違わなければしっかりとボールをつなげると思う。このボールの受け方をすればゴールに向かいやすいというのは前から感じていたけど、ここまで的確に教えてもらったのは風間さんになってからですね。その意味では、ボールをしっかりと受けられるようになっているかなと」<br />
　１４本のパスのうちの５本目。楠神へパスを出した大島はすぐにムーブし、チェックにきていたレイソルＭＦ茨田陽生の背後に回って再び楠神とのワンツーを成功させた。振り返った茨田が浮かべた慌てふためいた表情が、相手にとって予測不能の攻撃だったことを物語っている。</p>

<p><br />
　一連のパスワークを後方からフォローしていた中村も、思わず言葉を弾ませる。<br />
「相手のプレッシャーをひとつはがしたら、可能性を感じさせる攻めがあった。そこを堂々と、もっとできるように。一人ひとりがもっとプレーに顔を出して、もっとボールに触らないといけない。時にはもっと近くでやることも必要。今日はちょっと等間隔すぎたかもしれない」<br />
　ケンカを仕掛けるにしても、以前と今とでは手にする武器が異なる。ジュニーニョに代表される「個」に頼ったカウンターではなく、ピッチ上の１１人全員が意識を共有した産物としての至高のポゼッション。相手にとって危険極まりないパスワークこそが、殴り合いという原点に回帰したフロンターレが風間新監督のもとで急ピッチで身にまとい、進化させていく部分となる。</p>

<p><br />
　大島によれば、風間監督はディフェンスに関する練習は「あまりしない」という。<br />
　まず守備組織から構築するというチーム作りの定石に照らし合わせれば「非常識」となる手法を、圧倒的な攻撃力をもって防御とすることで、いつをめどに「常識」に変えるつもりなのか。<br />
　指揮官は監督会見の席で「簡単にピシッと言えずにすみません」と苦笑しながらこう続けた。<br />
「よく聞かれるんですけど、やはり人がやることですから、そこは選手たちの成長の度合いで変わってくる。もちろん早ければ早い方がいいですし、ある程度の形が出せるように頑張ろうとは思っていますけど、だからといってあまり計画を立ててやってはいない。選手たちと一日一日接しながら、いろいろなところでいろいろなヒントを与えていこうとは思っています」</p>

<p><br />
　就任して４戦を終えて２勝２敗。８得点に対して１１を数える失点は決して及第点とは言えないが、現時点ではそこかしこに顔をのぞかせる可能性が不安を上回っている。風間体制になってからの古巣の試合を初めて観戦した鄭大世も、新生フロンターレに魅せられた一人だ。　<br />
「今日は全然ダメだったけど、上手くいく時もあれば悪い時もある。優勝争いができるまでに変わるかどうかは分からないですすけど、そのくらいのレベルに到達してほしいですね」<br />
　所属するケルンは残念ながら２部に降格したが、２８歳のストライカーは「メンタル的にきついけど、上を目指さなきゃ男に生まれた意味がない」と残留を決意。夏場のキャンプで渡独するまではフロンターレの練習に参加して汗を流しながら、古巣の進化を見守っていくつもりだ。</p>

<p><br />
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    <title>４１歳での２０００本安打達成！宮本慎也を支える匠の技（２）　　by  藤江直人</title>
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    <published>2012-05-06T15:33:05Z</published>
    <updated>2012-05-06T15:49:16Z</updated>

    <summary> 　 ☆☆☆論スポ第１０号の購入はこちらをクリックしてください！☆☆☆ （１）か...</summary>
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<p>　<br />
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<p><br />
<u><strong>（１）から続く</strong></u></p>

<p><br />
　史上最高齢となる４１歳５か月で通算２０００本安打を達成した東京ヤクルトスワローズの宮本慎也内野手の偉業を大々的に報じる５日付けのスポーツ紙で、興味深いコメントがあった。<br />
　日刊スポーツ紙上において中日ドラゴンズの落合博満前監督が「守りがあったからこそここまで来られた選手」と宮本を位置づけ、特に安定したスローイングを絶賛している。<br />
　２０１０年２月に弊誌『論スポ』で「プロフェッショナルな技」と題して宮本にインタビュー取材を行った時には、もちろん右打ちだけでなく守備に関しても、大袈裟に表現すればゴールデングラブ賞を通算で９度も受賞するに至る「極意」と呼べる部分も披露してもらった。<br />
　そこには、落合氏が「天性のものなんだろう」と触れたスローイングの秘密も含まれていた。</p>

<p><br />
　守備力を評価されてプロ入りした宮本は、今現在もある「矜持」を胸に秘めている。<br />
<strong>宮本</strong>「派手に魅せるのもプロと言えばプロなんでしょうけど、僕はどんなに難しい打球でも簡単に捕ってみせるのがプロだと思っています。ヒット性の打球に飛びついてアウトにすればもちろんピッチャーは喜ぶでしょうけど、その一方で『打たれた』という思いも残ってしまう。それを真正面で捕って事も無げにアウトにすれば、ピッチャーが精神的に動揺することもない。その後の打者に対しても普通に投げてくれることが、チームにとってもベストですからね」<br />
　ファインプレーを決してファインプレーには見せない。頑固なまでの「哲学」が、バッティングに開眼するまでの宮本をプロの世界で生きながらえさせたと言ってもいい。</p>

<p><br />
　味方を何度も救ってきたショートの守備力は、同志社大学時代に完成していたという。　　<br />
<strong>宮本</strong>「正面で簡単に捕るには、フットワークを細かく、速く使えるかどうか。例えば三遊間のゴロに対して、曲線的に回り込めるかどうか。フットワークが使えないと打球に対して直線的に入り、最後はジャンピングスローになる。これが打球の右側に時計と逆周りで素早く回り込んで、捕った時の勢いを利用してファーストに投げれば、それほど肩に負担もかからない」<br />
　ゴロを捕る瞬間の体の向きが投げる方向と一致している。落合氏をして「安定している」と言わしめたスローイングの秘密は、まさにここにある。ピッチャーのボールとバッターのバットの軌道を見極めた上で打球の方向をあらかじめ予測する、経験に裏打ちされた洞察力も見逃せない。</p>

<p><br />
　もっとも、打球に曲線的に回り込むフットワークは一朝一夕には身につくものではない。<br />
<strong>宮本</strong>「大学１年の時の監督から『長く野球を続けたいのであれば、この捕り方を身につけろ』とみっちり叩き込まれました。自分の右側に緩いゴロを転がされ、輪を作りながら入っていって送球する。一日に２箱、２５０球くらいを延々と続けるんです。ボールの右側から入らないと怒鳴られるし、もちろん直線的に入るのもダメ。とにかく足を使って投げろ、肩は使うなと。当時は本当にしんどかったけど、今は感謝しています。おかげで肩も今ままで持っているので」<br />
　エラーの多さに悩む読売ジャイアンツの坂本勇人内野手が、球団の垣根を越えて宮本の弟子入りしたのはこのオフ。異例のタッグ結成は、それだけ宮本の守備力が卓越している証でもある。</p>

<p><br />
　その坂本は５月６日時点で、すでにセ・リーグのワースト２位となる４つのエラーを犯している。打球に対して回り込むようなフットワークから、肩ではなく足を使って投げる一連の動きがいかにハイレベルで、体に覚えこませるのにかなりの時間がかかるかが分かる。<br />
　話がややそれてしまったが、宮本は自身の体に今も脈打つショート時代の濃厚な経験値をもとに、２００９年から本格的にコンバートされたサードにおいても新たな境地に達している。<br />
　昨シーズンまで３年連続でサードとしてゴールデングラブ賞を受賞。特に昨シーズンにおいては、２９２回の守備機会でエラーはわずか１つしか犯していない。守備率・９９７で三塁手のプロ野球新記録を更新した秘訣は、ショートの時と逆のアプローチをとることだった。</p>

<p><br />
　守備範囲の広いショートと比べて「体力的には楽」というサードだが、当然のようにショートとは見える景色が異なる。自分のほぼ真横にピッチャーが位置するためにボールの軌道や球種が分からず、必然的に打球の方向をあらかじめ見当をつけておくという作業ができない。<br />
<strong>宮本</strong>「サードの場合、足を使うと逆にボールとの距離が詰まってしまう。だから体の横で捕るというか、できるだけ足を動かさないようにして捕ろうと。こう言ってしまうと、これを読むアマチュアの方々にはちょっと語弊があるかもしれないけど、ショートからサードに転向した者にとっては、ボールとの距離をつくった上で捕った方がベター。打球へのスタートをちょっと遅らせる感じで捕ると一番しっくりいくことに、（２００９年の）夏場になって気づいたんです」<br />
　</p>

<p>　プロ野球史上４０人目となる偉業達成から一夜明けた５日の朝に、宮本のオフィシャルブログ『球道即人道』は「やっと達成しました！」という第一声とともに更新されている。<br />
　その中には実数発表制に切り替えられて以来、神宮球場史上で２番目に多い３万３８６６人もの大観衆の眼前で２０００本目の安打を放つことができた至福の喜びなどが綴られ、最後はドラゴンズとの首位争いを演じているペナントレースへ気合いを新たにする形で締められている。<br />
「余韻には浸ったので今日からヤクルトの勝利の為に、優勝、日本一の為に頑張っていきます」<br />
　ヤクルトにおいて２００１年シーズンのセ・リーグ制覇＆日本一を知る唯一の現役選手となった今シーズン。残された夢はおのずと「優勝」の二文字に集約されてくる。</p>

<p><br />
　特に宮本の場合、自己犠牲を厭わないフォア・ザ・チームの精神と、プロの世界で生き残っていきたいという熱い思いが融合し、３０歳をはるかに超えてからの成長を促してきた。<br />
　大台到達まで残り２５本で迎えた今シーズン。「できるだけ早く達成したい」と常々口にしていた背景には、個人の記録よりもチームの戦いにシフトしたい思いが強かったからに他ならない。<br />
　一夜明けた５日も、そして６日も、宮本は何ごともなかったかのように「６番・サード」で先発メンバーに名前を連ねている。セ・リーグ記録を更新している中、５月１日の横浜ＤｅＮＡベイスターズ戦で２５７で途切れたサードでの連続守備機会無失策記録への再挑戦も、あと２２と迫った史上４４人目の通算２０００試合出場も、すべてが優勝へ向けた通過点となる。<br />
　</p>

<p>　そしてもうひとつ。打撃開眼とともに走者を返す役割を担い、打順が６番に定着してからはさすがに記録は伸びていないが、それでも宮本は史上３人目となる通算４００犠打にも残り８と迫っている。<br />
　最後は職人芸とも絶賛された、宮本の送りバントの「奥義」を再現したい。<br />
<strong>宮本</strong>「僕の場合、ポイントは右手ですね。右打者は左手でバットを操作しろとよく言われますけど、いろいろと練習しているうちに、右手でボールをとらえるようにするとイメージ通りにバントすることができたんです。基本的には、自分の目とボールの間にバットが入ってくる感覚。目の前のものはつかみやすいですよね。それと同じ原理で、ストライクゾーンをボール一個分ほど広げて、バットだけではなく体全体でボールの威力を吸収するイメージですね」</p>

<p><br />
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    <title>４１歳での２０００本安打達成！宮本慎也を支える匠の技（１）　　by  藤江直人</title>
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    <published>2012-05-06T15:05:01Z</published>
    <updated>2012-05-06T15:31:17Z</updated>

    <summary> ☆☆☆論スポ第１０号の購入はこちらをクリックしてください！☆☆☆ 　記録の詳細...</summary>
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<p><br />
　記録の詳細を知れば知るほどに、これまでの日本プロ野球の歴史で通算２０００本安打を達成した３９人の打者とは明らかに異なる「輝き」を放っていることが分かる。<br />
　本拠地神宮球場で５月４日に行われた広島東洋カープ戦の二回裏無死一塁。この試合で最初の打席に入った東京ヤクルトスワローズの６番・宮本慎也内野手が、２年目右腕・福井優也が投じた１３７キロのストレートに逆らうことなくバットを振り抜いた直後だった。<br />
　日本球界でも稀有となった「いぶし銀」的な存在を象徴するように、偉業達成を告げる打球が野球の基本通りにセンター前へ抜けていく。史上最高齢となる４１歳５か月での大台到達。ヤクルト一筋１８年目。脇役を自任する男が、華やかなスポットライトの中央で映えた。</p>

<p><br />
　２０００本安打を達成した打者の大半がクリーンアップを託される長距離打者か、もしくは出塁を求められる俊足功打の１番打者。打席における制約の多い２番打者として７７０試合に出場し、近年は６番が定位置となっている宮本が樹立した記録がいかに価値のあるものかが分かる。<br />
　当然のように通算で５９本しか放っていない本塁打は歴代達成者の中で最も少なく、一方で３９１を数える犠打は他の追随をまったく許さない１位。１６４６本を数えるシングルヒットも２０００本達成時では歴代最多で、通算でも８位にランクインしている。<br />
　大学、社会人を経てプロ入りした打者としても、かつてのチームメートだった古田敦也に続く史上２人目の大台到達。コツコツと積み重ねてきた努力への畏敬の念を感じずにはいられない。</p>

<p><br />
　ヤクルトがセ・リーグの頂点に立ち、勢いそのままに近鉄バファローズとの日本シリーズも制した２００１年は、今現在につながる宮本の「出発点」とも言うべきシーズンだった。<br />
　１７０ｃｍの小兵のトップ打者・真中満がガッツで出塁し、２番・宮本が確実に次の塁へ進めて、稲葉篤紀、ペタジーニ、古田で組むクリーンアップで着々と得点を重ねていく。<br />
　当時の若松勉監督がシーズンを通して貫いた手堅い采配の産物として、この年の宮本は今もプロ野球のシーズン最多記録として刻まれている６７個もの犠牲バントを成功させている。<br />
　もっとも、弊誌『論スポ』で「プロフェッショナルな技」を尋ねた２０１０年２月のインタビューにおいて、宮本は意外な思いとともに２００１年シーズンを振り返っている。そして、宮本の言葉を再掲していくと、達成されたばかりの記録の付加価値とでも言うべきものが鮮明に浮き彫りになってくる。</p>

<p><br />
<strong>宮本</strong>「真中が数多く塁に出なければ達成できなかった記録ですし、送りバントのサインを出してくれた若松監督にも感謝していますけど、僕としては初回無死一塁の場面で送りバントのサインが出なくなった時の方が嬉しかったですね。送りバントをしなくても宮本に任せておけばチャンスを広げてくれる、最低でもランナーを次の塁に進めてくれる、というバッターを目指していたので。バントのサインが出ているうちは『バッター宮本としてはあまり信用されていないんだ』と自分自身に言い聞かせながら、毎日のように鍛錬を繰り返していました」<br />
　前年の２０００年には自身初の打率３割をマーク。ショートとして１９９９年から３シーズン連続でゴールデングラブ賞に輝いている最中でも、宮本は常に危機感を覚えていたのだろう。</p>

<p><br />
　２００１年シーズン当時は３０歳だった宮本が目指していたのは、「真の意味で２番打者」になること。送りバントは成功させて当然。加えて、どんな状況下においてもピッチャーより右側のエリアにゴロを転がせる技術を会得しなければ、右打者には２番は務まらない。<br />
　いわゆる進塁打は簡単そうに見えて、実践するには非常に難しい技術だったという。<br />
<strong>宮本</strong>「右方向に打とうとすると、必ずといっていいほど腕でスイングを細工しようとする。僕も最初はそうでしたけど、そうするとボールの勢いに負けてファールになってしまうケースがやたらと多い。外角に緩い変化球を投げられると今度は体が前へ泳ぎ、バットのヘッドが返ってショートゴロになってしまう。腕で細工すると、相手の術中にはまってしまうんです」</p>

<p>　<br />
　試行錯誤の末に導き出された答えは、いわば野球選手としての「原点」であった。<br />
<strong>宮本</strong>「最終的にはベストのスイングをして、正しいポイントでボールをとらえる技術を身につけることが右打ちの技術を習得するための一番の近道であることに気がつきました。自分のヘソから右足の間あたりにポイントを置いて、ベストのスイングをする。その際、ボールの内側、つまり左半分にバットを入れれば、自然と振り遅れて打球は右方向に飛ぶんです。これなら変化球を引っ掛けることも少なくなる。求められるのは理にかなったスイング。そのためには、とにかくバットを振って、振って、振りまくること。数をこなして体に染み込ませるんです。かなりの確率で意識して右方向に打てるようになったのは、それこそ５年くらい前からですね」</p>

<p><br />
　インタビュー時から５年前、つまり２００５年頃になって宮本は初めて理にかなったスイングを手にしたことになる。３０代半ばにしての開眼。遅咲きと呼ばれるゆえんと言っていい。<br />
<strong>宮本</strong>「スイングする時に無駄な力が入り過ぎていたせいか、若い頃はよく手にマメをつくりましたけど、最近は数をこなしてもできない。じゃあスイングする数が極端に減ったのかと言えば、そうでもない。やはりある程度、正しいスイングができるようになったからだと思います」<br />
　この頃から打順は２番だけでなく、６番を中心に走者を「返す役」を託されるようになる。２００８年シーズンは自己最高の打率・３０８もマーク。３位に食い込んでクライマックスシリーズ進出を果たした２００９年シーズンの終盤には、３番に名前を連ねた時期もあった。</p>

<p><br />
　当時の取材ノートには、セ・リーグ某球団のスコアラーのこんな宮本評が記されている。<br />
「アウトコースに投げればセカンドの頭の上を越され、逆方向に打たれることを嫌がってインコースに投げれば思い切り引っ張られてしまう。厄介極まりない存在ですよ」<br />
　右打ちを極めた宮本は、同時にバッティング技術そのものも向上させていたことになる。<br />
<strong>宮本</strong>「たとえカウントが悪くなっても、右方向への意識が強ければすべてのボールに対応しやすくなる。ポイントをキャッチャー寄りに置けば強振もしなくなるし、ボールそのものも見極めやすくなるんですよね。引っ張ることのできない左バッターがプロで飯を食っていけないのと一緒で、右バッターは右方向に打てなければ打率を残すことができないんです」</p>

<p><br />
　ドラフト２位でヤクルトに入団したのが１９９５年。守備力だけがプロレベルに達している点を、当時の野村克也監督から皮肉を込めて「自衛隊」と揶揄された非力な打者が、弱肉強食のプロの世界で生き残っていくために必死で身につけた技が２０００本安打達成につながった。<br />
<strong>宮本</strong>「自分の好きなように打てるのはクリーンアップくらいだし、その中で４番を打てる選手となると、ある程度は限られてくる。でも、２番は違う。僕の場合は送りバントを成功させなければ生き残れなかった。それにプラスして、宮本に任せておけば確実にチャンスが広がる、サインを出さなくてもいろいろなことをしてくれる、と思われるように努力を重ねてきたんです」<br />
　努力次第で２番打者になれる。宮本の野球人生は、プロを夢見る少年たちへのメッセージでもある。</p>

<p><br />
<u><strong>（２）へ続く</strong></u></p>

<p>　<br />
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    <title>ギラヴァンツ北九州・三浦泰年監督が放心状態に陥った理由　　by  藤江直人</title>
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    <published>2012-05-05T15:25:24Z</published>
    <updated>2012-05-05T16:25:12Z</updated>

    <summary> ☆☆☆論スポ第１０号の購入はこちらをクリックしてください！☆☆☆ ■Ｊ２第１２...</summary>
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<p><br />
■Ｊ２第１２節<br />
ＦＣ町田ゼルビア［勝ち点１０］　０‐１（前半０‐０）　ギラヴァンツ北九州［勝ち点１９］<br />
［５月３日午後７時４分キックオフ＠町田市立陸上競技場／観衆３０２１人］</p>

<p><br />
　ＦＣ町田ゼルビアのホームスタジアム、町田市立陸上競技場にこの３月に登場したばかりの仮設メディアセンターでは、他ではなかなか味わえない「肉声」を聴くことができる。<br />
　来春の竣工を目指して改装中で、全面的に閉鎖されているメーンスタンドの前面にそびえ立つ鉄筋５階建ての真っ白なセンターと、ピッチを隔てるものは陸上のトラックしかない。４階に設けられた記者席には、当然のように両チームの選手や首脳陣の声がよく届いてくる。<br />
　ギラヴァンツ北九州を迎えた第１２節のようにあいにくの悪天候となると、風とともに雨が舞い込んでくる４階を避けて２階の記者控え室のガラス窓沿いに並べられた机に移動することが多い。<br />
　すると、ピッチとの距離がより近くなる分だけ、声の質や内容までがリアルに伝わってくる。</p>

<p><br />
「レフェリー！　おい、レフェリー！」<br />
「おい！　動け、動けよ！　もっと動け！」<br />
　ゼルビアの選手が見舞った危険なプレーに「カードを出せ」と鬼気迫る表情でレフェリーに要求したかと思えば、動きに精彩を欠く自軍の選手たちを容赦なく叱咤激励する。<br />
　ギラヴァンツを率いて２シーズン目となる４６歳の熱血漢、三浦泰年監督は文字通りの「闘将」と化して、ベンチ前のテクニカルエリアに何度も足を運んでは絶叫を繰り返した。<br />
　指揮官自身は「いつものことだよ」とさわやかな笑顔を浮かべていたが、間近で見ている側が思わず心配してしまうほど、ゼルビア戦の終了直後の消耗ぶりは激しいものがあった。<br />
　</p>

<p>　後半３２分に獲得したＰＫによる値千金の決勝ゴールを守り切り、３分間のロスタイムの末に試合終了を告げるホイッスルが鳴り響いた直後だった。ベンチのスタッフやサブの選手と握手をかわした三浦監督は、おもむろに一番右側の監督席に腰を落としてしまう。<br />
　試合が終わったばかりのピッチをぼう然と見つめる姿は、ほとんど敗戦チームの将のそれだった。思い出したように、監督用に用意してあったペットボトルの水をのどに流し込む。<br />
　ゼルビアのオズワルド・アルディレス監督や審判団との握手を終えると、再びベンチに座り込んでしばし動けない。テレビ局からインタビューを促されてようやく立ち上がり、終了後には自軍の選手たちと入れ替わるようにサポーターが陣取るゴール裏へ。「ヤストシ」コールにようやく表情を崩した。</p>

<p><br />
　アウェーチームの監督から先に出席する公式会見。仮設メディアセンター２階の記者控え室に隣接する記者会見室に姿を現した三浦監督の目は心なしか真っ赤に染まり、グレーのスーツに覆われた淡いブルーのシャツは、汗を吸い込んだ部分の色がくっきりと濃くなっていた。<br />
「自分たちらしさを出すことが、非常に難しくなった試合でした」<br />
　案の定と言っては失礼かもしれないが、守備に回る時間帯が多かった９０分間を振り返る声はかれ果てていた。そして、劣勢を強いられながらもワンチャンスを待ち、強引にもぎ取った勝ち点３の価値を誰よりも分かっているからこそ、終了直後の指揮官は半ば放心状態に陥っていたのだ。<br />
「我々にもう一度、シーズンを戦っていく勇気を与えてくれたと思っています」</p>

<p><br />
　突如として飛び出した「勇気」の二文字。試合後の異様なまでの消耗ぶりと相まり、今シーズンのギラヴァンツをうらなうキーワードにも聞こえたからこそ、三浦監督に真意を訊いてみた。　<br />
「この内容でもし町田が勝つという結果であると、我々はふたつの勝利を失ったことになった。それは内容と結果です。今日の我々は明らかに内容で町田に劣ったという中で、結果として勝ち点３という勝利を獲れた。３日前の千葉戦は内容では勝てたけれど、勝ち点を獲れなかった。サッカーの難しさという中で、ひとつの勝利、内容を伴わない勝利を取れたことが、次に進むという上で我々に勇気を与えてくれる。私は『勝って自信をつける』という言葉をあまり使わないけれど、勝つことによって、ひと回りもふた回りも成長していく可能性が出てくると思っています」</p>

<p><br />
　敵地で４月２７日に行われたザスパ草津との第１０節から、フォーメーションをそれまでの中盤をダイヤモンドの形にした４‐４‐２から４‐３‐３へと大胆に変更した。<br />
　開幕からの３試合を１分け２敗と出遅れ、４連勝で巻き返しの体勢に入ったのもつかの間、ＦＣ岐阜、モンテディオ山形にともに０対１で連敗を喫した矢先だった。負け方の「悪さ」を問題視した指揮官は、選手たちの意識をより攻撃に、よりゴールに向けさせるべくメスを入れた。<br />
　ゼルビア戦を終え、帰りの車に乗り込む三浦監督にあらためて３トップの意図を聞いた。<br />
「パスを出して、どのスペースにスプリントするかという点で最初の立ち位置が違うだけで、発想は同じだよ。サッカーを変えようとしているとか、そういうのじゃないからね」</p>

<p><br />
　ボールを大事に扱う、という基本コンセプトは変わらない。２０１０年シーズンにはわずか１勝、勝ち点１５しかあげられなかった弱小軍団が、昨シーズンは三浦新監督の下、一時はＪ１昇格争いに加わるまでに急成長を遂げた。迎えた今シーズン。必然的にマークはきつくなり、研究もされる。<br />
「去年をスタンダードとして、それを超えるために大胆な戦いをしていかなければならない」<br />
　さらに進化するために。キャンプ中から温められてきた３トップを、選手たちも違和感なく受け入れている。ドリブル突破から獲得したＰＫを自ら決めたＦＷ池元友樹は言う。<br />
「フォーメーションが変わっただけで、やろうとしているサッカー自体には特別変わったところはない。自分たちがよりいいサッカーをするために変化をつけた、と思っているので」</p>

<p><br />
　三浦監督は「攻める時にはどのチームも３‐４‐３になっている」という持論を持つ。前線と中盤の６人に加えて、左右どちらかのサイドバックも攻撃に絡んでいく、という発想だ。<br />
　４‐４‐２で戦っていた時のギラヴァンツも然り。ならば最初から前線を３枚にして、相手ゴールへの距離を短くすることで、昨シーズンを超える脅威を対戦相手に与えればいい。<br />
　左には昨シーズンに１０ゴールをマークしたチーム得点王で、今シーズンは柏レイソルから完全移籍を果たした２７歳の池元。右には横浜Ｆ・マリノスから期限付き移籍で加入した２１歳の端戸仁。そして真ん中には広島皆実高から加入して１年目で、すでにチームトップの５ゴールを叩き出している１８歳の渡大生。タレントが充実したこともフォーメーション変更を後押しした。<br />
　</p>

<p>　もっとも、三浦監督は「ウチの場合はちょっと違う」と既存の３トップとは一線を画す。<br />
　中央にポストプレーに長けた長身のターゲットマンを置くのが３トップのセオリーだが、渡のサイズは１７６ｃｍ、６２ｋｇ。スピードと変幻自在のドリブルが武器という特徴は、トリオを組む池元と端戸にも共通している。ギラヴァンツ版３トップの狙いを池元はこう説明する。<br />
「それ（ターゲットマン）を使わなくても、後方からしっかりとリズムとテンポのあるボール回しができれば自分たちのところにもいいボールが入ってくるので、自分たちの特徴が出やすい形だとは思っています。前線の３人だけの動きじゃなくて、３人の後ろの選手だったり、サイドバックとの絡みというのをもっとやっていかなきゃいけないし、その意味ではまだまだですね」</p>

<p><br />
　４‐３‐３に変更した初陣は２対０と結果と内容とを伴う白星をザスパから奪い、前節のジェフユナイテッド千葉戦は及第点を与えられる内容を演じながら１対２と逆転負けを喫した。<br />
　三浦監督は「久々にいい負け方をした」とジェフとの９０分間を総括し、４２試合のうち約４分の１を終えた長丁場のシーズンをにらみながら「いい負け方だと周囲に認めてもらうには次の試合をしっかりと戦うことが大事になる」と中２日で迎えるゼルビア戦の意義を説いている。<br />
　果たして、敵地に乗り込んだゼルビア戦はキックオフから間もないうちに、指揮官をして「難しくなる」と苦戦を覚悟させたという。雨でスリッピーになったピッチ。過密日程と移動による蓄積疲労。条件は同じでも、ゼルビアが得意とするパスワークは三浦監督を畏怖させるに十分だった。</p>

<p>　<br />
　指揮官は前半の途中から「辛抱」を選手に伝え、カウンター狙いの展開にシフトしている。<br />
「町田のパスは精度やリズム、テンポが出ていたし、ウチの最終ラインの弱い部分に勇気を持って、意図的につけてくるパスも多かった。そこでうっかり食いついてしまうと町田にチャンスを与えてしまい、ゴールへかなりのスピードで向かわれてしまう。実際、そういうシーンが何度かあった。ボールを奪って、我々のリズムとテンポで試合を進めることができない中で我々の運動量、動く位置、動く距離を見たら、今日の試合は難しくなるだろうと。我々は辛抱して、決して食いつかないディフェンスをする中で、こういう試合展開になってしまった。方向としては町田は間違いなくしっかりとしたサッカーを構築しているし、これからは怖いと感じている」</p>

<p><br />
　敵将アルディレス監督への敬意を表しながら、理想とするサッカーをかなぐり捨ててでも結果を追い求めた９０分間だったことを三浦監督は会見の席で自ら打ち明けた。<br />
　監督経験のない指揮官と縁もゆかりもない北九州の地を、２０１０年９月に上梓された三浦監督の初の著書『三浦兄弟』が結びつけてから２シーズン目。同著を読んだギラヴァンツの横手敏夫社長を一目惚れさせたサッカーへの情熱、厳しさ、誠実さ、論理力、そしてマネジメント力が奏功して、３トップへの変更を触媒としながら、チーム内には再びエネルギーが宿りつつある。<br />
　だからこそ、三浦監督は公式の場であえて「勇気」という言葉を口にしたのだろう。<br />
「この試合でいい運がきた、ツキがあると受け止めて、次への準備に臨みたいと思います」</p>

<p><br />
　勝ち点５６を掲げて臨んだ昨シーズンは、２試合を残して目標をクリア。最終的に１６勝１０分け１２敗と勝ち点を５８にまで伸ばして、前年の最下位から８位に大きく順位を上げた。<br />
　同じ勝ち点５８で並んだ７位の京都サンガと６位のジェフには得失点差で後塵を拝し、５位の東京ヴェルディにも勝ち点でわずかに１及ばない大躍進ぶりに周囲の期待が高まってくる中で、三浦監督は３年契約の２年目となる今シーズンの目標として「勝ち点８２」を設定している。<br />
　単純計算で昨シーズンの成績に８勝分を上乗せする数字。試合数が４つ増えたとはいえ、昨シーズンのＪ２を制したＦＣ東京の７７を上回る目標には三浦監督が抱く確固たる手応えと、より高いハードルを与えることで若手の潜在能力を引き出す狙いとが込められているのだろう。</p>

<p><br />
　今シーズンからはＪ２の１位と２位の２つのクラブが自動的にＪ１に昇格し、３位から６位までの４チームがＪ１昇格プレーオフを争う新たなシステムが採用されている。<br />
「目の前のことばかりで、今のこの状況ではなかなか目標を語れなくなっちゃったけどね」<br />
　苦笑いする三浦監督の視線は最低でも６位以内に入り、Ｊ１切符を獲得する夢の成就へと向けられている。そのターニングポイントとなるかもしれない泥臭い勝利で再び白星を先行させ、首位の湘南ベルマーレと勝ち点７差の１１位に浮上した指揮官は自らに言い聞かせるように力を込めた。<br />
「間違ったらいけないのは、これですべてがよかったわけでは決してないこと」<br />
　現在のペースでは勝ち点は６７どまり。弟のＦＷカズが所属する横浜ＦＣをホームに迎える６日の第１３節から、三浦監督に率いられるギラヴァンツはギアをさらに上げて追撃体勢に入る。</p>

<p><br />
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    <title>指揮官の力に。松本山雅ＧＫ野澤洋輔が誓う恩返しと成長　　by  藤江直人</title>
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    <published>2012-04-29T17:12:40Z</published>
    <updated>2012-04-30T07:41:54Z</updated>

    <summary> ☆☆☆論スポ第１０号の購入はこちらをクリックしてください！☆☆☆ ■Ｊ２第１０...</summary>
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<p><br />
■Ｊ２第１０節<br />
ＦＣ町田ゼルビア［勝ち点７］　０‐１（前半０‐０）　松本山雅ＦＣ［勝ち点１３］<br />
［４月２７日午後７時４分キックオフ＠町田市立陸上競技場／観衆３８５９人］</p>

<p><br />
　今シーズンからＪ２に参入した松本山雅ＦＣのゴールマウスを守る１５年目のベテラン、野澤洋輔は自身の調子をはかる上で一風変わった「バロメーター」を持っている。<br />
<strong>野澤</strong>「ディフェンス陣とコミュニケーションを取って、僕が暇なのが一番いいかなと。僕が声を出して、人を動かして、その上で僕自身が暇な時が一番調子がいい証拠なのかなと思います」<br />
　Ｊ１のアルビレックス新潟からＪ２の湘南ベルマーレに完全移籍した、２００９年シーズンに行ったインタビュー取材で飛び出したユニークな自己分析は３２歳になった今も変わらない。<br />
　ともにＪＦＬからＪ２に参入してきたＦＣ町田ゼルビアとの９０分間を独自の哲学に則って振り返れば、３試合連続の完封で３連勝に貢献した野澤はまさに「絶好調」ということになる。</p>

<p><br />
　目立った場面は、開始３分のビッグセーブが最初で最後だった。相手の後方からのロングボールに対して目測を誤ったＤＦ飯尾和也が転倒してボールをそらし、ＦＷ北井佑季にフリーの状態で放たれたシュートを鮮やかに弾き返したシーン以外はほとんど出番が訪れなかった。<br />
<strong>野澤</strong>「ピンチらしいピンチはなかったですね。最初のピンチにしても誰かが止めなきゃならないところで、たまたま一番最後にいるのが僕だったけど、要所要所で体を張って止める、あるいは攻撃の芽を未然に摘むことができている。この３試合、思い切り崩されたこともないし、連携だったり準備の部分でいいディフェンスができていると思いますね。もちろん後ろだけじゃなく、前線の選手たちも頑張ってくれているのでこういう結果になっているんですけどね」</p>

<p><br />
　通算４チーム目となる松本山雅の一員となって４か月弱。わずかな時間でコミュニケーションを密にできる「ツール」となるのは、生まれつきと笑い飛ばすうひょうきんな性格だ。<br />
<strong>野澤</strong>「ひょうきんというか、お調子者というか。いじられるよりいじる方がアレですかね。いじり方と言っても、陰の方でちょこちょこ、ボソボソと言って周囲をそういう雰囲気にするとか」<br />
　ゴールキーパーとしては決して大柄ではない１８１ｃｍ、７５ｋｇのサイズを補って余りある存在感。清水エスパルス、アルビレックス、ベルマーレと渡り歩いてきた人生も「野澤節」ではこうなる。<br />
<strong>野澤</strong>「海が近くにないと寂しいわけですよ、僕としてはホントに。だから（松本では）山へキノコ狩りに行きます。栗も拾えるらしいから。湘南ではありえないことですからね(笑)」</p>

<p><br />
　人心を引きつけるキャラクターと試合出場から遠ざかっても練習に真摯に打ち込む姿勢、何よりもサポーターを誰よりも愛する姿が評価されて、ベルマーレからは残留を要請された。<br />
　昨シーズンの出場試合数はゼロ。それでも引き留められた事実が存在感の大きさを物語るが、あえて野澤は首をヨコに振った。１月１３日、昨シーズンまでベルマーレを率いていた反町康治氏からのラブコールを受けて、同氏が新監督に就任した松本山雅への完全移籍が決まった。<br />
　１１月には３３歳となる。そうした状況下で、ＪＦＬから参入したばかりで歴史も選手たちの経験値も浅い新興チームで、文字通りゼロからのスタートを切ることに何の不安もなかった。<br />
<strong>野澤</strong>「ソリさん（反町監督）への恩義を返したくてね。ベルマーレにも分かってもらえました」</p>

<p><br />
　反町監督と出会わなければ、野澤のサッカー人生もあり得なかったと言っていい。<br />
　１９９８年にエスパルスのユースからトップチームに昇格するも、Ｊ１通算で２４３試合に出場した当時の守護神・真田雅則（故人）の厚い壁の前に一度も出場機会を得られない。<br />
　２０００年に当時Ｊ２のアルビレックスに移籍するも、依然としてサブに甘んじていた野澤をレギュラーに大抜擢したのが、２００１年シーズンからアルビレックスを率いた反町監督だった。<br />
　以後の５シーズンで実に１７６試合に出場し、その間にＪ１昇格をかけた戦いにおける壮絶なプレッシャーと実際にＪ１のスピードやパワーを経験。反町氏がアルビレックスを離れた２００６年からは不遇の時間を味わったが、同氏がＪ２のベルマーレ監督に就任した２００９年１月に再び転機が訪れる。</p>

<p><br />
　環境を変えたいと望んでいた野澤のもとへ届いたのは、再び二人三脚を組みたいという恩師からのラブコール。２００９年はベルマーレで全５１試合にフル出場し、悲願のＪ１復帰を縁の下で支えた。<br />
<strong>野澤</strong>「ベルマーレに移った時も『力になってくれ』と言われましたけど、僕としては拾ってもらったという形だったので。だから、山雅に来た今の気持ちとはちょっと違うかな。やっぱりソリさんが覚悟を決めて、イバラの道になると分かった上で（監督就任を）決めたこのチームで一緒にやっていこうと。山雅というチームの、そして監督の力になれればと思ったんです」<br />
　Ｊ１を戦った２０１０年は椎間板ヘルニアを患った影響で出番が激減し、昨シーズンは西部洋平（現川崎フロンターレ）の後塵を拝したが、２人の間の固い師弟関係は揺るがなかった。</p>

<p>　<br />
　他にはＦＷ木島良輔しかチーム内にいない、１９７０年代生まれのベテランとして。ゴールマウスを守るという「本職」以外の部分で課せられた役目は分かっている。<br />
　後半３１分にＦＷ船山貴之のプロ初ゴールとなるＰＫで松本山雅が千金の先制点をもぎ取って以降、ゼルビアはさらにギアを上げて猛攻を仕掛けてきた。そうした状況下で幾度となく獲得した自陣からのフリーキック。野澤はキッカーに駆け寄って何やら耳打ちを繰り返した。<br />
<strong>野澤</strong>「どこそこを狙って蹴れとかね。最後の方は中へ蹴ろうとしていたところを、角の方へ蹴ってキープに入れという指示を出しました。結果、ポストのところで上手く時間を稼げた。そういう勝ち方や試合の締め方は大事だし、経験者として伝えていくところだと思うので」</p>

<p><br />
　試合に臨む心構えや準備においても、若手選手たちをアシストすることを忘れない。<br />
　前節にホームで１対０の完封勝利を収めたジェフユナイテッド千葉に対しては挑戦者として、ある意味で胸を借りる思いとともに臨めたが、ゼルビアが相手となると話は違ってくる。<br />
<strong>野澤</strong>「同じシーズンにＪ２に上がって、順位も同じくらいだったこともあって、初めて勝たなくてはいけない相手だった。その意味で最初はちょっと硬さもあったし、内容としてもボールが落ち着かないというか、蹴ってばかりのサッカーになってしまったけど、それでも試合をモノにできたところは（練習の）いい成果が出たんじゃないかな。今日勝ったことによって、前節でジェフに勝った意味も出てくる。こういう試合で勝ち方というのをどんどん覚えていけばいいと思います」</p>

<p><br />
　ゴールキーパーとしての「本職」の部分でも、特に後半は強さを増した雨でボールが滑ることを見越し、左右からのクロスに対してはキャッチングにこだわらずにパンチングで対応する。<br />
　後半４１分にあわや同点のシュートをヘディングでクリアしたＤＦ多々良敦斗のもとへ間髪入れずに駆け寄り、頭をポンポンと叩いて労をねぎらいながらチーム全体を鼓舞することも忘れなかった。<br />
　平日のナイター。しかも、天気はあいにくの雨。にもかかわらず約１０００人が敵地に駆けつけ、スローガンの『ＯＮＥ　ＳＯＵＬ』を連呼したサポーターへの感謝の思いも然り、だ。<br />
<strong>野澤</strong>「自分たちの力だけでなく、サポーターの後押しで足が動くこともあるので。やっぱり今日も来てくれた人たちのためにも、次はホームでいいところを見せたいと思いますよね」</p>

<p><br />
　もちろん、アルビレックスやベルマーレで積み重ねてきた経験を、流通経済大から加入して２年目のＧＫ白井裕人らをはじめとする伸び盛りの若手へ伝えるだけで終わせるつもりはない。<br />
「これからだよ、野澤」<br />
　アルビレックスでわずか２試合の出場に終わった２００８年シーズンの最中だった。ジェフと対戦した際に、相手チームのＧＫコーチを務めていた真田さんからかけられた言葉に何度励まされ、「ゴールキーパーは３０歳を超えてからが勝負」と奮い立たされてきたことか。<br />
　体のサイズがほぼ一緒だった真田さんは、残念ながら昨年９月に急逝した。野澤がその一挙手一投足を見てきた憧れかつ目標の存在だった故人は、エスパルス一筋で３４歳までプレーしている。<br />
　　</p>

<p>　３年前のインタビューでは、野澤は目前に控えた三十路への熱い思いを語っている。<br />
<strong>野澤</strong>「今までの自分よりも今現在の自分の方がいいプレーができると思っているし、この先になっても『今現在の自分がベスト』と思い続けたい。僕はゴールキーパーとしては体格的には恵まれていないかもしれないけど、それを上回れる何かを出し続けることができるように。いい選手と、いい大人になれればいいですね。遅咲きの黄金世代として頑張っていきます(笑)」<br />
　自問自答の末に弾き出された、生き残っていくための答えが「自分が暇な時が一番調子がいい」となる。Ａ代表を含めて年代別の代表に選出された経験はない。１９７９年のいわゆる「黄金世代」に生まれた男は、それでも雑草のたくましさを漂わせながらゆっくりと成長を続ける。</p>

<p><br />
　そして、新天地で迎えた１０戦目のゼルビア戦で早くも「暇な時間帯」を感じ始めた。１勝１分け５敗と黒星が大きく先行してからの３戦連続の完封勝利。試合後には真田さんの言葉をかみしめながら、膨らみつつある自分自身の成長とチーム全体の進歩への手応えに笑顔を弾ませている。<br />
<strong>野澤</strong>「全体的に試合を見られるようになった、余裕が出てきたかな。自分でも非常にいい状態にいると感じているし、まだまだ伸びるところがあると思うので、さらに磨いて、いい形でチームに還元したいですね。チームにとっては、いろいろなシチュエーション、緊張感、立場でゲームが続くけど、その中で寄せだったりコントロールだったりというものを一人ひとりがちょっとずつつかんできて、それらの積み重ねが大きなものになって試合で生きているんじゃないかと思います」</p>

<p><br />
　２００８年の北京五輪代表チームやベルマーレを指揮した時と同様に、チームの全員に責任感と自立心を持たせる狙いから、反町監督は松本山雅においてもキャプテンを固定していない。<br />
　ゼルビア戦では野澤が今シーズン３度目となるキャプテンマークを手渡された。<br />
<strong>野澤</strong>「３試合連続でやって３連勝している、ということですね。ベルマーレの時も、僕がキャプテンを務めた試合では１回くらいしか負けていないんだよね。次の試合は分からないけど(笑)」<br />
　恩師と組む３度目の二人三脚で復活を遂げた守護神の照準は、ホームに京都サンガを迎える第１１節を皮切りに、昨シーズン４位の徳島ヴォルティスの敵地に乗り込む第１２節、再びホームで古巣ベルマーレと対峙する第１３節と続く大型連休中の３連戦にしっかりと定められている。</p>

<p>　　<br />
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</p>]]>
        
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    <title>対戦国決定！ＦＷ岩渕真奈が誓うロンドンでの復活祭（２）　　by  藤江直人</title>
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    <published>2012-04-24T18:49:16Z</published>
    <updated>2012-04-24T19:15:22Z</updated>

    <summary> ☆☆☆論スポ第１０号の購入はこちらをクリックしてください！☆☆☆ （１）から続...</summary>
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        <![CDATA[<p></p>

<p><br />
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<p><br />
<u><strong>（１）から続く</strong></u></p>

<p><br />
　果たして、野田朱美監督のプラン通りにフル出場した９０分間でＦＷ岩渕真奈が放ったシュートは、後半ロスタイムにダメ押しとなる３点目を頭で叩き込んだＦＷ永里亜紗乃の７本に次ぐ６本。ＡＳエルフェン狭山ＦＣの果敢なプレスに手こずる中で、しっかりと流れを引き寄せた先制弾の他にも、１９９０年代に日本代表のエースとして活躍した指揮官を安心させるプレーが随所に顔をのぞかせた。<br />
「個人的にはもうちょっと仕掛けられる場面はあったと思いますし、岩渕本人にも『強引にいってもいいよ』とは言っていたんですけど。本調子の頃と比べると、そのところだけセーフティーにやっているかなという印象はありましたけど、ウラへ抜けていくところのタイミングや切れといったものはやっと戻ってきたかなと。完全復活かな、というのがありますね(笑)」<br />
　</p>

<p>　もっとも、岩渕本人は指揮官の「お墨付き」を素直には受け入れられないようだ。<br />
<strong>岩渕</strong>「決めるところで全部決めたら、完全復活と言ってもらえるように。去年からチームが成長したところと言ったら、崩しの場面まで持っていけている部分だと思うので、そこでいかに落ち着いて決めるかが今年の課題。そこはまだまだなので、もう練習あるのみです」<br />
　パスを回すチームのスタイルには不向きな、デコボコが目立つ劣悪なピッチはいっさい言い訳にしない。幾度となく決定機を演出してもらいながら、シュートがゴールの枠を外れ、あるいは相手ＧＫの正面に放った自分に納得ができない。副キャプテンとして２位に終わった昨シーズンの雪辱を期すからこそ、生みの苦しみをたっぷりと味わった９０分間を次節以降への糧とした。</p>

<p><br />
　リハビリの期間中にはなでしこジャパンが２６戦目にして初めてアメリカ女子代表に勝利したアルガルベカップがポルトガルで開催され、４月にはアメリカとブラジルを日本国内に迎えた。<br />
　ライバルとなるＦＷ勢のパフォーマンスが気にならなかった、と言えば嘘になる。<br />
<strong>岩渕</strong>「多少は焦りはあります。けど、焦ってもしょうがないという感じで。代表の試合に行っていない分、出遅れているので。そこはホントに覚悟しているけど、自分ができることをやってチャンスをつかめるのだったら、そこはしっかりとつかみたい。ウラに抜けるという部分では、ドリブルでいけるシーンも増えてきたと思うし、もうちょっと（試合中の）ダッシュの回数を増やしたりとか、そういうところでできることはあるので、まずはできることからやっていきたいと思います」</p>

<p>　<br />
　試合後に痛みがぶり返す、いわゆるリバウンドの類は幸いにも感じていないという。<br />
<strong>岩渕</strong>「（セーフティーにやっているところは）なくはないんですけど、でもやっぱりプレーする以上は、使ってもらっている以上はしっかりとやりたいですし、（セーフティーにプレーする）頻度というかレベルがだいぶ下がってきているのも事実。このまま何もなくいけばいいかな」<br />
　アルガルベカップで代表デビューを果たしたＩＮＡＣ神戸レオネッサの大物ルーキー、１８歳のＦＷ京川舞（常盤木学園高卒）はなでしこリーグの２試合で３ゴールをゲット。ベレーザの先輩・永里も３ゴールで並び、ロンドン五輪代表の１８枠入りをアピールしている。<br />
<strong>岩渕</strong>「（初ゴールで）少しは（アピールの）足しになったけど、私はホントにまだまだなので」</p>

<p><br />
　ひびが入っている状態だった右足小指の付け根の患部を固定している金属製のボルトに関しては、今シーズンの戦いを終えてオフになっても取り除く予定はないという。<br />
<strong>岩渕</strong>「香川選手もそうみたいですけど、（ボルトを抜かない）サッカー選手はすごく多いので。抜かないことで痛くなくなるはずだし、このままならここは一生折れないというポジティブな感じでやっています(笑)。左足もやらないように気をつける、というのが今の目標ですね」<br />
　日本代表のＦＷ香川真司も昨年１月のアジアカップで、岩渕とまったく同じ箇所を骨折。昨シーズンの後半を棒に振ったが、今シーズンは１３ゴールをマーク。ＭＶＰ級の復活劇で所属するドルトムントをブンデスリーガ連覇に導いたことも、１９歳の小さなストライカーを勇気づける。</p>

<p><br />
　なでしこジャパンとしての活動は、６月中旬のスウェーデン遠征まで予定されていない。佐々木則夫監督は今月中にメンバーを３６人前後の大枠で決め、週末に行われるなでしこリーグを視察しながら遠征メンバーを「１８＋４」の２２人前後まで絞り込む青写真を描く。<br />
　もちろんシーズンを戦い終えた海外組も加わるメンバー構成となるため、当落選上の選手たちにとっては所属チームでの一戦一戦がロンドンへのサバイバルをかけた舞台と化す。　<br />
　スウェーデン遠征では今年だけで３度目の対戦となるアメリカと１８日、くしくも五輪本番で同じグループとなったスウェーデンと２０日に「前哨戦」を行い、帰国後に代表メンバー１８人を決定。国立競技場で７月１１日に行われる壮行試合（対戦相手未定）に臨む予定だ。</p>

<p><br />
　アルガルベカップのデンマーク戦と国内でのブラジルとの親善試合でゴールを決め、佐々木監督をして「最も成長した」と言わしめたＦＷ菅澤優衣香（アルビレックス新潟レディース）は、今月１３日の練習中に左ひざ前十字じん帯を損傷。全治６か月の重症で無念のリタイアとなった。<br />
　しかし、京川や永里に加えて、なでしこリーグに昇格したスペランツァＦＣ大阪高槻に移籍し、心機一転、右ひざ前十字じん帯損傷からの完全復活を期す女子Ｗ杯優勝の立役者の一人、ＦＷ丸山桂里奈を含めて、なでしこジャパンの「ジョーカー」の座を争うライバルたちは多い。<br />
<strong>岩渕</strong>「オリンピックという目標があるんだったら、（スウェーデン遠征から）行かなきゃまずいですよね。そこへ行けなかったら、多分、（オリンピックへ）行けないも同然なので」</p>

<p><br />
　スウェーデン遠征までに組まれているなでしこリーグは残り７試合。前半戦の最後を締めくくる６月１０日には、国立競技場にＩＮＡＣ神戸レオネッサを迎える大一番が待っている。<br />
<strong>岩渕</strong>「優勝するためには引き分けてもダメだと思うし、ホントにひとつも落とせないと思っているので。どんな相手と戦おうと、ベレーザのサッカーをして勝ち切れるように。不安よりは楽しみの方が大きいですけど、湯郷もＩＮＡＣも昨シーズンはウチが負けている相手なので。いい準備をして臨みたいし、私もコンディションを上げて、しっかりと点を取れるようにならなきゃいけない」<br />
　５月２０日に行われる岡山湯郷Ｂｅｌｌｅ戦、同２７日の浦和レッズレディース戦、そしてＩＮＡＣ戦。自らが中心になって昨シーズンのリベンジを果たすことが、代表復帰にも繋がっていく。　</p>

<p><br />
　ロンドン五輪の組み合わせを見れば、グループＦを１位で突破しても準々決勝でアメリカもしくはフランスと、２位ならばイギリスもしくはブラジルと激突する可能性がある。<br />
　決して平坦な道のりではない金メダルロードにおいて佐々木監督に「ジョーカー」が必要だと思わせるには、ポリバレントを忘れさせるほどの衝撃を今後のリーグ戦で与えるしかない。<br />
<strong>岩渕</strong>「そこ（スウェーデン遠征）までがホントに勝負かなと思っているので。私にとって（代表は）目指さなきゃいけない場所。（けがで離れている間も）そこは変わっていません」<br />
　不退転の決意とともに浮かべた勝負師の表情が、狭山戦のマン・オブ・ザ・マッチで獲得した賞金１０万円の使い道を聞かれると、一瞬だけ十代の弾けんばかりの笑顔に様変わりした。<br />
<strong>岩渕</strong>「ベレーザのみんなと、夜ご飯を食べにいく約束をしたんです！」<br />
　</p>

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    <title>対戦国決定！ＦＷ岩渕真奈が誓うロンドンでの復活祭（１）　　by  藤江直人</title>
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    <published>2012-04-24T18:21:47Z</published>
    <updated>2012-04-24T23:14:39Z</updated>

    <summary> ☆☆☆論スポ第１０号の購入はこちらをクリックしてください！☆☆☆ 　なでしこジ...</summary>
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        <![CDATA[<p></p>

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<p><br />
　なでしこジャパンが昨夏の女子Ｗ杯に続いて「世界一」を目指すロンドン五輪の組み合わせ抽選会が２４日、決勝戦の試合会場となる聖地ウェンブリースタジアムで行われた。<br />
　女子サッカー競技は参加１２か国がグループＥからＧの３組に分かれて１次リーグを行い、各グループの２位までと３位の３か国のうち成績のいい２か国が決勝トーナメントに進む。<br />
　開催国イギリス、五輪３連覇を目指すアメリカとともにシードされていた日本はグループＦに配されていたが、抽選の結果、７月２５日にカナダ、同２８日にスウェーデン、同３１日に南アフリカ共和国と対戦することが決まった。日本が３位につけている最新のＦＩＦＡランキングでは、スウェーデンが５位、カナダが７位、五輪初出場の南アフリカ共和国が６５位となっている。</p>

<p><br />
　５年連続でバロンドールに輝いた絶対的ストライカー・マルタを擁し、２大会連続で銀メダルを獲得しているＦＩＦＡランキング４位のブラジルと同じグループにならなかったのは朗報だ。<br />
　その一方でスウェーデンとカナダはフィジカルの強さを前面に押し出すチームであり、謎のベールに包まれた南アフリカ共和国は一説では身体能力が非常に高い選手ぞろいとされている。<br />
　いずれも日本が不得手とするタイプの国であり、Ｗ杯女王としてマークされることも含めて、一筋縄にはいかない戦いが続くのは必至。ともあれ対戦相手が決まったことで、今後は必然的に日の丸を背負って戦う五輪代表メンバーの顔ぶれにファンの注目が集まることになる。<br />
　代表メンバーは女子Ｗ杯より３人少ない１８人。スウェーデン遠征から帰国後の６月下旬には発表される予定だが、１枠ないし２枠を残してほぼ決まっていると言っていいだろう。</p>

<p><br />
　女子Ｗ杯を制した中心メンバーである下記の１２人は、今後にけがなどの不慮のアクシデントがない限りは、２２日のなでしこリーグで「良性発作性頭位めまい症」からの復帰を果たした大黒柱のＭＦ澤穂希（ＩＮＡＣ神戸レオネッサ）を含めて順当に選ばれると見ていい。<br />
ＧＫ　海堀あゆみ（ＩＮＡＣ神戸レオネッサ）<br />
ＤＦ　近賀ゆかり（ＩＮＡＣ神戸レオネッサ）<br />
ＤＦ　岩清水梓（日テレ・ベレーザ）<br />
ＤＦ　熊谷紗希（フランクフルト）<br />
ＤＦ　鮫島彩（モンペリエ）<br />
ＭＦ　澤穂希<br />
ＭＦ　阪口夢穂（日テレ・ベレーザ）<br />
ＭＦ　宮間あや（岡山湯郷Ｂｅｌｌｅ）<br />
ＦＷ　永里優季（ポツダム）<br />
ＦＷ　安藤梢（デュイスブルク）<br />
ＦＷ　大野忍（ＩＮＡＣ神戸レオネッサ）<br />
ＦＷ　川澄奈穂美（ＩＮＡＣ神戸レオネッサ）</p>

<p><br />
　２人体制となるＧＫのもう一人は福元美穂（岡山湯郷Ｂｅｌｌｅ）がほぼ当確だ。<br />
　女子Ｗ杯よりも登録枠が少ない分、複数のポジションでプレーができるポリバレントが求められることから、センターバックとサイドバックができる矢野喬子（浦和レッズレディース）、センターバックと左サイドバック、そしてボランチもこなせる宇津木瑠美（モンペリエ）、センターバックとボランチがＯＫな田中明日菜（ＩＮＡＣ神戸レオネッサ）も続くだろう。この時点ですでに１６人を数える。<br />
　残る枠には、サイドバックのバックアップが不足している点を考慮すれば左右両方ができる有吉佐織（日テレ・ベレーザ）が浮上してくるし、本職のＦＷに加えてサイドＭＦとボランチでプレーの幅を広げている高瀬愛実（ＩＮＡＣ神戸レオネッサ）の存在も見逃せない。</p>

<p><br />
　もちろんポリバレントも重要となるが、強豪相手に風穴を開けられる、ある部分で突出した個の強さも必ず必要になる場面が訪れる。特に１次リーグで対戦する３か国に代表されるような、体格とフィジカルで優位に立とうとするチームは、総じて日本人特有のアジリティーに脆い面をのぞかせる。<br />
　スピードと切れ味鋭いドリブルという武器を搭載した「ジョーカー」をなでしこジャパンに加える青写真を描こうとすれば、これまでに列挙した選手以外の候補がおのずと浮上してくる。<br />
　ピッチへの帰還を遂げた澤が涙した同じ日に、２００８年に開催されたＵ‐１７女子Ｗ杯で世界を魅了し、ベスト８敗退チームからは異例となる大会ＭＶＰに輝いた１メートル５５、５２キロの小さなストライカーも、復活を告げる今シーズン初ゴールを決めていた。</p>

<p><br />
　東京ヴェルディとのアベック開催となった関係で、午前１１時から駒沢オリンピック公園陸上競技場で始まった日テレ・ベレーザとＡＳエルフェン狭山ＦＣのなでしこリーグ第２節。キックオフ前の下馬評を覆し、両チームともに無得点のまま前半を終えようとしていた。<br />
　ベンチで戦況を見つめていたベレーザの野田朱美監督が、焦れたように「ここで１点欲しいんだよね」と呟いた直後だったという。自陣からＭＦ小林弥生が放り込んだロングボールにあうんの呼吸で反応したＦＷ岩渕真奈が、高目にラインを敷いていた狭山のＤＦ陣の背後を突いた。<br />
　慌ててマークにきた相手のプレッシャーに体勢を崩され、最後は倒されながらも、右足は的確にボールの芯をとらえる。均衡を破る一撃が鮮やかにゴール左隅へ吸い込まれていった。</p>

<p><br />
　３対０の勝利の呼び水となるゴールでマン・オブ・ザ・マッチも獲得。賞金１０万円をゲットしたヒロインは、トレードマークの大きな瞳を輝かせながらゴールと試合を振り返る。　<br />
<strong>岩渕</strong>「相手のディフェンスランも高かったので。弥生さんからいいボールがきて、しっかりと決めることができたのはよかったけど、レッズが（開幕戦で）５対０で勝っている相手に自分たちは３対０なのでまだまだかな。先週は点を取れなかった中で今回は取れたのはよかったけど、あと３点くらい取れる場面があったので。決められるようにしっかりと練習したいです」<br />
　つい数週間前までは右足にしばしば激痛を覚え、開幕へ向けた練習も途中で切り上げざるを得なかった選手とは思えないほど声のトーンは高く、笑顔には充実感が漂い始めていた。<br />
　</p>

<p>　年が明けて間もない１月１３日に、１年ほど前から悩まされていた右足の痛みを取り除くためにボルトを埋め込む手術を受けた。小指の付け根に覚えていた違和感は、ドリブル突破から相手のファウルを誘発し、宮間の勝ち越しフリーキックに結びつけたニュージーランドとの１次リーグ初戦を含めて、５試合で途中出場した女子Ｗ杯の激闘などを経て疲労骨折に変わっていた。<br />
　ロンドン五輪を万全な状態で迎えるための決断だったとはいえ、完治までの過程で必ず伴う患部の痛みは、野田監督をして「いたたまれない気持ちになった」と言わしめるほどだった。<br />
「ボルトが馴染まないとか、中でちょっと動いたりすると、後でドカンと（反動が）くるみたいで。事前に（医者から）言われていたことですけど、それを乗り越える時が本当に辛そうでした」</p>

<p><br />
　３月１８日に１９歳になったばかりの岩渕だが、ベレーザでのキャリアはすでに６シーズン目に入っている。狭山戦の後半４３分に貴重な追加点となる初ゴールを決めた１７歳のＭＦ中里優をはじめ、経験の浅い十代の選手たちが増えてきた中で新たな役割も与えられた。<br />
　キャプテンの岩清水を支える副キャプテンへの就任。野田監督がその理由を明かす。<br />
「チームをまとめる側になるということと、ちょうど年齢的にも上の選手と若い選手の間に入ってもらって、橋渡し的な存在になってほしいと思ってお願いしたんですけどね」<br />
　岩渕本人も望むところだったが、開幕へ向けて仕上がっていくチームと時間を共有できなかったことは苦痛だった。加えて、３月下旬の部分合流後は時として患部の痛みにも襲われる。</p>

<p><br />
　野田監督によれば、紅白戦を観戦しながらのリハビリを岩渕が拒んだこともあったという。<br />
「ああ見えてすごく責任感が強い子なので、体との戦いというよりは、シーズンの頭から全体練習にまったく参加できないジレンマとの、心との戦いだったのでしょうね。チームの一員という部分を大事にする子なので、見ていて本当に可哀想になるくらい苦労していました」<br />
　必死の思いで間に合わせ、先発メンバーに名前を連ねた１５日の福岡Ｊ・アンクラスとの開幕戦。当初の前半４５分限定の出場プランは、「ゴールを決めるまで出たい」という岩渕本人のたっての願いで後半２９分まで伸びた。結局は無得点に終わったが、野田監督はその直後から完全復活を計るバロメータとして、狭山との第２戦では岩渕を先発フル出場させることを決めていた。</p>

<p><br />
<u><strong>（２）へ続く</strong></u></p>

<p><br />
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    <title>宿敵レッズの個の強さを封じ込めたアルディージャの一体感　　by  藤江直人</title>
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    <published>2012-04-23T07:13:29Z</published>
    <updated>2012-04-23T07:27:32Z</updated>

    <summary> ☆☆☆論スポ第１０号の購入はこちらをクリックしてください！☆☆☆ ■Ｊ１第７節...</summary>
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        <![CDATA[<p></p>

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<p><br />
■Ｊ１第７節<br />
大宮アルディージャ［勝ち点８］　２‐０（前半２‐０）　浦和レッズ［勝ち点１３］<br />
［４月２１日午後６時３３分キックオフ＠ＮＡＣＫ５スタジアム大宮／観衆１万２７０９人］</p>

<p><br />
　獲得したコーナーキックの数で、ここまで大差がつくゲームも珍しいだろう。<br />
　ホームの大宮アルディージャがわずか３本だったのに対し、敵地に乗り込んできた浦和レッズは前後半の合計で実に１５本を獲得。データだけを見ればそれだけレッズが波状攻撃を仕掛け、アルディージャが何とかコーナーキックに逃れ続けた図式が浮かび上がってくる。<br />
　しかし、実際にピッチの上でレッズの攻撃陣と対峙していた選手たちの感覚はやや異なる。<br />
「中でやられなければ、ぞれでいいと思っていました」<br />
　ボランチの青木拓矢のコメントを聞けば、コーナーキックを与えるのは想定内、肉を切らせて骨を断つ、なるゲームプランをアルディージャが描いていたことが分かる。</p>

<p><br />
　レッズの選手たちのサイズを見れば、理由は一目瞭然だ。ワントップを張るポポの身長は１メートル６８。ＭＦ陣にも１メートル８０台の選手が皆無となれば、ケアすべきなのは１メートル８４の永田充、１メートル８２の日本代表ＤＦ槙野智章のＤＦコンビくらいとなる。<br />
　だからこそ、個々の能力が高いレッズの攻撃陣に翻弄されて中央を崩される状況だけは避けたい。特に２点のビハインドを背負った後半からはＭＦ柏木陽介をボランチに下げてパスの出しどころを増やし、代わりにドリブラーの原口元気を前線に投入。圧力をさらに強めてきた。<br />
「あの状況で僕たちが前に出たら、スカッとかわされる。それだけは避けたかった」<br />
　青木の言葉通り、アルディージャは堅いブロックを自陣に形成することで対抗した。</p>

<p><br />
　決して望んだ戦い方ではない。２０１０年の途中から指揮を執る鈴木淳監督が描いてきた、ピッチを幅広く使い、ボールポゼッションを高めながら主導権を握り続けるスタイルとも完全に相反する。<br />
　後半は前線にＦＷラファエルを残し、トップ下の東慶悟や左サイドを主戦場とするＭＦ曺永哲の日韓のＵ‐２３代表コンビまでが自陣に戻り、守備に奮闘する時間帯が続いた。<br />
　それでも、川崎フロンターレから完全移籍で加入した埼玉県出身のＤＦ菊地光将は「しっかりと真ん中を守ってさえいれば、そこまでやられる感じはしなかった」と胸を張る。<br />
　右からＭＦマルシオ・リシャルデス、左からは柏木に際どいコーナーを放り込まれ続けたが、最後の一線だけは譲らない。ＧＫ北野貴之のスーパーセーブは後半だけで実に６度を数えた。</p>

<p><br />
　Ｊ１に昇格して８シーズン目だが、過去にひとケタ順位は一度もない。シーズン終盤までＪ１残留争いを強いられてきた負の歴史に終止符を打つべく、このオフに積極的な補強を行った。<br />
　攻撃陣には曺永哲がアルビレックス新潟、１メートル８７、７８キロの大型ＦＷ長谷川悠がモンテディオ山形から加入。最終ラインには菊地と、左足からの多彩かつ精度の高いキックでチャンスを演出する左サイドバック下平匠がガンバ大阪から完全移籍。左利きのボランチ・カルリーニョスは、昨シーズンまでブラジルの名門サンパウロでレギュラーとして活躍していた。<br />
　目標とする勝ち点には「最低でも５０」が掲げられた。昨シーズンの成績に照らし合わせれば６位タイに相当する数字であることが、寄せられた期待の大きさを何よりも物語っている。</p>

<p><br />
　しかし、現実は青写真通りには進まない。前節までの６試合の結果は１勝２分け３敗。攻撃力を強化しながら得点は５にとどまり、全試合で喫した失点は１１にまで達していた。<br />
　噛み合わない攻守。鈴木監督によれば、チームは負のスパイラルに陥りかけていたという。<br />
「今までは攻撃の方に大きな重心を置いているというか、攻めにいく人数が多すぎるゆえに、悪い形でボールを失って相手のカウンターを食らう。そこで失点すると取り返そうとするあまり、さらに前がかりに攻めていって２点目を失う。そういうパターンが非常に多かった」<br />
　迎えたさいたまダービー。開幕戦こそ落としたものの、ミハイロ・ペトロヴィッチ新監督の指揮のもと、レッズは第２節以降で４勝１分けと右肩上がりの軌跡を描いて２位につけていた。</p>

<p><br />
　その間の得点は９、失点は３と攻守のバランスも整い始め、何よりもカウンターが一戦ごとに鋭さを増していた。前節までと同じことを繰り返していては、大量失点を招きかねない。<br />
　大一番を前にして、鈴木監督は就任以来の戦い方を一時的に封印することを決断する。<br />
「前に人数を割かず、サイドチェンジを繰り返しながら突破口を開いていく戦いをした」<br />
　ペトロヴィッチ監督が昨シーズンまで率いたサンフレッチェ広島でもお馴染みだった、３バックで組む最終ラインの右、アルディージャから見れば左側にスペースが生じるというスカウティングも戦術変更を後押しする。しかも、今シーズンからは左サイドに曺永哲という強力な武器を得た。ストロングポイントを生かすためにも、我慢というキーワードを浸透させる必要があった。</p>

<p>　　<br />
　さいたまダービーを３日後に控えた１８日。埼玉・志木市内にある練習場の駐車場で、アルディージャの選手、鈴木監督以下の首脳陣が一堂に介してのバーベキューが開催された。<br />
　鈴木茂社長や岡本武行ＧＭも加わった光景は、さながらレッズとのさいたまダービーへ向けた決起集会の雰囲気を漂わせていた。アルビレックスから２０１０年に加入して以来、リーグ戦の全試合でゴールマウスを守ってきたチームリーダーの北野は宴の意義をこう説く。<br />
「やるべきことをピッチの上で表現するためには、コミュニケーションが大事ということです」<br />
　２００５年のＪ１初年度から在籍し、長くキャプテンも務めたＭＦ藤本主税ら主力の多くがチームを去った今シーズン。アルディージャには一体感を高める「きっかけ」が必要だった。</p>

<p><br />
　大分トリニータから２０１０年に加入し、空中戦における絶対的な強さを武器にセンターバックのレギュラーとして活躍。しかしながら、層が厚くなった今シーズンは前節まで出場わずか１試合、それも名古屋グランパス戦の１分間にとどまっていた深谷友基はこんな現状を打ち明ける。<br />
「最近は（試合中に）バラバラになってしまうことが多かったので」<br />
　ホームで３試合を戦って未勝利が続く上に、敵地での３戦を含めた全６試合でやらずもがなの失点を献上している。攻撃陣と守備陣の間で考え方に乖離が生じ始めた状況で、さいたまダービーが近づいてくる。Ｊ２時代を含めて通算で６勝４分け８敗の星を残しているものの、ホームのＮＡＣＫ５スタジアム大宮においては３分け６敗とひとつの勝利すら手にしていない。</p>

<p><br />
　突きつけられた現実が、今何をすべきなのかをアルディージャの選手たちに悟らせたのだろう。<br />
　自陣に形成されたブロックがいかに難攻不落だったかは、両サイドの高い位置をえぐりながらクロスを上げられずにボールを戻すレッズが漂わせた手詰まり感が何よりも如実に物語る。<br />
　開始８分で生まれた先制弾は、左サイドに生じたスペースに走り込んだ曺永哲がＭＦ渡邉大剛からのパスを受け、マーカーのＭＦ阿部勇樹を巧みにかわしてから右足でネットを揺らした。<br />
　前半２７分には下平と曺永哲のコンビで再び左サイドを陥れ、曺永哲からの正確なクロスをファーサイドに飛び込んできたラファエルが豪快に頭で決めた。左サイドを執拗に突く。全員が意識を共有した結果が、その後も幾度となく左サイドの綻びを突いたカウンターを生み出した。</p>

<p><br />
　レッズは後半２８分にポポに代えて、１メートル８５の長身ＦＷデスポトビッチを投入。いよいよもって高さを前面に押し出してきた同３７分に、ピッチに送り出されたのが深谷だった。<br />
　代わりにベンチに下がるように命じられたのはトップ下の東。深谷はそのまま最終ラインに入って中央の菊地、左のＵ‐２３韓国代表ＤＦ金英權とともに即席の３バックを形成する。<br />
「あの場面で自分が入った意味は、空中戦を抑えてしっかりと守れということ」<br />
　デスポトビッチ封じを確実に遂行した深谷は「久しぶりに一体感のある、やりたいことがはっきりとしたサッカーができた。しっかりと守ってカウンターという、いつもとは違うやり方をいいイメージでできたことは大きい」と約１か月ぶりの白星がもたらす価値に声を弾ませた。</p>

<p><br />
　４分が表示された後半のロスタイムを含めて、守って、守って、守り抜いて、前線に一人でとどまるラファエルにロングボールを蹴るアルディージャの無骨な戦い方は変わらない。<br />
　左右の下平、坪内秀介が最終ラインに吸収されて実質的な５バックとなっても、泥臭くてもいいから守るという共通意識はますます高まる。プラン通りの９０分間を象徴するように、１５本目のコーナーキックを右からマルシオが蹴り、こぼれ球に対してオーバーヘッドキックの大技を試みた槙野の右足が空を切った直後に試合終了を告げるホイッスルが夜空に鳴り響いた。<br />
　レッズの猛攻を浴び続ける中で、逆にリズムが出てきていたのだろう。青木は「粘り強く守り切れる感じになっていた」とチーム一丸となって手にした完封劇に笑顔を弾ませた。</p>

<p><br />
　新加入の選手がポジションを奪えば、必然的に昨シーズンまでそのポジションでプレーしていた選手が活躍の場を奪われることになる。チーム内の競争原理で言えば当然のことだが、勝利という結果を伴わなければ逆に不満の火種がくすぶる状況を生み出しかねない。<br />
　理想としてきたスタイルを一時的に封印してまで、チーム内に芽生えかけていたギクシャク感を拭い去る「きっかけ」を求めた一戦。鈴木監督の決断は、チーム全体に共通意識として伝わった。１８日に開催したバーベキュー大会も、少なからず功を奏したと言ってもいい。<br />
　試合後の記者会見。「もっと攻撃に人数をかけて、それで点が取れればいいんですけど」と苦笑いした指揮官は、それでも「失点ゼロで抑えられたことは収穫になる」と続けた。</p>

<p><br />
　今シーズン４試合目にしてのホーム初白星。７試合目にしての初完封。そして、ホームで通算すること１０試合目にしてのさいたまダービー初白星。勢いがつかないはずがない。<br />
「ウチはいつも勝った次の試合がよくないので。いい準備をして臨みたいですね」<br />
　敵地で行われた第２節でアルビレックスから逆転勝利を奪った翌節に、ベガルタ仙台に１対４と大敗を喫した教訓もあるのか。気を引き締める深谷はしかし、表情に充実感を漂わせる。<br />
　シーズンが深まる秋の陣で、目標とする勝ち点５０に近づくとともに「今年のアルディージャは違うな」と思わせる状況が生まれているとしたら。その「きっかけ」として、新旧の日本代表８人を擁するレッズの猛攻を一体感で封じ込めた「４月２１日」が必ず刻まれているはずだ。</p>

<p>　<br />
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    <title>難攻不落のゾーンディフェンスが導く栃木ＳＣの捲土重来　　by  藤江直人</title>
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    <published>2012-04-17T16:15:40Z</published>
    <updated>2012-04-17T17:19:33Z</updated>

    <summary> ☆☆☆論スポ第１０号の購入はこちらをクリックしてください！☆☆☆ ■Ｊ２第８節...</summary>
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<p><br />
■Ｊ２第８節<br />
ＦＣ町田ゼルビア［勝ち点６］　０‐３（前半０‐０）　栃木ＳＣ［勝ち点１４］<br />
［４月１５日午後１時４分キックオフ＠町田市立陸上競技場／観衆３６８２人］</p>

<p><br />
　ルーキーながらＦＣ町田ゼルビアの攻撃の組み立て役を担うボランチの庄司悦大が、最終ラインからパスを受けて振り向く。前線の状況をうかがい、再びボールを後方へ戻す。<br />
　何かを躊躇しているかのように、専修大学を昨シーズンの関東大学リーグ１部と全日本大学選手権の二冠に導き、両大会でＭＶＰを獲得した庄司はリプレーを見ているかのごとく同じ選択を繰り返す。<br />
「自分のもっとタテパスを入れるようにならないと。出せるタイミングは何度もあったんですけど、出したとしても相手に取り囲まれてしまうと思った。それは避けようと」<br />
　前線へ出さない、のではなく出せない。ゼルビアの最終ラインと庄司とで形成される三角形の間で淡々とパスが回される光景こそが、栃木ＳＣの術中にどっぷりとはまっている証だった。</p>

<p><br />
　ゼルビアの守屋実代表が９０分間を振り返った言葉が、すべてと言っていいだろう。<br />
「外のスペースでつなぐだけで、中を使わせてもらえない。何もさせてもらえなかった」<br />
　４バックで形成される栃木ＳＣの最終ラインと４人のＭＦが、フラットに並んで約１０メートルの間隔をキープ。さらにボールサイドに横ずれを繰り返しながら、ピッチの上に常にゾーンを形成する。<br />
　このゾーンを突破しないことには、ゼルビアに決定機は生まれない。しかし、常に栃木ＳＣが数的優位を作り出している状況では、リスクを冒しようにもそのきっかけすらつかめない。<br />
　グラウンダーのパスを出すスペースがない。浮き球のパスは必ず栃木ＳＣの誰かに引っかかる。ガラ空きの逆サイドを突こうにも、相手の寄せが速くてサイドチェンジもままならない。</p>

<p><br />
　栃木ＳＣが絶対の武器とするゾーンディフェンス。ゼルビアの選手たちを意のままに操っている感すらあったのだろう。守備から主導権を握り続けた９０分間に導かれた圧勝劇だった。<br />
「後ろで回される分には、まったく怖くない。むしろ回させてあげている、という感じで僕たちはディフェンスしていたので。相手が焦れば後はロングボールになるので、僕たちがしっかりとボールサイドに入ることによってケアできた。最近はこの戦い方が上手くいっている」<br />
　右サイドバックの山形辰徳が声を弾ませれば、後半５分に均衡を破る先制点を決め、５分後にはＭＦ小野寺達也のプロ初ゴールをアシストしたＭＦ高木和正も「いい守備からいい攻撃、というのが栃木のサッカー。ゾーンでしっかりとボールを奪うことができた」と笑顔で続いた。</p>

<p><br />
　２００９年シーズンから栃木ＳＣの指揮を執っている５１歳の松田浩監督は、日本サッカー界において並ぶ者のいないゾーンディフェンスの使い手として名を馳せている。<br />
　衝撃的とも言える薫陶を受けたのは、現役時代の晩年にプレーしたサンフレッチェ広島を率いていたスチュワート・バクスター監督の戦術だった。それにヨーロッパの最新のトレンドを考察しながら自分なりにアレンジ。完成の域に近づけた結果として、９月以降こそ失速して１０位に終わったものの、昨シーズンは夏場までＪ１への昇格争いに加わるまでに栃木ＳＣを躍進させた。<br />
　２００２年７月にヴィッセル神戸で初めて監督に就いて１２年目。アビスパ福岡を率いた時期を含めて「大して難しいことをやっているわけではないんですけどね」と松田監督は謙遜する。</p>

<p><br />
　もっとも、このオフから開幕直後までのチーム編成の経緯を見れば、松田監督が栃木ＳＣに伝授したゾーンディフェンスが熟成され、チームの普遍的な拠りどころとなっていることが分かる。　<br />
　Ｊ２を制したＦＣ東京に１勝１分けの星を残した原動力になった昨シーズンの堅守から、大久保裕樹（現徳島ヴォルティス）と渡部博文（現柏レイソル）の両センターバックが抜けた。<br />
　ボール奪取からショートカウンターに転じる際のキーマンとなり、守備においても豊富な運動量で素早い戻りを求められるワイドのＭＦからも水沼宏太までがＪ１のサガン鳥栖へ移った。<br />
　開幕直後には大和田真史、ヴィッセル在籍時に松田監督からゾーンディフェンスの指導を受けた新加入の柳川雅樹とセンターバック陣が相次いで故障離脱する事態にも見舞われる。</p>

<p><br />
　ゼルビア戦で先発した１１人のうち、昨シーズンにレギュラークラスとして活躍したのはＧＫ武田博行と右ＭＦ高木の２人のみ。最終ラインは右から山形、當間建文、ともに韓国・弘盒大出身のチャ・ヨンファン、ユ・デヒョンと４人全員が今シーズンから新たに加入した選手で形成された。<br />
　志願してキャプテンに就任した攻守の要、ボランチのパウリーニョは昨年９月に骨折した右足腓骨の影響もあって１試合、わずか１６分間の出場にとどまっている。ゼルビア戦でダブルボランチを務めた小野寺とＦＣ岐阜から新加入した菅和範は、コンビを組んでまだ３試合目だ。<br />
　さらには、前線からコースを限定する役目も担うＦＷ陣もリカルド・ロボ（現柏レイソル）と崔根植（現ロアッソ熊本）から、廣瀬浩二と川崎フロンターレから加入した棗佑喜の２人に様変わりした。</p>

<p><br />
　それでも栃木ＳＣの戦い方にはいっさいの迷いも、もちろんブレた部分もない。<br />
「僕は福岡にいた時に経験しているので、何の問題もなく開幕からやれている。確かにけが人は多いですけど、代わりに入った選手も十分にやり方を理解している。今はガッチリとはまっている」<br />
　手応えを口にしたのは、アビスパ時代に松田監督のゾーンディフェンスを経験している山形。その一方で期待されて東海大五高から鹿島アントラーズに入団したものの、５シーズンでＪ１出場数が３試合にとどまり、心機一転、栃木ＳＣへ完全移籍した元Ｕ‐２１日本代表の當間は、初体験のゾーンディフェンスにカルチャーショックを受けながらも全試合フル出場を続けている。<br />
「今までやったことのないディフェンス。頭がいいというか、面白いサッカーだと思う」</p>

<p><br />
　クラブスローガンに「Ｊ１へ」を掲げた今シーズンは、敵地でヴァンフォーレ甲府に１対２、ホームで大分トリニータに０対３と続けて完敗を喫するまさかのスタートとなった。<br />
　それでも松田監督は決して動じることなく、笑顔を浮かべながら２つの黒星を受け入れた。<br />
「開幕戦に関してはダヴィという選手の強さで甲府に２点を取られた気もするし、大分戦はチームとしての守備が崩壊したのではなく、考えられないような個人のミスからの失点だった。年に何度か起こるうちの一回が起こったわけで、そういうのがないと０対３のスコアにはならない。なので、心配はしていませんでした。やっていることはほとんど変わっていないので」<br />
　泰然自若と構える指揮官の姿は、ゾーンディフェンスへの絶対的な自信の表れでもある。</p>

<p><br />
　果たして、敵地で行われたヴォルティスとの第３節で１対０の完封劇で今シーズン初勝利を挙げると、昨シーズンの前半を彷彿とさせる「負けない栃木」が鮮やかに復活を遂げる。<br />
　２つの引き分けをはさんで白星を３個並べて迎えたゼルビア戦。両チームともに無得点のまま後半に入ると、ボールを奪ってからのタテへのプレッシャーを一気に強める。５分に先制点を奪った後は、前掛かりになって攻めてくるゼルビアをあざ笑うかのように２つのゴールを重ねた。<br />
「なかなか点が入らない中で、守備陣はメンタル面を上手くコントロールしてくれた。３点差をつけても最後までゼロで締めてくれたのは、集中して戦ってくれた証だと思っています」<br />
　６戦連続の無敗。その間の失点が２。攻守のバランスは最高のハーモニーを奏で、開幕連敗スタートからの、何よりも終盤戦の失速に泣いた昨シーズンからの捲土重来を導こうとしている。</p>

<p><br />
　余談になるが、開幕戦直後に追加で登録されたチャ・ヨンファンの本職はボランチ。実際にトリニータとの第２節でデビューして以降はボランチとしてプレーしていたが、４月１日のジェフユナイテッド千葉戦中に故障離脱した大和田の穴を埋めるために急きょポジションを下げている。<br />
「センターバックとしてはまだ３試合目。彼がそれだけの資質を持っていたんでしょうね」　<br />
　松田監督は再び謙遜して笑うが、それだけ「人は変わってもチームとしてやるべきことは変わらない」という指揮官の揺るぎない哲学がチーム内に浸透しきっているのだろう。<br />
　ベンチに控えていたパウリーニョを送り出す必要のない展開に、指揮官も「今日は小野寺と菅の２人が十分にやってくれた」とチーム全体が底上げされている点も収穫としてあげた。</p>

<p><br />
　もっとも現状に満足もしていないからこそ、選手たちは異口同音に「前半はちょっと引き気味だった」とゾーンを形成する位置に課題があったことを認める。何よりも小さなズレの積み重ねが、ペースを握りながら前半を無得点で終えたことにつながったことも理解している。<br />
　ゾーンディフェンスの目的は守ることではなく、ボールを奪ってから鋭いショートカウンターでゴールを目指すことにある。伝統のポゼッションを志向するあまり、パスをつなぐことがゴールへの手段ではなく目的と化している感のある最近のゼルビアとの明白な差はまさにこの一点にある。<br />
　Ｊ２が創設されて１４シーズン目。チーム数も１０から上限の２２までに増えた今、独自のカラーを身にまとったチームが群雄割拠してＪ１昇格を争う戦国リーグへと変貌しつつある。その一角に、Ｊ１の１８チームにも導入されていないゾーンディフェンスの牙を研ぎ続ける栃木ＳＣがいる。</p>

<p><br />
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    <title>下馬評を覆す首位快走。湘南ベルマーレの秘密を探る（２）　　by  藤江直人</title>
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    <published>2012-04-13T15:57:30Z</published>
    <updated>2012-04-13T17:07:25Z</updated>

    <summary> ☆☆☆論スポ第１０号の購入はこちらをクリックしてください！☆☆☆ ■Ｊ２第７節...</summary>
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<p><br />
■Ｊ２第７節<br />
湘南ベルマーレ［勝ち点１９］　２‐０（前半０‐０）　ＦＣ町田ゼルビア［勝ち点６］<br />
［４月８日午後４時４分キックオフ＠Ｓｈｏｎａｎ　ＢＭＷスタジアム平塚／観衆７０３５人］</p>

<p><br />
<u><strong>（１）から続く</strong></u></p>

<p><br />
　相手の選手よりも走る。この一点を最優先させた結果として、菊池大介をはじめ最年少の１９歳・遠藤航、鎌田翔雅、古林将太のいわゆる「曺チルドレン」が先発に名前を連ねて今現在に至っている。<br />
　シーズン開幕に備えたキャンプで、指揮官は特別にフィジカルを重視したトレーニングは課していない。走る能力について、眞壁潔社長は曺貴裁監督から興味深い話を聞いたという。<br />
<strong>眞壁社長</strong>「ウチの選手たちはもともと走れますから、と監督を引き受けた時から曺は言っていました。実は中学生や高校生といった育成年代で十分に走っていないと、トップになって監督からいきなり走ることを求められても動けない。急には走れるようにならないんです。その意味で曺には絶対の自信があったんでしょうね。自分が育てた選手に関してはとことん走れると」</p>

<p><br />
　フロンターレのジュニアユース時代に曺監督の指導を受けた永木亮太と高山薫も然り。３バックの一角で活躍する大野和成（愛媛ＦＣ）、４月１日のガイナーレ鳥取戦で勝負を決めるプロ初ゴールを決めたＭＦ宮崎泰右（大宮アルディージャ）、新人ながらすでに３ゴールをマークしているＤＦ岩上祐三（東海大）らも「走れること」を見込まれて今オフの獲得に至っている。<br />
　一方でセレッソ時代にコーチとして指導したＦＷ古橋達弥、ＭＦ下村東美の３１歳コンビも補強。キャプテンに任命した３３歳のチーム最古参、ＭＦ坂本紘司を含めて、プレーだけでなくパーソナリティーでも信頼の置けるベテランをベンチにスタンバイさせることによって、平均年齢が約２２歳と一気に若返った先発のイレブンが思う存分に暴れられる環境を整えた。</p>

<p><br />
　もちろん、ベテラン勢も若手の後方支援だけで満足はしない。サンガとの開幕戦で途中出場して流れを引き寄せたのは坂本。ゼルビア戦の後半１７分に菊池に代わって投入された古橋は、直後のプレーから菊池が担っていたセットプレーのキッカー役をも引き継いだ。<br />
　迎えた２２分。立て続けに獲得した４本目のコーナーキックを遠藤が頭で決めて先制した。<br />
<strong>眞壁社長</strong>「古橋が出てから流れが変わったよね。大介（菊池）に同じコーナーキックを蹴れるかと言えば、まだ無理でしょう。その意味では、技術的にも非常にいいバランスになっていると思う。今日なんかもバランスが悪い時間帯もあったけど、選手はしのぐということを学んで、初めて無失点で試合を終えた。いろいろなことを勉強しながら成長していると思います」</p>

<p><br />
　ベルマーレの怒涛のプレスと、地域リーグ時代から伝統であるゼルビアのパスサッカー。時間の経過とともに均衡が崩れ、前者がペースを握っていったことは、後者のＭＦ庄司悦大が漏らした「相手の速いプレスにビビッて前を向けなかった」なる言葉が如実に物語っている。<br />
　パスを受けたゼルビアの左サイドバック藤田泰成に古林が猛然と詰め寄り、結果として相手ボールのスローインになっても、ベルマーレのサポーターからは大歓声が上がる。中盤でボールをむしり取り、カウンターに転じる刹那には「ヨッシャー！」の歓声が上がる。<br />
　誰一人として虎の子の１点を引いて守る戦法や、残り時間を有効に使う戦いを望んでいない。躍動感あふれる新生ベルマーレの戦う姿勢に感化されたかのように、サポーターも変わりつつある。</p>

<p><br />
　迎えた後半のロスタイム。攻撃は最大の防御なり、とばかりに同４４分に守備固めで投入されたばかりのＤＦ島村毅が、パスカットから敵陣へアグレッシブに突進していく。<br />
　ＦＷ大槻周平とのワンツーを成功させ、ついにはペナルティーエリアに侵入したところでゼルビアＤＦ津田和樹のファウルを誘発。２枚目のイエローカードを受けた津田が退場処分となり、獲得したペナルティーキックを遠藤が冷静にゴール右隅に突き刺して勝負を決めた。<br />
<strong>曺監督</strong>「最後の最後まで選手たちが敵陣でプレーしてくれたことは喜ばしいんですけど、島村にはあまり（前へ）行くなと言ったつもりだったんですけど......言うことを聞いてくれませんでしたね(笑)。まあ、姿勢に関しては選手たちがそれぞれ判断しろと言っているので」</p>

<p><br />
　今シーズンの目標に掲げていた５ゴールにあと１と迫る量産ぶりで、チームの得点王に浮上した遠藤は「ＰＫは美味しいですね」と苦笑いしながら好調なチームに言葉を弾ませる。<br />
<strong>遠藤</strong>「みんなに攻撃の意識があることはいいと思います。ただ人数が足りない時もあるし、そういう時に奪われると後が怖いので、そこは僕が一番後ろでマネジメントできればいい。みんな自信を持ってプレーしているし、ＦＷを含めて全員が守備の意識も強く持っている。スタメンで出ている選手だけじゃなくて、サブやバックアップのメンバーも全員が一体感を持って練習の段階からできている点もベルマーレの強みだと思う。練習から１００パーセントででいないと試合には出られない、と誰もが思っている。ホントに気が抜けない状態が続いているんです」</p>

<p>　<br />
　４ゴールの遠藤を３ゴールの岩上と馬場賢治が追う。７試合で挙げた１７ゴールはＪ２最多。すでに１０人がゴールを決めている点を見ても、ベルマーレの全員サッカーが伝わってくる。<br />
<strong>曺監督</strong>「我々は突出した一人のストライカーにボールを集めるのではなく、相手よりも数多く攻めるサッカー。得点の数もそうですけど、すでに１０人の選手が得点していることこそが、我々がチームとして目指すところ。それを選手たちが本当によく理解してプレーしてくれている」<br />
　中田英寿らの日本代表勢を中心に攻撃サッカーでリーグを席巻した、１９９０年代の中盤のベルマーレ平塚は「湘南の暴れん坊」と畏怖された。２１世紀版のそれは湘南地域が育てた無名の若手たちが主役を担っている分だけ痛快無比で、観ている側にこの上ない爽快感すら与える。</p>

<p><br />
　快進撃を続ける一方で、高温多湿という独特な条件下での戦いを強いられる夏場で、豊富な運動量をベースとするスタイルを貫くことをいぶかる声も決して少なくない。<br />
　昨シーズンも堅守速攻を掲げて５勝３分け１敗と開幕ダッシュには成功したが、６月の梅雨入りとともに失速。最終的には１４位に終わった。眞壁社長は「夏場に戦うことを頭に置いて春先にこけたら、どっちみち同じですから」と指揮官同様に目の前の一戦だけに集中する。<br />
<strong>眞壁社長</strong>「夏場は相手も走れなくなるからね。反町の時は選手をほぼ固定して戦ったけど、曺は選手のカードを変えながら戦っている。鳥取戦で決勝点を挙げた宮崎を今日は使っていないし、ＦＷのマサラもけがから復帰した。その時のベストの選手で同じサッカーを続けていくと思う」</p>

<p><br />
　曺監督がジュニアユースを率いた２００５年に、ベルマーレは『ｆｕｔｕｒｅ２０１５』と命名された中長期の計画を策定している。２０１５年までに育成組織やアカデミーから育ってきた選手を全員の半分にする。壮大な夢へのプロローグが、まさしく今シーズンとなる。<br />
<strong>眞壁社長</strong>「小さなクラブが生き残っていくためにも、１１人の中で５人が育成から上がってきた選手が占めているクラブがあることを、４０チームの中で主張していかないと。ベルマーレのアイデンティティーは総合型スポーツクラブであることはもう定番になっているけど、総合型のためにクラブがあるのではなく、クラブが地域に根ざすために総合型がある。次のステージは何かと言われたら、総合型のシステムの中で若手が育ってきているのか、という点が問われてくる」</p>

<p><br />
　残り時間が１０分を切ってから喫した失点が７試合で４。本来ならば指揮官から眉をひそめられるかもしれないが、ベルマーレの場合は短所を矯正するよりも長所をさらに伸ばそうとしている。後半ロスタイムを含めた終了間際のゴールが実に５を数えているのはその証だ。<br />
<strong>曺監督</strong>「負けなしでこの順位にいることは本当に喜ばしいが、選手たちが１分１秒のその瞬間に全力を出していることが一番大きい。もちろん、まだＯＫとは言えませんけどね」<br />
　新監督の方針、地元出身の若手たちがもたらす躍動感、フロントの意向、そして湘南ベルマーレになってから積み重ねられてきた地道な努力。すべてのベクトルが一致して生み出された、眞壁社長をして「ピュアなサッカー」と言わしめる完全燃焼スタイルがＪ２戦線を熱く彩る。</p>

<p><br />
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    <title>下馬評を覆す首位快走。湘南ベルマーレの秘密を探る（１）　　by  藤江直人</title>
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    <published>2012-04-13T15:44:15Z</published>
    <updated>2012-04-13T17:04:35Z</updated>

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<p><br />
■Ｊ２第７節<br />
湘南ベルマーレ［勝ち点１９］　２‐０（前半０‐０）　ＦＣ町田ゼルビア［勝ち点６］<br />
［４月８日午後４時４分キックオフ＠Ｓｈｏｎａｎ　ＢＭＷスタジアム平塚／観衆７０３５人］</p>

<p><br />
　キックオフ前にメディアへ配布される試合メンバー表には、対戦する両チームの先発およびベンチ入りメンバーの生年月日、年齢、身長および体重、今シーズンおよび通算での出場試合数とゴール数、前所属チーム、そして今シーズンに受けた警告の数が記されている。<br />
　前所属チームはプロチームだけでなく高校や大学、Ｊリーグの育成組織のすべてが対象となるが、これを「前」ではなく「全」に置き換えて調べてみるとどうなるか。開幕から無敗でＪ２の首位を快走している湘南ベルマーレにおいては、非常に注目すべき傾向が浮かび上がる。<br />
　ＦＣ町田ゼルビア戦で先発した１１人のうち、傘下の育成組織に所属していた選手がＤＦ遠藤航、ＤＦ鎌田翔雅、ＭＦ古林将太、ＦＷ菊池大介、ＦＷ馬場賢治と５人を数えている点だ。</p>

<p><br />
　ベルマーレ平塚時代の１９９８年に中学生年代のジュニアユースを１年で離れ、桐光学園高から近畿大、Ｊ１のヴィッセル神戸を経て今シーズンからベルマーレに完全移籍した２６歳の馬場を除けば、４人すべてが湘南ベルマーレとなった２０００年以降にジュニアユースまたはユースに入団。トップチームへの昇格を果たしている２０歳前後の若手たちだ。<br />
　ゲームキャプテンを務める１９歳の遠藤以外の前所属チームが「湘南ベルマーレユース」となっていないのは、トップ昇格後に他チームへ期限付き移籍して武者修行を積んでいるからだ。<br />
　２２歳の鎌田は２０１０年にＪ２のジェフ千葉、２０歳の古林は２０１１年、同じく２０歳の菊池は２０１０年にともにＪ２のザスパ草津で実戦を十二分に経験して才能に磨きをかけた。</p>

<p><br />
　４月７日および８日に行われたリーグ戦の先発メンバーを見比べても、傘下の育成組織出身選手が占める割合は４０を数えるＪクラブの中でベルマーレが突出している。<br />
　そして、選手育成では先駆け的な存在である東京ヴェルディの４人をも上回っている点と、開幕前の下馬評を覆して快進撃を続けるベルマーレの好調ぶりは、実は密接にリンクしている。<br />
　今シーズンからチームを指揮する４２歳の曺貴裁（チョウ・キジェ）監督は、前任の反町康治氏のもとで３年間にわたってアシスタントコーチを務めてきた。現役時代は日立製作所（柏レイソル）や浦和レッズ、ヴィッセル神戸でＤＦとしてプレー。１９９７年の引退後はＪクラブの監督を務めた経験はなかったが、ベルマーレの眞壁潔社長は迷うことなくバトンを託した。</p>

<p><br />
　曺監督とベルマーレの接点は、２００５年シーズンにまでさかのぼる。<br />
　２０００年から２００３年まで川崎フロンターレでアシスタントコーチおよびジュニアユースの監督、２００４年にはセレッソ大阪でヘッドコーチを務めていた曺氏は、湘南地域に夢と感動を与えるというベルマーレのコンセプトに共感。ジュニアユース監督就任を受諾した。<br />
　２００６年からの３年間はユースの監督を務め、その間に遠藤、鎌田、古林、菊池、ゼルビア戦でベンチ入りした２４歳のＭＦ猪狩佑貴を指導。２００９年からはアシスタントコーチとして反町前監督を補佐しながら、育成組織出身の教え子たちの成長をサポートしてきた。<br />
　ホープたちが一本立ちした今シーズン。ベルマーレには勝負をかける理由があった。</p>

<p><br />
　育成組織を運営するための費用は決して低くない。昨シーズンに続いてトップチームのユニホームの胸スポンサーが空白のままシーズンを迎えるなど、経営的にも厳しい状況が続く。<br />
　だからこそ、フジタ工業の撤退に伴い、ベルマーレ平塚から親会社を持たない総合型スポーツクラブを目指す湘南ベルマーレとなってからの１２年間が正しかったことを証明する必要があった。<br />
<strong>眞壁社長</strong>「育成組織から育ってきた選手たちに対して、ベルマーレのアイデンティティー、あるいは地域からの応援といったものがさらに盛り上がらないようであれば、そこまでお金をかけて育成をやるべきじゃないという流れになってしまう。だからこそ、今年はようやく下から育ってきた選手たちで勝負がしたかった。そのためには、監督は曺じゃなきゃダメなんです」</p>

<p><br />
　中学生年代を指導するジュニアユースから段階を踏んでステップアップしてきた曺監督は、ベルマーレが時間をかけて「湘南イズム」を伝授してきた切り札的な存在でもあった。<br />
<strong>眞壁社長</strong>「曺が指導していた時の育成チームは粘り強く戦うことが特徴だった。そうしたトップチームを、地元出身の選手たちを中心にして作りたかった。反町はベルマーレ平塚のＯＢとして助けにきてくれたと思っている。今年からはベルマーレ平塚時代からの財産ではなく、本当の意味で湘南ベルマーレとして作ってきた財産で勝負をする年にしたかったんです」<br />
　チームの心臓部を司るボランチ永木亮太、驚異の運動量で攻守を支えるＭＦ高山薫の２３歳コンビも、川崎フロンターレのジュニアユース在籍時にくしくも曺監督の指導を受けている。<br />
　</p>

<p>　もっとも、オファーを受諾するに当たって、曺監督には一抹の不安があったという。当然ながら、チームの中には自身が指導したことのない選手も数多く在籍している。<br />
<strong>眞壁社長</strong>「監督は自分が育てた選手が好きなんだ、と悪い方に作用してしまうのではないかということでしたけど、そういうことは気にしなくていいからとにかく頼むと(笑)」<br />
　このひと言で迷いが吹っ切れたのか。曺監督は始動に当たって独自のカラーを打ち出す。<br />
<strong>曺監督</strong>「Ｊ１昇格や順位という目標は設定していません。我々はプロなので、勝ち負け以上にお金を払ってスタジアムに観にきてくれるお客さんがどう感じるかが大事。その意味で持っている能力をすべて出す、相手より多く走る、常に相手に向かっていくことが求められるんです」</p>

<p><br />
　新生ベルマーレのチームスローガンは攻守に激しいサッカーという曺監督の思いが反映されて『蹴激（しゅうげき）』と定められ、同時にテーマとして『ＧＥＴ３』も添えられた。<br />
　目の前の１試合１試合に全神経を集中させて白星＝勝ち点３を奪っていくという強い決意の表れであり、英語で成長を意味する『Ｇｒｏｗｔｈ』、エネルギーの『Ｅｎｅｒｇｙ』、一緒にの『Ｔｏｇｅｔｈｅｒ』の頭文字をとった『ＧＥＴ』には「選手、スタッフ、チームの全員がエネルギッシュに戦いながらともに成長していく」という方向性が込められている。<br />
　ホームで迎えた３月４日の開幕戦。後半ロスタイムに飛び出した劇的なゴールで、１月の天皇杯で準優勝した難敵・京都サンガを逆転で下した瞬間から快進撃は始まった。</p>

<p><br />
　歓喜の雄叫びとともにヒーローとなったのは、今シーズンから背番号１０を託された菊池だった。この時、感極まった眞壁社長はベンチへ駆け寄り、曺監督と固い握手を交わしている。<br />
　試合後のベンチに足を踏み入れることをタブーとしてきた同社長にとって、Ｊ１昇格を決めた反町前監督時代の２００９年１２月５日以来、人生で２度目となる掟破りだったという。<br />
<strong>眞壁社長</strong>「あの時とは違った意味で行っちゃいましたね(笑)。先発した１１人のうち５人が育成から上がってきた生え抜きの選手で勝てたことが、何よりも嬉しかったので」<br />
　もちろん眞壁社長が生え抜きを起用することを曺監督に強要するはずもないし、曺監督もフロントの意向や希望を先発メンバーの人選を含めたさい配に反映させてはいない。</p>

<p><br />
<u><strong>（２）へ続く</strong></u></p>

<p><br />
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    <title>絶対的エースへ。なでしこを進化させる永里優季の覚醒（２）　　by  藤江直人</title>
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    <published>2012-04-08T05:55:06Z</published>
    <updated>2012-04-08T15:19:05Z</updated>

    <summary> ☆☆☆論スポ第１０号の購入はこちらをクリックしてください！☆☆☆ ■サッカー国...</summary>
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<p><br />
■サッカー国際親善試合（ＫＩＲＩＮ　ＣＨＡＬＬＥＮＧＥ　ＣＵＰ　２０１２）<br />
なでしこジャパン［勝ち点４］　４‐１（前半１‐１）　ブラジル女子代表［勝ち点０］<br />
［４月５日午後７時５０分キックオフ＠ホームズスタジアム神戸／観衆１万２８６２人］<br />
<strong>※なでしこジャパンの優勝が決定</strong></p>

<p><br />
<u><strong>（１）から続く</strong></u></p>

<p><br />
　ロスタイムにＭＦフランシエリに直接フリーキックを決められ、１対１と追いつかれて迎えたハーフタイム。前半３８分からＦＷ安藤梢に代わって投入されていたＦＷ永里優季に対して、キャプテンのＭＦ宮間あやは攻撃面において「ある役割」を果たしてほしいと打ち明けている。<br />
<strong>永里</strong>「前半は何か攻撃がタテに早くなっていて、いいリズムが作れていなかったとあやは話していた。もう一回タメを作って、人数をかけて攻撃していこうと話していたので」<br />
　どんなプレーを求められているのか。永里はすぐに分かった。最前線から２列目を追い越し、時にはボランチの近くにまで下がってボールを受けて、キープすることで味方が攻め上がる時間を稼ぐ。永里自身も再びスプリントしながら、ペナルティーエリアの中へ侵入していく。</p>

<p><br />
　スプリント力。スタミナ。正確なトラップとボールを失わないテクニック。相手の激しいコンタクトにも耐えられる屈強なフィジカル。そして、ゴールを奪うことがすべてというストライカーとしての矜持。もちろん前線からの守備にも奔走する。永里にしかできない仕事だった。<br />
　途中出場した前半の７分間で２回。後半で６回。中盤のエリアにまで永里が下がり、ボールを受けた瞬間になでしこジャパンの攻撃のスイッチが入るようになる。<br />
　トラップがやや流れた前半４０分のプレーでは、インターセプトを狙ってきたＦＷクリスチアーニを逆になぎ倒してボールをキープ。後半２１分にはＤＦ矢野喬子からパスを受けた永里を起点に宮間、ＭＦ宇津木瑠美の３人で６本もの細かいパスをつないでブラジルを翻弄した。</p>

<p><br />
　神出鬼没の永里の動きがブラジル守備陣へのボディーブローとなったのか。<br />
　後半４４分にＦＷ菅澤優衣香が叩き込んだ、勝ち点と得失点差で並ぶアメリカを総得点で上回り、なでしこジャパンに優勝をもたらす４ゴール目にも永里は間接的に絡んでいる。<br />
　ボランチの位置に投入されていたＦＷ高瀬愛実からパスを受けた代表デビュー戦のＭＦ上辻佑実が、対面のマーカーに果敢に１対１を仕掛けて勝利する。この時、上辻の右側をすり抜けてオーバーラップしていったＤＦ近賀ゆかりの前方には広大なスペースが生じていた。<br />
　しかし、カバーに走るべきＤＦアリニは動くに動けなかった。上辻のすぐ近くにまで下がってきていた永里もケアしていたからだ。上辻は近賀へのスルーパスを選択。近賀のアーリークロスを菅澤が決めた瞬間、ファーサイドにはＭＦ川澄奈穂美が、中央には永里が猛然と詰めていた。</p>

<p><br />
　永里が２００９年末まで所属した日テレ・ベレーザ時代のチームメートで、なでしこジャパンにおいても何度も同じピッチで戦ってきた近賀は後輩の変化をこう語る。<br />
「フィジカルコンタクトの面ではベレーザにいた頃よりも数倍強くなっているし、その中でボールの置き方や奪われないためのトラップの工夫といったものがすごく変わったと思う。クサビを受けに下がってきてくれるタイミングにしても、すごく見やすいので助かります」<br />
　下がる永里に連動して味方が追い越していくのは、信頼を勝ち得た証でもある。<br />
<strong>永里</strong>「変わっている点を強いて挙げるとしたら......ボールを受ける前の駆け引きで相手より優位に立つことができて、なおかつ余裕でボールを持てるようになったことですかね」</p>

<p><br />
　４バックの最終ラインと４枚のＭＦをフラットに並べ、前線からコースを限定していき、ボランチの澤穂希のところでボールを奪ってから素早く攻撃に転じる。<br />
　ゾーンディフェンスを機軸とするチームの基本的な戦い方は変えない一方で、佐々木則夫監督は「なでしこの場合はすでに相手に研究されている」と今年に入ってプラスアルファを追い求めてきた。<br />
「今までなら『もっとチャンスがあったのに』とか『シュートまで持って行けたのに』という攻撃の終わり方がもっと多かったと思います。ペナルティーエリアの中への入り方も工夫しているし、２列目や３列目の選手の押し上げが早くなり、ペナルティーエリアの中へ入ってくる人数が増えたことも大きい。この一連のキャンプで意識づけをしていた部分でもあります」</p>

<p><br />
　攻撃面におけるなでしこジャパンの進化と、新境地を切り開き、覚醒した感すらある永里の存在は密接にリンクしている。９０分間で初めてアメリカを撃破した３月のアルガルベカップの総括で、佐々木監督が「個人的には今大会のＭＶＰは永里」とあえて個人名を挙げたことからも伝わってくる。<br />
　後半からはボランチに回り、攻撃のタクトを振るった宮間も手応えを感じている。<br />
「前半はワイドが使えていなかったので、後半はワイドにボールを散らすことを心がけました。選手それぞれの立つ位置が少し違うだけで、簡単にボールが回り始める。４点目の近賀選手がオーバーラップするスペースが生じたのは、そういうボールを回しをしいるからなので」<br />
　後半に入ってからの変化を声高に解説するキャプテンの背中を、満面に笑顔をたたえた永里がポンと叩きながら通り過ぎていく。２人の固い絆を象徴するシーンだった。</p>

<p><br />
　世界ランキング１位のアメリカは圧倒的なフィジカルの強さに加えて、ボールと人が連動して動くサッカーを加味させる新スタイルをロンドン五輪までに完成させたいとしている。<br />
　２大会連続の銀メダルからの雪辱を期すブラジルにしても、今年１月に澤が受賞したバロンドールに２００７年から５年連続で輝いたエースのＦＷマルタが来日していない。爆弾低気圧による荒天の中で行われたアメリカ戦から中１日という過密日程が、後半におけるスタミナを奪い取った感も拭えない。<br />
　佐々木監督も「ブラジルも組織的な守備と、ゲームメークする攻撃を志向している印象を持った。個々の選手はボールを蹴る、止めるといったプレーの質が高いので、組織的なサッカーを積み上げてきたら怖いだろうし、それは時間の問題だと思う」と警戒感を露にしている。</p>

<p><br />
　だからこそ、Ｗ杯を制した昨夏の時点のなでしこジャパンにおいて「不在」だったと言っても過言ではなかったＦＷの絶対的な柱として、永里がまばゆい輝きを放っていることは価値がある。<br />
　体調不良を訴えた大黒柱の澤が長期離脱する中でアメリカと今大会を含めて１勝１分けの星を残し、ベストのメンバーとコンディションではないにせよブラジルにも圧勝した。<br />
「かつては強豪を前にするとオドオドしていたところもあったけど、今はそういう時間が短くなった。選手一人ひとりが駆け引きをして、相手を外せるようになってきましたね」<br />
　佐々木監督がたくましさを増すチームに笑顔を浮かべれば、澤からキャプテンを引き継いだ宮間も「全力で毎日練習していけば、自然と五輪の金メダルが近づいてくる」と力を込めた。</p>

<p><br />
　今後は６月のスウェーデン遠征まで代表チームの活動はない。１５日に開幕するなでしこリーグへ、そして佳境に入るヨーロッパ戦線の舞台で、選手たちはそれぞれ新たな戦いに臨む。<br />
<strong>永里</strong>「今まで積み重ねてきたひとつひとつのプレーの質を上げるのはもちろんですけど、進化のきっかけになるようなもの、課題のようまものを何か見つけて取り組んでいきたい」<br />
　ブラジル戦から一夜明けた６日にドイツへ戻った永里は、アルガルベカップと今大会において「周囲の選手の力を引き出す」ことを個人的なテーマとして自らに課していた。<br />
　そのためには、コンビを組むＦＷをはじめとする味方の特徴を把握しなければならない。果たして、膨大なデータをインプットできたのか否か。弾ける笑顔とともに取材エリアに響いた、質問に対する「ハイ！」という短い返事が、新エースにとって有意義な日々だったことを物語っていた。</p>

<p><br />
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    <title>絶対的エースへ。なでしこを進化させる永里優季の覚醒（１）　　by  藤江直人</title>
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    <published>2012-04-08T05:41:05Z</published>
    <updated>2012-04-08T15:16:55Z</updated>

    <summary> ☆☆☆論スポ第１０号の購入はこちらをクリックしてください！☆☆☆ ■サッカー国...</summary>
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<p><br />
■サッカー国際親善試合（ＫＩＲＩＮ　ＣＨＡＬＬＥＮＧＥ　ＣＵＰ　２０１２）<br />
なでしこジャパン［勝ち点４］　４‐１（前半１‐１）　ブラジル女子代表［勝ち点１］<br />
［４月５日午後７時５０分キックオフ＠ホームズスタジアム神戸／観衆１万２８６２人］<br />
<strong>※なでしこジャパンの優勝が決定</strong></p>

<p><br />
　コーナーにボールをセットする段階で、２人はすでにゴールのシーンを共有していた。<br />
　テレビ朝日系で生放送された試合の映像を見直すと、コーナーキックを蹴ろうとしているなでしこジャパンのキャプテン、ＭＦ宮間あやがゼスチャーを繰り返していることが分かる。<br />
　右手で頭を指し、次の瞬間には足元を指す。送り手から頭というゼスチャーが返ってきたからだろう。再び頭を指しながら、了解したとばかりに首をタテに振ってから助走に入る。<br />
　１対１で迎えた後半１３分になでしこジャパンが獲得した右コーナーキックのチャンス。宮間の左足から放たれたボールが、ニアサイドを目指して緩やかな軌道を描いていく。ポスト付近にポジションを取っていた、ＤＦマウリニが余裕を持ってクリアの体勢に入ったその時だった。</p>

<p><br />
　中央付近から青いユニホームの選手が疾走してくる。宮間にゼスチャーを返していたＦＷ永里優季が目指していたのはニアサイド。マウリニの死角から前方に飛び出し、ジャンプ一番、頭の一部をヒットさせる。コースを変えたボールはゆっくりと逆サイドに吸い込まれていった。<br />
　慌てて振り返ったマウリニはゴール内に転がるボールを見ながらぼう然と立ち尽くし、ＧＫアンドレイアは「防ぎようがない」とばかりに両手を広げながら金縛り状態になっている。<br />
　流れを引き寄せる会心のヘディングゴールに、ヒロインが言葉を弾ませる。<br />
<strong>永里</strong>「お互いにあそこで狙っていました。あやがウチの目を見て『頭か足かどっちにする』みたいな感じで聞いてきたので、じゃあ頭って。バレバレだったはずなんですけどね(笑)」</p>

<p><br />
　延長戦にもつれ込んだ昨夏の女子Ｗ杯決勝戦。アメリカに１点を勝ち越され、残り時間がわずかになった中でＭＦ澤穂希が叩き込んだ起死回生の同点ゴールを思わず彷彿とさせる。<br />
　ニアサイドのピンポイントでボールにコンタクトし、コースを変えるプロセスこそ同じだが、２つのゴールでともにコーナーキックを蹴っている宮間は「まったく違うもの」と言い切る。<br />
「永里選手は（ゴール前の）どこが空いているかを察知するのがすごく早いんです。中を見た時に彼女が来ると分かっていたので、後は頭か足かを決めるだけでした」<br />
　コーナーキックに備えるブラジルの守備陣形を見ると、ニアサイドにポッカリとスペースが生じていた。言葉はいらない。宮間と永里は以心伝心でアイコンタクトを成立させていた。</p>

<p><br />
　アメリカ戦における澤の同点ゴールへのプロセスは、ＤＦ近賀ゆかりのオーバーラップから日本がコーナーキックを獲得した直前の接触プレーでアメリカのＧＫホープ・ソロが負傷し、試合を止めて治療を受けている間を利用して宮間と澤がピッチ上で話し合って決めた。<br />
　２人のホットラインをカムフラージュするため、ＭＦ阪口夢穂までも交えていた。周到な準備が施されていた点で、２人の直感に導かれた今回のゴールと大きく異なるのだろう。宮間が続ける。<br />
「なかなかセットプレーの練習をする機会がない中で、お互いの意図が合って永里選手のゴールにつながったことはすごくよかった。味方の選手が触れるだけで入るようなボールをいつでも蹴られるように、私も日々努力しながらキックの質を上げていきたいですね」</p>

<p><br />
　勝ち越しゴールからわずか３分後。宮間と永里は再びアイコンタクトを成立させる。<br />
　自陣の右サイドで得たフリーキック。宮間からＦＷ大野忍、ＤＦ熊谷紗希、矢野喬子のセンターバックコンビ、左サイドバックの鮫島彩と細かいパスをつないでサイドを変える。<br />
　左タッチライン際に走り込んだＭＦ川澄奈穂美を経由して左サイドに生じたスペースを突いたＦＷ菅澤優衣香にボールが入ると、永里がギアを一気にトップに入れてゴール前へ走る。<br />
　菅澤からのマイナスのクロスを永里がトラップした瞬間、フォローするようにペナルティーエリアの中に侵入してきた宮間は視線を介しながらメッセージを送っていた。　<br />
「永里選手からボールを受けるか、囮になれるように走るからって感じでしたね」</p>

<p><br />
　果たして、永里が選択したのはシュートだった。トラップこそやや流れたものの、強靭な足腰で体勢を立て直しながら右足で強烈な一撃をゴールの右隅へ正確無比に放つ。<br />
　何とか反応したＧＫアンドレイアだったが、ダイブしながら必死に弾いたボールの前にノーマークで走り込んできていた宮間のシュートを防ぐことはできなかった。<br />
「いいところにボールがこぼれてきたので、私は押し込むだけででした。永里選手の力強いシュートは私たちの武器。プレーの幅もどんどん広がっているし、彼女のいい部分をもっと出せれば相手はさらに脅威に感じるはずなので。できる限りのサポートをしていきたい」<br />
　勝負を決める３点目より何より、宮間は永里の存在感の大きさに声を弾ませた。</p>

<p><br />
　なでしこジャパンが世界一に輝いた昨夏の女子Ｗ杯でしかし、永里は武器になり得なかった。<br />
　開幕時はエースの座を託され、ニュージーランドとのグループリーグ初戦では先制ゴールも決めている。２０１０年１月から女子ブンデスリーガのポツダムでプレーし、そのシーズンのＵＥＦＡチャンピオンズリーグ制覇に貢献。ハイペースでゴールを量産することで膨らんだストライカーとしての信念が、ＦＷにまず守備を求める佐々木則夫監督の戦術に疑問を抱かせる。<br />
　ゴールにこだわるあまり、攻守の切り替えの際のファーストディフェンス役を果たさないシーンも決して少なくなかった。チームの規律を守らない永里の出場時間は次第に減少。スウェーデンとの準決勝、アメリカとの決勝戦は先発メンバーからも外され、ゴールを上積みできないまま大会を終えた。</p>

<p><br />
　女子Ｗ杯の期間中に頻繁に更新されていた永里のツイッターには、自分が信じる道を貫いた結果として代表から外されてもかまわない、とも受けれるつぶやきが数多く見られた。<br />
　なでしこジャパンの生命線もあるチームワークを乱しかねない、浮いた存在となりつつあった永里を常に優しくフォローすることで、必死にチームの中に繋ぎ止めたのが宮間だった。<br />
　Ｗ杯直後のフィーバーの渦中で弊誌『論スポ』のインタビュー取材に応じてくれた宮間は、Ｗ杯当時の永里を「ちょっと突っ走り気味でした」と振り返りながらこう続けている。<br />
「何も永里選手を型にはめたいわけじゃありません。でも、チームの輪から離れて、どこかへ行ってほしくなかったんです。彼女は彼女のままでいいので、みんなの中にいられるようにと」</p>

<p><br />
　イングランドとのグループリーグ最終戦の前には、こんな言葉もかけたという。<br />
「永ちゃんはこのチームに必要だから、どこにも行かないで。永ちゃんらしくていいから。みんなもそう思っているから。だから永ちゃんも、そのことを忘れないでね」<br />
　宮間の存在が永里の頑なな心を解きほぐすのに、それほど多くの時間を要さなかった。ストライカーとしての仕事はまっとうする。その上でチームから求められる仕事もすべてこなす。生まれ変わるために必要なのは、スプリント力と運動量を支えるスタミナ。再び戻ったドイツの地で自己改革を課した日々に自信を持てるからこそ、永里は今現在の自分自身をこう表現する。<br />
<strong>永里</strong>「全部変わっています。じゃなきゃ、多分、今の自分はないだろうから......」</p>

<p><br />
<u><strong>（２）に続く</strong></u></p>

<p><br />
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    <title>深津康太と勝又慶典。東京クラシックを彩った親友対決（２）　　by  藤江直人</title>
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    <published>2012-04-04T14:41:27Z</published>
    <updated>2012-04-04T15:00:26Z</updated>

    <summary> ☆☆☆論スポ第１０号の購入はこちらをクリックしてください！☆☆☆ （１）から続...</summary>
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<u><strong>（１）から続く</strong></u></p>

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　迎えた「東京クラシック」の前半は、完全にゼルビアがペースを握った。時間の経過とともにポゼッション率が高まり、パスサッカーを伝統としてきたヴェルディを圧倒する。<br />
「最終ラインの選手以外は寝ていたようなので、ハーフタイムに叩き起こしました。前半は教訓にもしたくない酷さだった。Ｊ１昇格を本気で狙うなら、絶対に前半のようなサッカーをしてはいけない」<br />
　記者会見で川勝良一監督が怒りを露にする。ゼルビアのパスワークを前に「どうしたらいいか分からなかった」と振り返るＤＦ深津康太だったが、最後の一線だけは体を張って阻止した。<br />
　肉を切らせて骨を断つ。どんなにボールを回されてもシュートは打たせない。２人ですでに４ゴールをあげている勝又慶典と平本一樹のツートップをシュートゼロに封じ込めた。</p>

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　特に勝又とは右のタッチライン際で激しく競り合い、深津がファウルを宣告された前半１２分のシーンを皮切りに何度も激突。同２２分には武器でもあるスピードを生かし、後方からのロングパスに抜け出した勝又を執念で追走。シュートの体勢にすら入らせなかった。<br />
　前半を何とかスコアレスでしのぎ切ったヴェルディは、後半開始と同時に１メートル８７の杉本健勇、２２分からは１メートル８３のジョジマールと高さのあるＦＷコンビを投入。前線に起点を作り、ボールをキープしてからパスを展開する作戦が鮮やかに奏功して流れを変えた。<br />
　開始わずか３０秒で杉本のポストプレーからＦＷ阿部拓馬がミドル弾を一閃。２０分に追いつかれたものの、３２分にはジョジマールが奪取したコーナーキックに杉本が得意のヘッドを見舞った。</p>

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　前半の踏ん張りがカギになったからこそ、ヴェルディのサポーターも深津の名前を連呼したのだろう。陰のＭＶＰという言葉にはにかみながらも、遅咲きの苦労人は手応えを口にする。<br />
<strong>深津</strong>「今は我慢が必要な時は我慢できるし、自分が先発してから負けていない、ということがすごく自信になっています。今日はゼルビアが相手で特に負けたくなかったし、もちろん後半も無失点に抑えられればよかったんですけど、同点にされても慌てることなく、ゴールを奪い返して勝てたことは結果的にはよかった。状況判断などはまだまだできていませんけど、今は落ち着いて試合に入ることができている。ガッチリと（相手の攻撃陣を）止めることができるのも、みんながコースをちゃんと切ってくれるから。チームのみんなに感謝したいですね」</p>

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　試合の流れをガラリと変えられる選手層の厚さ。そして、指揮官の采配に臨機応変に対応し、結果を残すことができるヴェルディの選手たちの経験値の高さを勝又も認めるしかなかった。<br />
<strong>勝又</strong>「前半は自分たちのやりたいサッカーができたし、だからこそ勝ちたかったですね。向こうにしてみればしてやったりでしょうけど、ああやって（選手交代で）僕たちの勢いを殺しながら押し込んできたところが上手いというか。その意味では僕たちはまだまだ未熟だし、反省するところばかりですけど、次に同じ状況になった時に変わっていけるように。誰かから言われて吸収するよりも、試合の中で学ぶことの方がはるかに多いので。僕を含めて経験が少ないゼルビアですけど、１年目で戦えないことはない。この経験を無駄にしないようにしたい」</p>

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　前節は京都サンガを前半シュート１本に抑えながら、センターバックの２人が相次いで故障退場した隙を突かれて２点を奪われた。ヴェルディ戦も然り。Ｊ１の戦いを経験している相手から老獪な戦い方を学び、自分たちの糧にすることでさらに成長を遂げられる自信があるからこそ、試合後の挨拶で深津と健闘を称えあった勝又は「まだまだだね」と声をかけている。<br />
<strong>勝又</strong>「お互いにもっと成長しなきゃね、とも言いました。ゼルビアの時は練習でもフカツちゃんとマッチアップすることはなかったんですけど、こうやって同じピッチの上で対戦してみて、やっぱり強いなと感じました。あとは、ちょっと冷静ぶっているなと(笑)。ホントに落ち着いていた。次は首位の湘南ベルマーレが相手だし、チーム全体が下を向くことのないように気持ちを切り替えていきたい」</p>

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　勝って兜の緒をしめよとばかりに、深津も反省することを忘れない。同点とされた場面。体を反転させながらスルーパスを受けた途中出場のＦＷ北井佑季をマークしていたのは深津だった。間合いを詰めきれず、トラップかた間髪入れずにシュートを決められた場面をこう悔やむ。<br />
　深津がゼルビアで２年目を迎えた２０１０年。近畿大を退部して加入したのが北井だった。<br />
<strong>深津</strong>「もちろん北井のプレーもよく知っていました。アイツはちょこちょこするのがけっこう好きなので、もうワンプレー、ドリブルでボールを運んでくると自分の中で思っちゃって。そうしたらガッチリと止めようと構えていたら、その前に打たれてしまった。足を出そうと思えば出せたんですけど、アイツのプレーを知っていた分、ちょっと考えすぎちゃったかもしれない」</p>

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　サブタイトルとして「より美しいフットボールはどっちだ」が謳われた、記念すべき第１回の「東京クラシック」はＪの歴史では格上となるヴェルディに凱歌が上がった。　<br />
　直近の４試合で３勝１分けと好調なヴェルディは勝ち点を１３に伸ばし、首位ベルマーレに３差の２位に浮上。一方のＪ昇格元年のゼルビアは黒星が２つ先行しての１６位に順位を下げた。<br />
「選手全員が頑張るというのはありましたけど、それで試合の優劣がつくのは恥ずかしい」<br />
　川勝監督がプライドを込めてゼルビアの印象を振り返れば、かつてヴェルディを率いたアルゼンチン人のオズワルド・アルディレス監督は「美しいサッカーとは敵陣でより多くプレーして勝つこと。勝てなかったのは何かが足りなかったからだ」と貪欲に結果を追い求めていく姿勢を見せた。</p>

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　試合後のロッカールームから姿を現した深津は、チームバスに乗り込むまでのわずかな時間を利用して、かつてのチームメートやお世話になったゼルビア関係者に挨拶して回った。<br />
<strong>深津</strong>「勝ったこともそうですけど、自分がゼルビアとの試合に出られて、ゼルビアのサポーターに見てもらえたことがすごく嬉しい。もちろん僕も頑張りますけど、ゼルビアのみんなも頑張ってほしいというか、よきライバルという感じですね。自分ももっと勉強して、バウルさん（土屋）に聞きながら試合の流れを読めるようになりたい。４月はすごく強いチームと当たるので」<br />
　昨シーズン４位の徳島ヴォルティスを皮切りに、サンガ、ベルマーレ、昨シーズンまでＪ１だったアビスパ福岡、そしてモンテディオ山形と続く４月戦線へ。深津は武者震いを隠せない。</p>

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　ＪＦＬ時代と戦い方のギャップと今後への手応え。その両方を感じているからこそ、勝又は後半もシュートを放てないまま３５分にルーキーの鈴木孝司と交代した自身を奮い立たせる。<br />
<strong>勝又</strong>「僕たちみたいなチームには先制点が大事。先制点を奪えれば結果も違ってくる。個人としてもボールを持てる機会が増えたけど、後半のように押し込まれると試合から消えることが多いので。僕たちは常に挑戦者。この悔しい結果を反省材料にして成長していかなきゃいけない」<br />
　半年後の１０月７日。ヴェルディのホーム味の素スタジアムで再び両者は対峙する。名勝負列伝の第２章へ。ゼルビアに関わるすべての人間の思いを、キャプテンが熱い決意とともに代弁する。<br />
<strong>勝又</strong>「同じ相手に２度続けて負けることは、絶対に許されないと思っていますから」</p>

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